悶絶レベルで旨いパキスタンカレーの名店『ラヒ・パンジャービー・キッチン』(西荻窪)に行ってきた
2020年6月14日(日)10時50分 食楽web
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東京・西荻窪といえば、吉祥寺、荻窪などのビッグタウンに挟まれた“隙間”な場所ですが、歩いてみると、不思議とのんびりした“ゆとり”を感じる街です。ゆとりと言っても “洗練”とか“上質”とかいった意味とは少し違います。駅前の路地裏には飲食店がひしめいていて、昼間からお酒を楽しんでいる人もたくさんいるのですが、歳を重ねた大人の“ゆとり”とでもいうべきゆるゆるとした空気が漂っているのです。
そう感じる背景の1つに、“西荻”には舌の肥えた人たちが通う個性的なレストランが揃っているということもあるかもしれません。今回ご紹介するお店もその1つ。創業15年のパキスタン料理店『ラヒ・パンジャービー・キッチン』です。ここはカレー好きで知られるイラストレーター、故・安西水丸さんが通い詰めたお店です。そう聞いただけでもう美味しいと思ってしまいますよね。というわけでさっそく知人と食べに行くことにしました。
『ラヒ』のパキスタンカレーは唯一無二の味わい
西荻窪駅南口より徒歩2分、建物の2階にあります
階段を上がると、そこは10席だけの小ぢんまりとした空間。年季が入った椅子やテーブルも心地よく、窓から風が抜けるとスパイスがふわりと香ります。そうそう、店名の“ラヒ”とは、旅人を意味し、まさに海外にいるような気分になれるのです。
壁には安西水丸さんがお店のために描いたイラストが飾られています
さて、メニューのカレーはというと、前もって情報を入れていたので迷うことはありません。例えば口コミサイトには、「ラヒのマトンカレーは驚愕の美味しさ!」「鶏の砂肝カレーは唯一無二の味!」「ラヒのマトントリッパーカレーは濃厚な旨味とコク!」「これまで食べた豆カレーの中でもダントツ!」などの絶賛コメントが多数。
というわけで、あえてその4つカレーをチョイスしてみることにしました。ちなみに、こちらにはセットメニューがあるので、カレー2品を選べるお得なセット(1700円)で各自2品ずつ注文してシェアすることに。ちなみにセット内容は、ひよこ豆のサラダと、ブラウンライスもしくは全粒粉のナン、ラッシー(1杯おかわり可能)です。
では、さっそく4つのカレーを一気に紹介しましょう。
マトントリッパー(羊肉の胃袋)のカレー
まずは、マトントリッパー(羊肉の胃袋)のカレーと、鶏の砂肝のカレーの2種類。トリッパーなどのモツ系は、長時間煮込んでも野性的な匂いが気になる場合がありますが、こちらのは全くと言っていいほど臭みはありません。丁寧な下処理とスパイスの巧みな使い方によるものでしょう。
鶏の砂肝のカレー。ジャリっと硬い食感になりがちな砂肝ですが、こちらのはとても柔らか
砂肝のほうも、クミンやカルダモン、クローブなどのスパイスが香り、しかも砂肝にありがちなジョリジョリした食感はほぼなく、サクリと柔らかい食感です。そしてどちらも濃厚な肉の旨みとコクがとろりと口に広がります。まるでシチューのよう。
豆のカレー。この日はキドニービーンズを使用していました
続いて「豆のカレー」。一般的に豆のカレーといえば、甘いタイプが多いのですが、こちらの豆カレーはしっかりスパイシー。キドニービーンズはホクホクとしていて、豆がまるでお肉のような旨みに満ちています。ニンニクもたっぷり使っているようで、ものすごく後を引きます。
マトンカレー。こちらのお店の看板料理
最後に「マトンカレー」。骨つきのマトンがゴロゴロと入っていて、カレーというよりメインディッシュの肉料理。そのお肉は口の中でほろほろと崩れるほど柔らかく、マトンの独特の香りとスパイスのハーモニーで高貴な香り。これまで食べたマトンカレーの中で間違いなく一番美味しい! と断言したい。
そしてさらに秀逸なのがライス。こちらのカレーは全体的にオイルが多めですが、全くと言っていいほどくどく感じない理由の1つに、ブラウンライスに秘密がありそうなのです。
細長いお米のバスマティライスを使用。水分がなくパサパサしているのですが、あっさりしています
このブラウンライスについて、シェフのムバッシル・ラヒームさんに聞くと、「うちのカレーは濃厚なので、ついついライスをたくさん食べてしまうんです。だから少しでもヘルシーに食べて欲しいと思って、炒め玉ねぎを一緒に炊いているんです」
シェフのムバッシル・ラヒームさん。笑顔が素敵で、とても気さくに話してくれます
さらにシェフにお話を伺っていると、 “パキスタンのカレー”の特徴は、肉をトロトロになるまで煮込むことだそうで、その時間は最低でも4時間以上だそうです。
「ただ、パキスタンのカレーといっても、スパイスの使い方や手順、煮込み時間などは作る人によってかなり違います。だから、出来上がったカレーも印象が全然違うと思います。うちのカレーは、私が生まれ育ったパンジャーブ州ラホールの家や近所で日常的に食べていた味をベースに、私がアレンジを加えたものです」(ラヒームさん)
来日して20年、元々は国際交流協会でパキスタン・インドの食文化を教えていた経歴を持つシェフですが、ここのカレーはラヒームさんの家庭の味ともいうべき、唯一無二の味なのです。
う〜む。カレーの味も深いが、シェフのお話も深い。しかも西荻という街の空気も手伝って、なんとも充実した時間が過ごせるお店なのです。ぜひ、ラヒームさんのカレーで、西荻のゆるゆるした時間を過ごしてみてはいかが?
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:ラヒ・パンジャービー・キッチン
住:東京都杉並区西荻南3-15-17 2F
TEL:03-3331-7860
※営業時間と定休日は流動的なのでTwitterでご確認ください
@nishiogirahi
アクセス:JR中央・総武線 西荻窪駅(南口)から徒歩3分