宇宙人は火星から飛来した昆虫!? 科学知識を総動員した「世界最高のUFO研究書」の衝撃的結論!

2023年8月22日(火)17時10分 tocana

——「超常現象」分野に深い造詣を持つオカルト研究家・羽仁礼が歴史的UFO事件を深堀り。アーノルド事件からCBA事件までを振り返る。


第1回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(1)
第2回:UFO史を紐解くー「ケネス・アーノルド事件」(2)
第3回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(1)
第4回:UFO史を紐解くーケネス・アーノルド事件以前の目撃例(2)
第5回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(1)
第6回:日本UFO研究事始めー「宇宙機」とその時代(2)
第7回:戦前に設計された円盤形航空機「ディスコプター」とは?
第8回:UFO=宇宙人の乗り物説は日本発祥だった!?
第9回:UFO研究の先駆者ドナルド・キーホー概説
第10回:1897年「オーロラ事件」は世界初のUFO墜落事件なのか?
第11回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(1)
第12回:謎に包まれた「アズテック事件」を解説(2)
第13回:昭和25年の「空とぶ円盤」事情
第14回:ナチスのUFO開発史ールーマニアの発明家アンリ・コアンダ(1)
第15回:ナチスのUFO開発史ーフリーメーソンの技術者ベッルッツォ(2)
第16回:ナチスのUFO開発史ー円盤型航空機「V-7」は完成していた!?(3)
第17回:ナチスのUFO開発史ー円盤型航空機と南米ネオナチ思想の中心人物(4)


 1950年(昭和25年)には、イギリスでも新しい動きが生じていた。


 この年の末、地球外起源説、つまりUFOは地球外生命体の乗り物だという考えに基づいた新刊がロンドンで発行されたのだ。本格的なUFO関連書籍としては、イギリスで最初のものであろう。


 この本は翌年、1951年(昭和26年)4月にアメリカでも出版されたが、その直前に日本でも翻訳が出ている。それが、ジェラルド・ハード(1889〜1971)の『地球は狙われている』である。


 日本語訳のあとがきによれば、本書はまずイギリスのタブロイド紙『デイリー・エクスプレス』の日曜版である『サンデー・エクスプレス』に12週にわたり連載されたものだという。


 著者のジェラルド・ハードは、本名をヘンリー・フィッツジェラルド・ハードという。イギリスのロンドンに生まれたが、1937年にはアメリカに移住しているから、この著書もアメリカで書かれたということになる。


 父も祖父もイギリス国教会の司祭であったため、ハードもケンブリッジ大学大学院で神学を学ぶが、科学への関心からキリスト教に疑問を持つようになり、進化生物学者ジュリアン・ソレル・ハクスリー(1887〜1975)やその弟で作家のオルダス・レナード・ハクスリー(1894〜1963)、SF作家のH・G・ウェルズ(1866〜1946)など科学的知見の深い人道主義的な知識人たちと幅広い交流を持ち、科学ジャーナリストとしても知られるようになった。1930年から1934年まではイギリス国営放送BBCで最初の科学コメンテーターとなったが、人間の進化の行く末に思いを巡らして研究し、世界平和運動や社会改革活動も行った。また、既存の宗教への反発から心霊現象にも関心を持っており、イギリス心霊研究協会(SPR)の理事も務めたことがある。


 1937年にアメリカに移住したのは、デューク大学歴史的文化人類学部長の職を提供されていたためだが、何回か講義を行った後この職務は非常に制限されていると判断して辞職し、オルダス・ハクスリーとともに世界平和に関する共同講演旅行を行うようになった。


 1939年からはインドのラーマクリシュナの教えにも傾倒し、その啓発にも努めた。


 そのハードが、自分の持てる科学知識を総動員してUFO問題に取り組んだのが『地球は狙われている』であるが、その主張は他の類書に例を見ないユニークなものだ。


 本書でハードは、UFO現象が認知された1947年のアーノルド事件からはじめて、同じ年に起こったユナイテッド航空事件、モーリー島事件、翌年のマンテル大尉事件、チャイルズ・ウィッテッド事件、ゴーマン中尉事件など、執筆の直前にあたる1950年7月までの数多くのUFO事件について考察を巡らす。


 その過程で彼は、UFOはしばしば、人間が搭乗していれば耐えられないほどの急旋回や急加速を行うが、昆虫のように小さくて外骨格に守られた生物なら対応可能であること、UFOには数百メートルに及ぶ大きなものから、数十センチの小さなものまであることを指摘して、UFOを操縦するのは昆虫だと結論する。


 さらにその昆虫型生物の生まれ故郷について考察し、太陽系の中で地球以外に生命が存在しうるのは火星だけであるとして、火星から来たハチのような生物がUFOを建造し、地球を訪れていると主張する。


 UFOに搭乗しているのが昆虫という考えは、奇しくも日本の小松崎茂が1948年に発表した、『地球SOS』にも通じるものがある。一方、『地球は狙われている』は、UFOに関する最初期の著作としてUFO研究史上に記録されてはいるが、現在ハードの説はほとんど忘れ去られており、本場アメリカでも話題に上ることはほとんどない。


 だが、1973年に研究団体「ユーホロジストクラブ」を設立し、現在も静岡県浜松市で活動中の日本のUFO研究家平野泰敏(1949〜)の意見は異なる。


 平野は小学校の頃、父の本棚にあった本書を読んで子供心にも大いに感激し、UFOに関心を持ったと述べている。ほぼリアルタイムでアーノルド事件について知った荒井欣一や高梨純一らを、日本の第一世代の研究家とするなら、戦後生まれの平野らは第二世代の研究家とも言えるが、その平野は、本書は世界最高のUFO研究書であり、現在もこの本を超えるものはないと高く評価している。


 なお『地球は狙われている』の邦訳は、当時発刊されていた月刊誌『ポピュラ・サイエンス』の臨時増刊として刊行されている。今でいえばムックのようなものであるが、それまで日本には、丸々一冊UFOを扱った出版物はなかった。そのため本書は、日本で最初のUFO書籍とみなされている。

tocana

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