「鬱になったかも」と思ったら。精神科・心療内科・メンタルクリニック…初診はどこに?心理的に通いやすいところを優先して

2025年5月21日(水)12時30分 婦人公論.jp


イメージ(写真提供:Photo AC)

身近な人に看護・介護が必要になったとき、みなさんはどこに相談しますか?
総合的な相談先として、主治医の所属機関を問わず、活用できるのが「訪問看護ステーション」です。
その地域に開かれた独立した事業所である「訪問看護ステーション」に、黎明期から関わり、自ら起ち上げた「桂乃貴メンタルヘルスケア・ハートフル訪問看護ステーション中目黒」で、自分自身も看護に当たるのが渡部貴子さん。
自らの経験を元に、介護や看護で困っている方への質問・疑問に答えてもらうのがこの連載です。第13回目は、「鬱になったかも?と思ったら」についてです。
(構成:野辺五月)

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前回「介護や看護に困ったら【おとなの相談室】12」はこちら

今や気軽に受けられる「メンタル」関係のお医者さん


Q:4つ下の妹が最近何となく調子が悪く……涙が止まらないことがあるといいます。ただ「いつもではなく、本当にちょっとだけなの」と精神科に行くことはためらっています。心療内科に行くことも検討していますが、特に他に不調はないので……と当人は尻込みしています。

医療機関にかかろうにも、何処に行ったらいいものか?こういう時の選択肢と選び方について、どう考えたらいいのか知りたいです。

A:精神科、メンタルクリニック、心療内科……どこでも大丈夫です。
具体的に何を基準に選ぶと良いのか、どういった手続きが必要か、何を用意すればいいのか、看護サイドからの一つの例としてお話ししますね。

いざとなると尻込みする人がいる反面、最近では就職活動や婚活が「上手くいかないからどうしたらいいのか」と相談に来る人もいるのだという精神科。

もちろん悩み過ぎて、精神的に厳しい状況になれば相談を受けるお医者さんなので、「追い詰められるくらいなら来て」とお医者さんご本人もお話しされていました。そのくらい「気楽に使ってほしい」と、極力「受診するハードルを下げてほしい」「特別に行くところではないのだ」と訴えている機関も多いようです。

これは精神科・メンタルクリニックのお話。ちなみに、精神科とメンタルクリニックは基本的には同じものを指しています。心の障壁を取り払うためにメンタルクリニックという名称が多く採用されるようになったという説もありますが、基本的な部分では同じです。

ただ、中にはスクールドクターや産業医というような役割も持っていて、その上で建てられたクリニックもあります。また、地域や医療機関によっては、社会人のメンタルヘルスを特に専門とするなど「得意分野」を明確に打ち出しているところもあります。
けれども、基本的にはどの医療機関にかかってもかまいません。

まずは通う患者側のニーズや、通いやすさに合わせて選びましょう。

例えば、会社や自宅の駅に近い方がよいという声もあれば、人の目が気になるので遠い方がよいという声もあります。心の負担と、体の負担を考えて場所を選びましょう。

初診は必ず時間がかかると心得る


特に精神関係の医療機関において、覚えておいてほしいことが「初診」に関する注意事項です。初診はどうしても時間がかかります。例えば内科に行って、「熱がある」「喉が腫れている」症状であれば「この薬で治そう」「こういう方法がある」と答えが出やすいので時間もかかりません。

ところが、これが「眠れない」「不安だ」という症状を抱えていたとしましょう。もしもそれが精神系の疾患疑いである場合「どういうときに起こるのか」「何故なのか?」を深堀りする必要があります。


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「何故なのか?」の背景を知るために、医者側も患者を知る必要があります。例えば生活の環境や状況、本人の感情のパターン、周囲の変化……聞くことは山ほどあります。
更に緊張もあるでしょうから、余計に時間がかかるケースがほとんどです。

「対話の為の時間」は当然はじめましての方には必要とされますので、必然的に初診は時間が長くかかります。現在では、電話やネットから予約を受け付けている医療機関が非常に多いです。事前に確認してから行きましょう。

これが初診の心得その1です。

相性はある! 心地よい場所を探して


初診の心得その2は「話してもいいかなというところを探して試す」ということです。

精神関係の医療機関に通うとき、どうしても相性が大切になってきます。
心地よくなければケアが難しい領域だからです。

そこで、まずは何となくでもかまいません。自分の心理的ハードルを下げられる場所を探しましょう。最初にお話しした「通いやすさ」というのは、このために考えることです。

物理的な近さや人の目という問題もありますが、(医者と患者である前に)人と人なので、同性がいい、異性がいい、年上がいい、同世代がいいなど、どうしても「落ち着くための条件」は出てきてしまいます。

「ここだったら話してもいいな」と思えるところを探して、トライしてみるのがよいでしょう。

微妙にかみ合わないなと感じたら担当医を変えても構いません。別の医療機関を探すことも構わないのです。

わりと勘違いされやすいことなのですが、初診で行ったところが合わない場合、精神関係の領域については、積極的に変更することをお勧めしています。

次に行きましょう。この領域の医者は増えてもいます。つまり、合う医者も増えている可能性があるということです。「何となく好き」「よさそう」という直感(フィーリング)も大切、お医者さんとの相性も大切。試しながら自分に合った場所を探しましょう。

心療内科と内科


「メンタルクリニック=精神科」は分かった、では、「心療内科」と「内科」はどう違うのか?

こう聞かれることもあるので、心療内科についてお話しします。

心療内科は、内科の一分野です。体の病気を薬や生活習慣の改善で治療する分野だと思うと分かりやすいと思います。よって、「なんだか精神的に不安定な気がする」という場合で、特に「体に不調があらわれている際に行く場所」だと思うと分かりやすいと思います。

身体の不調の一例としては、
・なぜか涙が出る
・意欲がわいてこない
・なんとなくざわざわする、不安になって気持ち悪い
・息苦しさやノドが詰まることがある
・胸やけ、お腹が空かないなど胃の調子がよくない
・上手く眠れずにいる、寝ていても疲労を感じる
・肩こり・腰痛・頭痛がひどい、冷え症
・音・光に過敏
・めまいや耳鳴り、立ち眩みがあるが検査を受けても異常がない

このように多岐にわたっています。

心療内科に行くべきか?内科に行くべきか?どちらか区別がつかない場合もあります。

「高血圧」は一般的には内科(循環器)が専門となりますが、ストレスが血圧に影響を与えている場合は心療内科の対処法が有効です。内科に駆け込んだとしても、症状をみて、必要に応じて心療内科を紹介される流れになると思います。

同じく「お腹が痛い」という症状も、内科で原因が特定されない場合は、心療内科に回されますので、どちらを選んでも問題ありません。学校や会社に行こうとするとお腹が痛くて、「とりあえず痛みをどうにかしたい」という場合であれば、内科で薬を貰うことが必要があります。自分が必要だと思ったら、そちらに向かうのがベターです。

心療内科と、精神科・メンタルクリニックは?


最後に、心療内科と、精神科・メンタルクリニックで迷った際はどうすればいいでしょうか。

基本的に「体の症状があるかないか」を見て決めるとよいでしょう。


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少しでも体に症状が出ている場合は、心療内科と覚えましょう。

もちろん、「自分にとって必要だと思うところ」「心理的に通いやすいところ」など「心理的な通いやすさ」を優先してくださいね。

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