海で溺れたら「静かに浮いて助けを待つ」は危険です! 日本水難救済会が推奨する「イカ泳ぎ」で命を守ろう
2023年8月8日(火)18時9分 Jタウンネット
この夏、海や川に遊びに行く予定の人はきっと多いだろう。そんな皆さんにぜひ覚えておいてもらいたい「泳ぎ方」がある。
えっ、水辺で遊ぶだけで入るつもりはないって? それでも、覚えてほしい。予期せず水の中に落ちてしまう可能性だって、あるのだから。
2023年8月7日、沿岸海域で遭難した人や船の救助に駆けつける民間ボランティア救助員を支援する団体「日本水難救済会」はX(ツイッター)上にこんな動画を投稿した。
当会が推薦する「イカ泳ぎ」は、着衣(ポロシャツ、Gパン)でも、このとおり、体力を使わずに長い時間浮力を保つことができます!これからは、「イカ泳ぎ」で浮いて救助を待ちましょう。 pic.twitter.com/rcxklO1RHV
— 公益社団法人日本水難救済会【公式】 (@Qsuke_MRJ) August 7, 2023
海面に頭だけ出した着衣の男性が、水中で手足をウネウネと動かしている。手では大きく水をかき、足は平泳ぎの時のような動きだ。投稿に添えられている文章は、以下の通り。
当会が推薦する「イカ泳ぎ」は、着衣(ポロシャツ、Gパン)でも、このとおり、体力を使わずに長い時間浮力を保つことができます!これからは、「イカ泳ぎ」で浮いて救助を待ちましょう。
Jタウンネットの記者は8日、日本水難救済会にイカ泳ぎについて詳しく話を聞いた。
パニックになる前に呼吸を確保
取材に応じた同会の江口圭三常務理事によると「イカ泳ぎ」の正式名称は「エレメンタリーバックストローク」。
「動画にある通り、おなかを上に顔を水面から出して、手と足で水をあおりながら浮いたり進んだりする泳ぎです」

イカ泳ぎは誰でも自然に楽に泳げる上、手足の動きが少なく、体力消耗が少ない点がポイントだという。
「顔を水から出しているので、呼吸が楽で周囲の状況が良く観察できます。
顔に水がかからず、最小限の動きでできるので、服を着ていても楽に泳げます」
ところで、皆さんも「溺れた時はとにかく息を吸って水面から顔だけ出して、助けを待つように」と言われたことがあるかもしれない。波の無いプールではそれでも効果があるかもしれないが、海では危険だ。
今回、当会常務理事(元・海上保安大学校水泳教官)が波静か(波高5cm)な海で、「大の字背浮き」を試みましたが、わずかな波が顔を洗い、浮いていることができませんでした。やはり、この手法は海では危険です! pic.twitter.com/7y9xHvc20p
— 公益社団法人日本水難救済会【公式】 (@Qsuke_MRJ) August 7, 2023
常務理事が海で鼻や口が水上に出るように浮く「大の字背浮き」を試してみたところ、波が静かな時でも顔に水がかかってしまい、浮いていることが出来なかったというのだ。
その点、イカ泳ぎはどのような状況でも有効とのこと。
「例えば、川や海で流された時や水に落ちた時など危険に陥りそうな時、浮いて呼吸を確保し、周囲の状況を把握できるので、落ち着きを取り戻すのに有効です」
ただし、イカ泳ぎも万能ではない。いくら「体力を使わずに長い時間浮力を保つことができる」と言っても、人間の体力には限界がある。だから、海や川に行くときはライフジャケットを着用するなど、準備をしておくことが重要だ。
日本水難救済会は8日、「イカ泳ぎ」以外にも落水した時や流されてしまった時の対処法をまとめた「海の護身術(川でも使えます。)」を公式サイト(https://www.mrj.or.jp/)上で公開している。
海や川に遊びに行く時は、事前準備の一環としてよく目を通してほしい。もしもの時にあなたを助けてくれるだろう。