榊原郁恵、落ちたら引退も視野に 覚悟の挑戦でつかんだ舞台『ハリポタ』は「宝」 女優として決意も新た
2025年5月18日(日)12時0分 マイナビニュース
●オーディション合格で「『逃げちゃダメ』と背中を押されたような気が」
東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でマクゴナガル校長を演じている榊原郁恵にインタビュー。オーディションに受からなかったら引退も考えようという覚悟で挑んだ本作への並々ならぬ思い、そして「宝になった」という本作でのかけがえのない経験について話を聞いた。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.K.ローリングらが書き下ろしたシリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、世界中で多くの演劇賞を獲得している。
2022年7月の開幕当時からマクゴナガル校長を演じている榊原は、オーディションで役をつかみとったが、芸能界入りを決めた「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を除き、自身初のオーディションだったという。
「一度もオーディションを経験したことがなかったので、お話を聞いてぜひ挑戦してみたいと思いました。60歳を過ぎて、自分の将来に対して不安もあったり、そんな年代だったので、この大きなお仕事のメンバーに入れるかどうかというのは賭けだなと思いました」
そして、受からなかったら引退も視野に入れるほどの覚悟で挑んだと明かす。
「私が若いときと違って周りの環境もどんどんスピードアップしていて、それについていけているのか、また、周りに自分よりも年下の人たちが多くなってきて、正直な意見を言ってもらえているのか、自分の存在がふわふわしているように感じていたので、オーディションに参加して、自分の力で役をもらえたら少し自信が持てるかなと。もしダメなら潮時という判断をしてもいいのかなと思うくらいの覚悟でした」
オーディションはコロナ禍の影響によりリモートで行われた。
「海外スタッフの方たちが来られなかったので、映像を撮って送るという形で演技をしたのですが、オーディションの経験がないので立ち向かい方がわからず、1シーンのセリフだけ渡されて、どういう流れでこのセリフがあるのかわからない状況で演じるというのが難しかったです。まして、マクゴナガル校長はあまりにも有名な存在で、マギー・スミスさんの印象がものすごくあったので、そこになかなかたどり着けなくて四苦八苦しました」
そして、合格したときの心境を「夢のようでした」と振り返り、女優として活動を続けていこうと決意を新たにしたという。
「年齢や経歴関係なく、オーディションで役を勝ち取ったというのは自信になりましたし、『これからも、もう少し頑張りなさい』『逃げちゃダメ』と背中を押されたような気がしました」
●マクゴナガル校長役は「誇り」 舞台稽古初日に味わった感動も明かす
また、「初めて劇場に入ったときの感動が忘れられない」と目を輝かせる榊原。
「舞台稽古を始めるときに、海外スタッフの粋な計らいで、お客さんと同じ経路で劇場に入ったのですが、『名前がここに書いてある!』『ダンブルドアやマクゴナガルがいる!』って、もう鳥肌ですよ。そして、客席に入ったら『少しだけ魔法をお見せしましょう』と、舞台で繰り出される魔法を体験させてもらって本当に感動しました。『今度はあなた方がお客さんに素晴らしい感動を与えてください』と、そんな風に演者を迎え入れてくれたことは初めてでした」
そのときに観客に感動を届けるという役者のやりがいや使命を改めて感じ、その思いを胸に一つ一つの公演に挑んでいる。
「3年目にして初めて観るという方もいらっしゃいますし、その方にとって『本当に今日来てよかった』と思えるような舞台にできますようにと、いつも思って舞台に立っています」
マクゴナガル校長役については、オーディションで勝ち取った後もなかなか自分が思う人物像までたどり着けず苦労するも、試行錯誤を重ねて役を成長させていったという。
「マクゴナガル校長はいろいろな傷や過去を抱えながらも、みんなに対して広い愛情、慈愛を持っていて、その寛大さを表現するのがとても難しかったです。最初はなかなかたどり着くことができず苦労しましたが、長く演じさせていただくことによっていろいろなチャレンジができて、役を深めることができました」
改めて、本作への参加が自身にとってどんな経験になったか尋ねると「芸能界はどんどん若返りしていますし、私もそろそろ潮時かなと思うこともありましたが、自分の中にまだ向上心ややりたいという思いがあるならば、まだまだ頑張りたいなと。オーディションも初めて、ダブルキャストもロングランも初めてで、まだまだ知らないことがいっぱいあるということにも気づかせてもらい、自分の中ですごく宝になりました」としみじみ。
先日、イギリスのロンドンで舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観劇し、さらに物語のゆかりの地を訪れたという榊原。そこでインドから遊びに来ていた熱烈なハリポタファンと出会い、改めて世界中で愛されている作品だと実感したそうで、「自分はその舞台版のマクゴナガル校長を演じていると思うと、すごく誇らしいことだなと思いました」と語る。
そして、「この舞台は、ハリー・ポッターのその後を描いていて、魔法も素晴らしいですが、親子関係や友情といった世界中の皆さんに共通するようなメッセージもたくさんあるので、ぜひ見に来ていただけたらと思います」と作品の魅力をアピールした。
■榊原郁恵
1959年5月8日生まれ、神奈川県出身。1976年、高校2年生のときに「第1回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で優勝し、芸能界入り。1977年に歌手デビュー。1978年から6回連続で『NHK紅白歌合戦』に出場。1981年から1987年までの7年間、ミュージカル『ピーター・パン』で初代ピーター・パンを務める。1987年に俳優・渡辺徹さんと結婚し、1989年に長男・裕太、1996年に次男・拓弥を出産した。
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