大人気の観光列車「リゾートしらかみ」、日本海の美しい景色、伝統芸能…5時間の列車旅を徹底的に楽しむための極意
2024年7月20日(土)8時0分 JBpress
文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)
乗り鉄におすすめのキハ48形「くまげら」編成
日本には風光明媚な場所を走る路線が数多くあるが、今回ボクがオススメするのは秋田県の東能代と青森県の川部を結ぶ五能線。世界遺産白神山地の麓を進み、日本海の美しい景色を堪能しながら、津軽富士ともよばれる岩木山を望む、なんとも欲張りな路線である。その五能線を満喫するためにつくられた列車が「リゾートしらかみ」だ。
「リゾートしらかみ」は秋田から五能線を経由して青森までを約5時間もかけて結んでいる観光列車。乗車時間が長いにもかかわらず、冬でも2往復、春から秋にかけては3往復も走っていることからも、その人気ぶりが伺える。
車両もHB-E300系の「橅」編成と「青池」編成、それにキハ48形の「くまげら」編成と3タイプある。HB-E300系は、ディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池を組み合わせて走るハイブリッドシステムの車両で、乗り心地も快適だ。しかし国鉄時代からのディーゼルカーで車歴も長く、いつ廃止になってもおかしくない「くまげら」編成のほうに、乗り鉄としては乗っておきたいところである。
どの編成も車内の設備はほぼ共通で、両運転台の後ろにはフリーの展望席があり、2号車は半個室のような4人用のボックス席、そのほかは2列のリクライニングシートが並んでいる。どの列車にどの車両が使用されているのかはJR東日本のホームページに掲載されているので、事前に確認することができる。
また「リゾートしらかみ」は特急ではなく快速列車。すべての座席が指定席なので乗車するには指定券が必要だが、今の時期発売している「青春18きっぷ」でも指定席券を購入すれば乗ることが可能なのだ。乗り鉄にはなんとも嬉しい限りである。
そしてこの列車の指定席を取るうえで、どうしても抑えておきたいポイントがある。それは、絶対にA席を確保することだ。五能線を走る下り列車は常に進行左側に、逆に上り列車は常に進行右側に日本海を望んで走る。つまりいつも日本海に寄り添い、日本海にもっとも近い席がA席なのである(ボックス席の場合はA・D席)。C・D席では通路を挟むうえにA・B席に座っている人がいるため、わざわざ立ち上がらないと海の景色がよくみえない。つまりA席が確保できるかどうかでこの列車と五能線を存分に楽しめるかが決まるといっても過言ではない。
車窓いっぱいに広がる圧巻の日本海
さてそれでは「リゾートしらかみ」の旅のポイントを紹介しよう。秋田駅を出発して1時間ほどで、列車は能代駅に到着する。能代といえばバスケの街としても有名だが、なんとホームにバスケットのゴールがあり、乗客がボールをシュートできる全国唯一の体験がおこなわれているのだ。シュート体験は1・3号のみなので要注意。ちなみに東京駅を始発の「こまち」に乗れば、秋田駅で「リゾートしらかみ3号」に十分間にあう。
その後、あきた白神駅を過ぎた第二小入川橋梁から車窓いっぱいに日本海が広がっていき、岩館〜大間越間の奇岩が織りなす大パノラマや、十二湖の先に広がるガンガラ岩を眺め、荒々しい波がつくりだした岩々が続く深浦海岸で海の景勝はピークを迎える。空に浮かぶ雲の白さとコバルトブルーの澄んだ海、怪石群の茶色とのコントラストは眩いばかり。
列車が津軽平野にさしかかる頃、先頭車の展望席では人形芝居や語り部、三味線の生演奏など津軽の伝統的なイベントがおこなわれ、気がつくと窓の外には「お岩木さん」と呼ばれる津軽の人々のシンボル岩木山の勇姿が旅のフィナーレを告げてくれる。
乗車券にわずか840円を加えることでこのようなさまざまな楽しみが味わえ、五能線の大自然を謳歌できる「リゾートしらかみ」。上記のように秋田発の下り列車に乗車するのが一般的だが、その分指定席券も取りづらい。青森発の上り列車であれば比較的空いていて、しかもこの時期6号の車内からは日本海に沈む夕日が望め、海と空の色が刻一刻と変化するトワイライトタイムも印象的。どの列車に乗るか非常に悩ましいのが「リゾートしらかみ」の唯一の難点である。
筆者:山﨑 友也