早大スーパールーキー、青学大2年生世代、6つのメダルを獲得した創価大…男子の長距離種目で輝きを放った選手たち

2025年5月18日(日)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


1部5000mはルーキー鈴木が日本人トップ

 関東インカレの男子1部5000mは早大のスーパールーキーが躍動した。この種目でU20日本歴代3位の13分25秒59を持つ鈴木琉胤(早大1)だ。日本学生個人選手権と同じく自ら切り込んでいく。

 先輩たちを従えて2周過ぎまでトップを駆け抜けた。その後は10000mを3連覇したジェームス・ムトゥク(山梨学大4)に前を譲ったが、鈴木は留学生に挑み続ける。

 トップ集団は1000mを2分43秒、2000mを5分24秒、3000mを8分10秒で通過。残り4周でヴィクター・キムタイ(城西大4)がペースを上げると、鈴木は引き離されて、溜池一太 (中大4)、花岡寿哉(東海大4)と第2集団を形成するかたちになった。

 4000mの通過はキムタイとムトゥクが10分54秒で、溜池、鈴木、花岡は約2秒遅れ。残り2周を切って、鈴木が溜池と花岡を引き離すと、留学生に追いついた。ラスト1周は3人の戦いとなり、キムタイが最後の直線勝負を制して、13分31秒83で優勝。鈴木が13分32秒34の2位で日本人トップに輝いた。長距離2冠を狙ったムトゥクは13分34秒88の3位に終わった。4位は溜池で13分36秒93、5位は花岡で13分42秒49。6位は自己ベストの13分46秒30をマークした平島龍斗(日体大4)で、7位(13分49秒24)は大島史也(法大4)、8位(13分49秒72)は山口竣平(早大2)が入った。

 1年生らしからぬ強気の走りを見せた鈴木。「雰囲気も高校とガラッと変わったなかでの試合でしたが、自分の走りはできたかなと思います」と充実の表情で話した。日本学生個人選手権は残り20mで松井海斗(東洋大2)に逆転を許しただけに、今回は花田勝彦駅伝監督のヒントを得て、“2段階スパート”を準備してきたという。

「この2週間は流しを2段、3段と上げるような練習をしてきたんです。残り800mくらいから少し飛び出て、ラストでもう1〜2回上げる。今回は前に選手がいた状況での2段階スパートになってしまい、勝つことはできませんでした。でもガムシャラに走るだけでなく、考える早稲田らしい走りが見えてきたのかなと思います」

 2週間前から“成長”した姿を見せた鈴木。7月に開催されるワールドユニバーシティゲームズでの活躍も非常に楽しみだ。


2部5000mは野中が意地の日本人トップ

 2部5000mは10人の留学生が出場。1000mを2分39秒、2000mを5分21秒というハイペースで通過する。日本人では野中恒亨(國學院大3)と折田壮太(青学大2)が先頭集団に食らいついた。しかし、その後はふたりともじわじわと引き離されていく。

 ラスト勝負を制したスティーブン・ムチーニ(創価大3)が13分32秒59で、10000mとの2冠を達成。日本人トップ争いは折田に先行を許した野中が3000m手前で追いつくとライバルを引き離す。13分43秒99の5位で日本人トップに輝いた。6位は折田で13分57秒12、8位は小池莉希(創価大3)で 13分57秒73。日本人の入賞者はわずか3人だった。

 野中は日本学生個人選手権10000mで2位に食い込むも、ワールドユニバーシティゲームズ代表に選ばれず、「悔しい思いをしたので、見返してやる」と燃えていた。

「1000m2分40秒ペースだったらついていけるかなと思ったんですけど、途中で少し苦しくなったので勝負に切り替えました。折田選手は少し力が入っていると感じたので、後ろから来た留学生と追っていけば確実に勝てると思いました」とクレバーにレースを進めると、意識していた“日本人トップ”をゲットした。

