地球の核には大量の金が眠っていて、少しずつ地表に漏れ出していることが判明
2025年5月28日(水)21時0分 カラパイア
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地球の核には膨大な量の金が存在しており、それが長い時間をかけてマントルを通じて地表へと移動しているという。
ドイツの研究者たちは、ハワイの火山岩に含まれる金属同位体の分析から、この現象を示す証拠を発見した。
リソスフェア(岩石圏)の奥深くからにじみ出た火山岩に含まれる同位体を調べた結果、地球の地殻に存在する金などの貴金属は、もともとは地球の核から漏れ出して、非常に長い時間をかけて対流するマグマによって地表へと運ばれてきたことが分かったのだ。
地球の核から金が漏れている
地球の中心部「核」には、金をはじめとする貴金属が多く含まれていると考えられていたが、それらが地球表面にまで届くルートはわかっていなかった。
ところが今回、ドイツ、ゲッティンゲン大学の地球化学者ニルス・メスリング氏らの研究によって、その経路の一端が明らかになった。
彼らは、リソスフェア(岩石圏:地殻と上部マントルから成る硬い層)の下から噴出した火山岩に含まれる「ルテニウム[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0]」という金属の同位体を分析した。
同位体とは、同じ元素でも中性子の数が異なるバリエーションのことを指す。ルテニウムにもいくつかの同位体があり、その組成の違いを精密に分析することで、起源を探る手がかりになる。
その結果、ハワイ諸島の火山岩から通常のマントルでは見られない「ルテニウム100」が検出され、これは地球の核に由来するものと推測された。
ハワイの溶岩中に、異常な同位体組成を持つ貴金属ルテニウムの微量な痕跡を発見した Photo: United States Geological Survey (M. Patrick)
地球はかつて“金”を飲み込んだ
現在、私たちが地殻(地球を覆う最も外側の固い層)から採取できる金は、地球が保有している総量のごく一部にすぎない。
研究によれば、地球に存在する金の99%以上は、金属を主成分とする核に集中しているという。その金の総量は、地球の全陸地を厚さ50cmで覆えるほどとされる。
こうした分布は、地球が形成された初期の過程で起きた「鉄のカタストロフ(iron catastrophe)」と呼ばれる現象によって説明される。
これは、地球がまだ高温でドロドロに溶けていた頃、鉄などの重い元素が沈降し、中心部に集まって核を形成したというものである。
このとき、金などの「親鉄元素(鉄と結びつきやすく、核へと集まりやすい性質を持つ元素)」も一緒に核へと移動したとされている。
その後、小惑星の衝突などによって追加の金や重金属が地表に供給された可能性もある。
地球の中心核から金属が漏れ出ている様子を示す図 image credit:University of Göttingen/OpenAI[https://www.uni-goettingen.de/en/3240.html?id=7808]
地球の核は金属物質をマントルに届けている
メスリング氏の研究チームは、新たに開発した分析技術によって、核からの物質が上部マントルにまで届いていることを裏付ける証拠を見つけた。
それによれば、ルテニウム以外にも、パラジウム、ロジウム、プラチナ、そして金といった貴金属が、核からマントルを通じて漏れ出していると推測される。
研究チームのもう一人の地球化学者であるマティアス・ウィルボルト氏は、次のように述べている。
今回の発見は、地球の核がそれほど孤立した存在ではないことを示しています。我々は今、数百京トン規模の超高温マントル物質が、核とマントルの境界から湧き上がり、ハワイのような海洋島を形成していることを証明できました(ウィルボルト氏)
ただし、こうした貴金属は急速に地表に現れるわけではなく、また人類が地球の中心まで掘り進めて採取するのも現実的ではない。
それでも、この発見は地球内部の動的な仕組みを理解する上で大きな一歩となる。
金や貴金属が核から漏れ出しているという事実は、私たちが普段手にする金の一部が、数十億年前に地球の奥深くに閉じ込められた物質の帰還であることを示している。
地球という惑星の内部は、いまだに多くの謎を抱えている。今回の発見が、他の岩石惑星にも共通する仕組みを解明する糸口になるかもしれない。
この研究は『Nature[https://doi.org/10.1038/s41586-025-09003-0]』誌(2025年5月21日付)に掲載された。
References: Press release: Tapping into the World’s largest gold reserves[https://www.uni-goettingen.de/en/3240.html?id=7808] / Ru and W isotope systematics in ocean island basalts reveals core leakage[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09003-0]