幅広い事業を営む阪急阪神ホールディングスが取り組む、未来にわたり住みたいまちづくり

2023年7月13日(木)16時0分 ソトコト

まちを支える「地域環境づくり」と「次世代の育成」に力を入れる


ソトコト まず、この取り組みを始めた理由を教えてください。
平野里美さん(以下、平野) 当グループは100年以上の長きにわたり、阪急阪神沿線を中心とした地域社会に育まれ、地域の皆様と信頼関係を築いてきました。これまでの感謝をこめてお客様へ恩返しがしたいですし、私たちも地域社会の一員として未来に向けてともに歩んでいこうと、社会貢献に特化したプロジェクトを2009年に始めました。阪急阪神沿線を中心に、私たち一人ひとりが関わる地域において、「未来にわたり住みたいまち」をつくることを目指しています。


ソトコト 地域社会を重視しているのですね。社会貢献というととても大きなテーマですが、軸にしているものはあるのでしょうか。
平野 重点領域として、力を入れている分野が二つあります。それが「地域環境づくり」と「次世代の育成」です。まちを支える要素として、場としての「地域環境」と活動主体である「人」に焦点をあてています。
環境と言うとエコにまつわる活動だけかと思われるかもしれませんが、地域コミュニティ形成にも目を向けており、「地域環境づくり」では、地域コミュニティが安全・安心かつ文化的で環境に配慮しながら発展する、持続可能なまちづくりに取り組んでいます。「次世代の育成」では、未来の地域社会を担う人材である子どもたちが、夢をもって健やかに成長する機会を創出しています。


グループ内で協働した小学生向けの体験学習プログラム


ソトコト 具体的にはどのような活動をされているのですか。
平野 「協働」を大事にしながら、次の三本柱で活動しています。一つ目が「企業での協働」です。当グループには都市交通事業をはじめ、不動産事業、エンタテインメント事業、旅行事業などを担う会社が100社ほどありますので、各社の事業特性やノウハウ、ネットワークを活用して、年間約100件の社会貢献活動をしています。
その一つとして、小学生向けの体験学習プログラム「阪急阪神 ゆめ•まちチャレンジ隊」があります。実際の職場に招待してグループ会社の仕事を学んでもらったり、職業体験をしてもらったりと、夏休みの宿題のお手伝いにもなるような取り組みです。2010年から毎年夏の恒例プログラムとして無料で行っています。





2023年の夏は49プログラムを企画しました。例えば、阪神電車の車庫に行ったり、大阪・梅田の商業施設『HEP FIVE』にある観覧車の仕事をしたり、商業施設などの清掃スタッフやマンションの販売員、沿線情報紙「TOKK」の編集者などにチャレンジできます。またオンラインのシェフ体験では、事前にコックコートを自宅へお送りして、プロのシェフに習いながら料理ができます。
ソトコト 本格的な内容ですね。さまざまなグループ会社をもっているからこその取り組みだと感じます。子どもたちは「いろいろな仕事があるんだ」と実感できますね。
平野 2020年だけはコロナ禍で実施を見合わせましたが、毎回10倍くらいの応募倍率で、今年は1万人以上の方からのご希望があるなど、おかげさまで人気のプログラムとなっています。さまざまな職場で働く大人たちに出会えるという点も注目していただいている理由かもしれません。2010〜2022年度で約19,000名の小学生をご招待しました。(編集部注:2023年の応募は終了しています)





さらに、小学生高学年向けのキャリア教育プログラム「阪急 ゆめ•まち わくわくWORKプログラム」も行っています。阪急電鉄の創業者である小林一三のまちづくりの取り組みや、まちにある多くの仕事などについてお伝えする出張授業です。この2つのプログラムは、経済産業省主催の「第8回キャリア教育アワード」での経済産業大臣賞(大賞)や、文部科学省主催の「令和2年度 青少年の体験活動推進企業表彰」で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞しています。


市民団体への助成金だけでなく、その先の未来に向けた関係づくりを大切に


ソトコト 三本柱の二つ目は何でしょうか。
平野 「地域社会との協働」です。グループ従業員の募金をもとに、会社が同額を上乗せして、地域社会を支える市民団体を助成する「阪急阪神 未来のゆめ•まち基金」を運営しています。これまでに14回開催し、183団体へ計1億906万円を助成しました。この半額が従業員からの募金ということです。また、お金をお渡しするのはあくまで入り口であって、市民団体との関係性をしっかりつくっていくことを重視しています。
その一つとして、2017年から沿線の市民団体やグループ会社などとの協働で、社会課題やソーシャルな活動を知る機会を提供する「阪急阪神 ゆめ•まちソーシャルラボ」も行っています。