「今回の関東インカレはチームとして少し悔しい状況になっていたので、悪い流れを断ち切って、主将・上原琉翔さんたちの元に笑顔で帰ろう、と思っていました。トラックシーズンは5000m13分30秒台と10000m27分台は出しておきたい。箱根駅伝の総合優勝がチームの目標なので気持ちを切らさずにやっていきたいです」


青学大の“2年生世代”が大活躍

 男子2部の長距離種目では箱根駅伝王者・青学大の“2年生世代”が大活躍した。初日の10000mで安島莉玖と黒田然が日本人ワン・ツーとなる4位(28分19秒81)と5位(28分24秒38)。2日目の1500mでは小河原陽琉が自己ベストの3分45秒40で2位に食い込んだのだ。

 小河原は青学大の2年生世代で唯一、箱根駅伝を走った選手(10区で区間賞)。前年も1500mに出場(10位)しており、志願して中距離レースに参戦した。しかし、3月12日頃に右大腿骨を疲労骨折したため、1500mの練習はほとんどできていなかったという。

「2位という結果は、去年より力もスピードも倍以上ついたんじゃないかなと思います。昨季は箱根駅伝しか出られなかったので、今季は三大駅伝すべてで区間賞を獲得したい。箱根は憧れの飯田(貴之)さん、(佐藤)一世さんも走った4区で活躍したいなと思っています」

 5000mでは高校時代に「世代ナンバー1」と呼ばれた折田壮太 が6位に食い込み、復活を印象づけた。昨季は故障が多く、練習を継続できなかったという。関東インカレは5000mの予選を突破したが、決勝は棄権。学生駅伝は全日本で3区(5位)を任されるも、箱根はエントリーメンバーに入ることができなかった。

「昨季は皆さんが期待するような走りができませんでした。でも信じるべきは自分なのかなと思ってやり続けてきて、10000mの安島と然の走りを見て火がつきました」と折田。レース4日前に胃炎で救急搬送されたが、トラックで存在感を発揮した。

「留学生に勝つことを目標にしていたので、結果には満足していません。箱根駅伝は3区の付き添いで、エースたちの走りを間近に観て、自分も2区を走りたいと思いました。小河原世代じゃなくて『折田世代』と呼ばれたい」

 箱根駅伝のVメンバー6人が卒業した青学大だが、強烈な個性を持つ2年生世代が“黄金時代”を継承していく。


創価大勢が長距離種目だけで46点を獲得

 男子2部で青学大以上に目立ったのが創価大だ。10000mと5000mはスティーブン・ムチーニ(3年)が制して、小池莉希(3年)が両種目で8位。ハーフマラソンは野沢悠真(4年)が2位、山口翔輝(2年)が3位に入った。

 個人的に面白いと思ったのが3000m障害だ。ソロモン・ムトゥク(2年)のハードリングが素晴らしかった。決勝では残り2周の水濠で転倒したが、水濠すら足をかけずに跳び越えるダイナミックな走りで完勝。8分38秒89の自己ベストで制すと、前回覇者の黒木陽向(4年)が8分44秒25で2位に入り、ワン・ツーを飾っている。

 創価大は長距離種目だけで大量46点を獲得。トラック&フィールドの総合成績でも5位と大躍進した。入賞には届かなかったが、石丸惇那(4年)が大激戦の5000mで9位に入っている。吉田響という大エースが卒業したが、主力選手は確実に結果を残した。

 副将の黒木は、「大事なところでソロモンに離されて、50点くらいのレースでした」と自身の走りに不満を漏らしたが、「響さんのような大エースはいませんが、今季の創価大も『やれぞ!』というところを見せられたと思います。チームとしては、三大駅伝すべてで『3位以内』という目標に向かっていき、個人ではすべて1区を任されるような力をつけていきたいです」と意気込んでいた。

 次なる学生長距離ランナーたちの決戦は5月24日(土)にレモンガススタジアム平塚で行われる全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会だ。例年より2〜3週間早い時期に開催されるナイター決戦。どんなドラマが待っているのだろうか。

筆者:酒井 政人

JBpress

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