全日本大学駅伝関東予選、全4組の10000mレースの激闘、最終組はラスト1枠をめぐり日体大と東洋大が大激戦
2025年5月30日(金)6時0分 JBpress
(スポーツライター:酒井 政人)
1組は順大・山﨑が制して、中大が総合トップ
全日本大学駅伝の関東学連推薦校選考会が5月24日に神奈川・レモンガススタジアム平塚で行われた。前回大会で8位までに入った國學院大、駒大、青学大、創価大、早大、城西大、立大、帝京大はシード権があり、この選考会を勝ち抜いた「7校」が11月2日に開催される本戦の出場権を得ることができる。
選考方法は10000mのレースを4組(1組に各校2名が出場)実施。全8名の合計タイムで争われる。例年は蒸し暑さが“最大の敵”になるが、今年は例年より3週間ほど早く行われたこともあり、気温が20度を下回るなかでのレースになった。
1組は佐藤大介(中大2)と花岡寿哉(東海大4)が飛び出して、1000mを2分51秒で通過した。しかし、3300m付近で後続に追いつかれて、トップ集団は5000mを14分38秒で通過。5700m付近で花岡がペースを上げると山﨑颯(順大4)と抜け出すかたちになったが、再び、集団に吸収されて、ラスト1周の勝負になった。
まずは坂本駿(中央学大4)がスパートをかけると、残り200mを前に山﨑がトップを奪取。「ラスト勝負なら絶対負けないと思っていました」という山﨑が逃げ切り、29分00秒69でゴールに駆け込んだ。2着は田原琥太郎(中大2)で29分01秒99、3着は佐藤で29分03秒35。関東インカレ後に発熱して体調が万全ではなかった花岡が4着、坂本が5着だった。
1組目終了時の総合結果は中大、大東大、東海大、日大、東洋大、順大、神奈川大が通過圏内で、中央学大、日体大、明大が続いた。
2組は吉居がトップを飾り、中大が首位固め
例年ならスローペースになることが多い2組だが、1000mを2分53秒で入ると、スティーブン・レマイヤン(駿河台大3)がペースアップ。吉居駿恭(中大4)が反応して、ふたりが飛び出す展開になった。
レマイヤンと吉居は交互に引っ張るかたちでレースを進行。5000mを14分24秒で通過して、第2集団に25秒ほどの差をつけた。
雨が強くなった終盤は吉居が先頭を駆け抜けて、残り1周でスパート。28分34秒81でトップを飾った。2着はレマイヤンで28分38秒86。3着は池間凛斗(順大2)で29分21秒18、4着は井坂光(東農大1)で自己ベストの29分22秒21、5着は三宅悠斗(中大1)が入った。
6日前のセイコーゴールデングランプリ3000mに出場した吉居は、「状態は悪かったんですけど、これまで3000mと5000mを中心にやってきたので、ペースにゆとりがあったんです。伝わったかわからないですけど、(レマイヤンに)『1000mずつ行こう』と声をかけました。タイム的には29分00秒ぐらいかなと思っていたので、かなり上回ることができて良かったです」と主将らしい強気の走りを披露した。
一方、17年連続で全日本大学駅伝に出場している東洋大は薄根大河(3年)が大苦戦。関東インカレのハーフマラソンは転倒して途中棄権となっただけに、「絶対にチームに貢献しようと思っていました」と気合十分だったが、「少し力んでしまい、集団のアップダウンに対応しすぎてしまいました……」と後半は集団から離され、30分11秒91の33着に沈んだ。
2組終了時の総合結果は中大、大東大、順大、東海大、日大、神奈川大、中央学大が通過圏内で、東洋大、日体大、駿河台大が続いた。
3組は大東大勢がワン・スリー
雨があがった3組は総合トップを“独走”していた中大の藤田大智(3年)が主に引っ張り、3000mを8分30秒、5000mを14分20秒で通過。後半は宮地大哉(山梨学大3)が積極的な走りで牽引した。
レースが動いたのは残り600m。まずは藤田がペースを上げると、先頭集団は6人に絞られる。ラスト200mで藤田が再度ペースアップするも、最後の直線で大濱逞真(大東大2)が逆転。28分37秒48でトップを奪った。2着の藤田は28分39秒00で、3着には中澤真大(大東大2)が28分39秒32で続いた。5着の米田昂太(中央学大2)が8分40秒18をマークするなど、8人が自己ベストとなった。
ワン・スリーを飾った大東大。大濱は、「3組で他校との差を広げることができればいいなと思っていたので、前に出たりせず、終盤まで体力を温存することが(中澤との)共通認識でした。ラストスパートは自分の強みですし、狙い通りに1着を取れて良かったです」と笑顔を見せた。
3組終了時の総合結果は中大、大東大、東海大、順大、中央学大、日大、日体大が通過圏内。次点の東洋大は日体大と約7秒差につけていた。
最終4組は日体大と東洋大が大激戦
6人の留学生が出走した最終4組は超ハイペースになった。リチャード・エティーリ(東京国際大3)を先頭に1000mを2分45秒で入ると、日本人では溜池一太(中大4)、大島史也(法大4)、吉岡大翔(順大3)、岡田開成(中大2)がトップ集団に食らいついた。その後、大島と吉岡が離れると、岡田に続いて、溜池もついていけない。
5000mはエティーリ、シャドラック・キップケメイ(日大3)、ジェームス・ムトゥク(山梨学大4)が13分43秒で通過。10000mで日本人学生最高の27分21秒52を持つ前田和摩(東農大3)を軸に進む大集団は14分25秒ほどで通過した。
キップケメイとのラスト勝負を制したエティーリが27分27秒55で1着。日本人トップを死守した溜池が28分04秒39の4着でゴールに飛び込んだ。「27分台」を狙っていただけに、「溜池はもっといけるんだぞ、というところを見せたかった」と本人は悔しがったが、中大は岡田も28分30秒23の11着でまとめて、最終組でも存在感を放った。
日本人2番と3番は自己新をマークした順大勢で、吉岡が28分22秒04の6着、川原琉人 (2年)が28分24秒54の7着。約1年ぶりの実戦復帰となった前田は28分30秒25の12着でゴールした。
最終組で“逆転”を狙った東洋大は松井海斗(2年)が自己ベストの28分29秒08で9着に食い込むも、逃げ切りたい日体大は平島龍斗 (4年)が28分30秒10の10着と好走。両者の差はほとんどつかなかった。逆に日体大は山崎丞(4年)が28分47秒89の24着で踏みとどまり、27着(28分53秒14)だった東洋大の内堀勇(2年)に先着した。
最終成績は中大が3時間50分27秒09で堂々のトップ通過。以下、大東大(3時間51分28秒02)、順大(3時間51分33秒97)、日大(3時間51分57秒08)、東海大(3時間52分01秒05)、中央学大(3時間52分41秒58)の順で通過した。そして最後の1枠は日体大で3時間53分00秒83だった。次点は東洋大で約11秒届かず、全日本大学駅伝の18年連続出場を逃した。
筆者:酒井 政人