アレもコレも「本物」です 能登半島の小さな街にある「宇宙博物館」がとにかくガチすぎる

2022年5月25日(水)20時0分 Jタウンネット

石川県の羽咋(はくい)市は能登半島の西の付け根に位置する、人口約2万人の小さな市だ。ここに「NASA特別協力のガチ宇宙博物館がある」というツイートが、2022年5月19日に投稿され、注目を集めている。

「コスモアイル羽咋」という、知る人ぞ知る宇宙科学博物館である。

話題のツイートには上のような写真と共に、「展示物は旧ソ連ルナ計画の月面探査機予備機(本物)や実際に地球に帰還した宇宙カプセル、NASA所有の有人月面探査車の実験機等だ」というコメントも添えられている。「にいがたさくら@小話する人」(@monkey_across)さんが投稿したツイートには、2万を超える「いいね」が付けられ(5月24日現在)、こんな声も寄せられている。

「地元民ですが、過去に一度だけ行きました。一見レプリカ?なのかと思いきや本物だと知ってスゲェや!と思いました(笑)」
「展示物は超ド級・・・ほんまもんの博物館ながら、遊び心たっぷりなんすよ」
「ここは凄い所です。初めて行った時に『何故? こんな所にレッドストーンがあるの』 それだけで舞い上がりましたね」
「展示は凄いのに知名度が低いのよね、ここ」

そして気になるのは、にいがたさくらさんのこんなつぶやきだ。

「凄い展示物だが、揃えれたのには理由がある。予算がなかったからだ」

いったい、どういうこと?「コスモアイル羽咋」とはどんな場所なのだろう? 

ロケットの「レプリカ」が高すぎた

投稿者「にいがたさくら」さんによると、「コスモアイル羽咋」を訪れたのは、2015年のことだったという。「歴史や地理、旅行に関する小話を毎日2話投稿しており、たまたまコスモアイル羽咋の話がバズっただけです」と謙遜気味に語った。

この博物館設立のきっかけについては、別ツイートで次のように紹介している。

「元々羽咋市は8世紀頃の古文書にUFOっぽいのが現れたという記述があり、それに全乗っかりでUFOの町をアピールしている。 当初はそのシンボルとして建てられだのがこの宇宙博物館、コスモアイル羽咋だ。しかし建物の建設に予算を使ってしまい、展示物にかける費用がない」

にいがたさくらさんが投稿した「小話」の詳細は、「コスモアイル羽咋」のウェブサイトで読むことができる。「UFOによる町おこし」の仕掛人となった高野誠鮮(じょうせん)さんのインタビューが掲載されているのだ。

それによると、高野さんは初め、博物館の入り口に実物大のロケットのレプリカを置こうと考えていた。

しかし、レプリカを設置するには1億6000万円かかる上、定期的なメンテナンスが必要になることが分かった。何せ羽咋は海が近いため、潮風でレプリカの鉄がすぐに錆びてしまうのだ。

展示物に使える予算は、2億円。レプリカだけでもそれほどの金額がかかるのなら、予算が全く足りない......。

借用書に、「10 decade」と書き込んだ

さらに、その後見学に訪れたスミソニアン博物館での学芸員との会話から、彼は博物館には「本物の宇宙船やロボットが不可欠」だと確信することになる。

「こうなったら(展示物は)自分で集めてくるしかないので、単身アメリカに渡りました。NASAに頼んで本物の宇宙機材を借りて来ようと思ったんです。
NASAの広報部長に頼んで収蔵庫を見せてもらったところ、月面・火星探査機『ルナ・マーズローバー』がありました。借りれるかどうか聞いたところ、『大丈夫だよ』と。さらに月の石もありました。これも貸してあげるよと。そんな調子でいろんなものを借りられることになったわけです。
そして事務所で借用書のようなものに、何年借りたいのか記入する欄があったので、そこに『10 decade』と書き込みました。実はこれ、100年って意味なんです(笑)。『なに馬鹿なこと書きやがって、ふざけた日本人だ。』と大笑いされました。
しかしこっちも必死だったので、『香港もイギリスに100年借りられてたんだから、私たちにも100年貸してください!』とわけのわからない理屈で説得しました。すると、NASAのスタッフたちは『こんなことを書くやつは今まで一人もいなかった』と気に入ってくれたんです。そして本当に100年の契約で貸してくれたんです。
博物館の入り口に置く予定だった本物のロケットも、NASAから格安で買うことが出来ました。本体はマグネシウム合金なので全く錆ません。維持管理費もほとんどゼロです。」(「コスモアイル羽咋」ウェブサイトより)

ロケットのレプリカを作るにはお金がかかりすぎることと、「本物の宇宙船やロケットが不可欠」であるという気付き。この2つが合わさって、「ガチ」な宇宙博物館の礎が築かれていったのだ。

高野さんのインタビューは、さらに続く。

「NASAの次はロシアです。ロシア宇宙局と連絡をとり、宇宙船を買い付ける話をまとめました。しかし、当時は信頼できる国とは言えなかったので、まずはアメリカに運んでもらい、NASAの人間に本物かどうか確かめてもらってから買うことにしました。
ロシアから運ばれた3機、『ヴォストーク宇宙カプセル』、『モルニア通信衛星』、『無人月面探査機ルナ24号』は、間違いなく本物でした。ルナ24号に至っては、世界に1機しか残っていないという大変貴重なものでした。私もNASAのスタッフも興奮気味でしたが、ロシアの連中が差し出した請求書の金額は、事前に電話で話していた金額よりも一桁多いんです」「コスモアイル羽咋」ウェブサイトより)

さて、まるでミステリー小説のようにスリリングな展開だが、結末はどうなったのか? 気になる方は「コスモアイル羽咋」のウェブサイトを訪れてほしい。

「宇宙人」も展示されてます

高野さんらのそんな努力の結果、驚くべきことに、石川県の小さな市・羽咋市にある宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」には、例えば以下のような「本物」が展示されている。

一度打ち上げられた「レッドストーンロケット」(NASAから入手)
月面・火星を走ることを目的に作られた「ルナ・マーズローバー」(ジョンソン宇宙センターより羽咋市に恒久貸与)
宇宙から帰還した旧ソビエトの宇宙船「ヴォストーク宇宙カプセル」
宇宙人に地球の生命や文化を伝えるための画像が描かれた「ボイジャー・ゴールデン・レコード」のレコードカバーの、世界に一つしかない原盤
アポロ17号が月面に持ち帰った「月の土」(NASAから借用)
アポロ17号の船長、ユージン・サーナン宇宙飛行士が着ていた宇宙服(NASAから借用)

他にも、素手で触ることのできる本物の隕石のかけらや、実物と同じ素材で作られた船外活動用宇宙服のレプリカ、実際に使用されたものと同一の部品・素材を用いて組み立てたアポロ司令船のモックアップなども展示されている。そして「ロズウェル事件の宇宙人」(?)も......。

一階の売店では宇宙食をはじめとする「宇宙グッズ」も販売されている。

これはもう、「一見の価値あり」と言って間違いないだろう。

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