市民団体の活動内容や強みを活かして、子ども向けの手話教室を開催したり地域の自然環境を守る活動を紹介したりする、お客様参加型のワークショップやセミナーです。一般の方が市民団体の活動に目を向けるきっかけになるとともに、市民団体と一緒に行うことでより深みのある内容になっています。


ソトコト 助成金を渡して終わりではなく、地域の方と手をたずさえて広げているのですね。


従業員が日常での1アクションで、子どもたちの未来を応援


平野 3つ目が、「従業員との協働」です。グループ従業員は2万人ほどいるのですが、その一人ひとりは地域社会に根付いた一員だとも考え、社内で気軽に社会貢献活動に参加できるよう努めています。グループ従業員のボランティア活動への支援金制度などもあるのですが、2022年9月から新たに始めたのが、社内食堂で一か月に1度、寄付つきメニューの提供などを行う「ゆめ•まち アクションデイ」です。
ソトコト おもしろい取り組みですね。
平野 ありがとうございます。「従業員を巻き込んでいくためには、日常のなかで社会貢献活動に参加できることが大事なのではないか」と担当内で議論した末に生まれたものです。赤と青の2種類のICタグを用意し、それを取ったら食事代とともに寄付金が給料から差し引かれる仕組みになっています。





赤いプレートは好きなメニューに載せることで1枚につき50円の寄付、青いプレートが載った寄付つきメニューは1品につき10円の寄付になります。約半年寄付を集め、会社が同額を上乗せして、困難な状況にある子どもたちを支援しているゆめ•まち基金の団体に寄付しています。半年ごとに団体は変える予定です。始まったばかりの企画ですが、毎回300人以上の社員が参加しています。
ソトコト それはすばらしいですね! 日常での一アクションとして、気軽に参加できますね。
平野 2019年には、「阪急阪神 未来のゆめ•まちプロジェクト」の10周年の特別企画として、沿線を走る「SDGsトレイン未来のゆめ•まち号」の運行も始めました。当初は1年限定のつもりだったのですが、お客様や自治体の皆様はじめ社内外から高い評価をいただき、現時点では2025年の大阪・関西万博までの運行を予定しています。





まちは一人ひとりの想いが集まることで、よりよい未来をつくれる


ソトコト いろいろな取り組みに、どのような反響が寄せられていますか。
平野 子どもたちが夢を描けるような試みに評価をいただいたり、「知ることで共感の輪が大きく広がっていく」「自分の住んでいる地域を好きになれる」といったご意見を数多くいただいています。私自身は、「阪急阪神 ゆめ•まちチャレンジ隊」などでお子様が目を輝かせながら生き生きしている姿を見ると「やってよかった」と思いますし、未来ある子どもたちの人生の一ページに、当社の取り組みが何か少しでもお役に立てればと願っています。


また関わる従業員からも、自分たちの仕事が子どもをはじめとするお客様に理解されることのやりがいや、募金など個人の小さな活動が「地域のためになる」という実感を持つ機会になるといった声も寄せられ、提供している側ではありますが、こちらがいただいているものもたくさんあります。
ソトコト どのような未来像を描いていらっしゃいますか。
平野 まちは、そこに住む一人ひとりの想いが集まることでよりよい未来をつくれるのだと思います。住む人がまちに愛着をもって暮らせたら素敵ですし、子どもたちも「このまちを大切にしたい」と感じてくれたらいいですね。今後もさまざまな人たちとのつながりを大切にしながら、まちづくりに寄与していきたいです。
ソトコト グループの強みやグループ会社の特性を掛け合わせて、すばらしい取り組みをされていると感じました。本日はありがとうございました。





平野里美(ひらの・さとみ)
『阪急阪神ホールディングス』人事総務室 サステナビリティ推進部 社会貢献担当 課長
2002年、『阪急電鉄』に入社。人事、秘書、広報業務などを経て2011年より『阪急阪神ホールディングス』グループの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」を担当。


text by Yoshino Kokubo

ソトコト

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