スマートシティとプログラミング教育の関係とは?PTA会長のエンジニアパパが解説(6)

2018年9月11日(火)10時15分 リセマム

SMART GRID & SMART CITY

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PTA会長、エンジニアかつ父親の視点で「プログラミング教育」とは何かを紐解くシリーズ。6回目は「スマートシティ」や「人工知能」とは何かを解説。都市を支えるプログラミングについて知る。

ゲームや家電だけじゃない!「都市」を支えるプログラミングを知ろう

 本節では、もっと規模の大きい、都市を制御する(動かす)仕組みについて紹介します。「都市を制御する」と聞くと、とてつもなく大きな仕組みを思い浮かべてしまうかと思います。ですが、これらもプログラムで制御されています。このように大きな仕組みでも、たった3つの制御構造しか持たないプログラム(前節「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」(翔泳社)本書内)で制御することができるのは驚きですね。

都市を制御するスマートシティ

 皆さんは「スマートシティ」という言葉を聞いたことがありますか?スマートシティとは、ITを活用して、人々の生活を効率よく、便利にしていく都市のことです。そこでは、再生可能エネルギーを必要な場所に効率よく供給するための仕組み「スマートグリッド」を中核に、省エネルギー化による環境への配慮や、工場の自動化、医療での活用、交通システムの制御などを進めています。日本でも、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」などで推進されています。

 身近にある家電やコンピューターとは違い、スマートシティでは、手に取ることのできない大きなものや、広い範囲を制御する仕組みも自動化していきます。これらもプログラムによって制御されていて、根本的な考え方・仕組みは前節で解説したものと変わりません。

 では、実際にどういったものがスマートシティで制御されていて、どこにプログラムが活用されているかを紹介していきます。プログラムを学んでも、ゲームや家電にしか活かせないわけではなく、さまざまな分野で活用できます。プログラミングの持つ重要性と、将来性についてご理解いただければ幸いです。

SMART GRID & SMART CITY

環境に配慮した都市を作るスマートグリッド

 地球温暖化への対策として、CO2の排出量を抑える取り組みが世界各国で進められています。日本では、火力発電から原子力発電への移行を進めていたことを、皆さんもよくご存じであろうと思います。しかし、2011年3月11日の原発事故を発端に、原子力発電所の多くは運用を停止しています。このため、現在の日本ではおもに火力発電による電力生成に立ち戻っています。

 こういった問題の解決策として、「再生可能エネルギー」の見直しと「スマートグリッド」の推進があります。

 まず、「再生可能エネルギー」は、地球環境に配慮したクリーンエネルギーですから、地球温暖化問題への対策として注目されています。「再生可能エネルギー」とは、太陽光や風力といった自然界に常に存在するエネルギーのことです。「太陽電池」などがよく知られているでしょう。太陽光だけで電力を生成し、機械を動かすもので、電卓や腕時計などで多く利用されています。今では、家庭やオフィスのビルでも屋根や屋上に太陽光パネルを設置して、家庭・オフィス用の電力として利用する動きがあります。

 この「再生可能エネルギー」を主として、電力を生成する電力会社も出てきました。さらにこれは日本だけではなく、海外でも進められていて、ドイツでは2050年までに発電比率の80%を自然エネルギーに引き上げることを目標にしています(「平成28年度低炭素社会の実現に向けた中長期的再生可能エネルギー導入拡大方策検討調査委託業務報告書*注1)」内「参考資料1ドイツのエネルギー変革に関する動向調査*注2)」より)。
*注1)https://www.env.go.jp/earth/report/h29-03/index.html
*注2)https://www.env.go.jp/earth/report/h29-03/h28_ref01.pdf

 これを受けて、消費者も、再生可能エネルギーを生成する会社からのエネルギー供給を期待する動きがあります。今までの大手電力会社ではなく、新たな小売電力事業者が生成した電力を、必要な家庭に適切に供給する仕組みが必要になってきました。「各家庭で必要な電力を新しい電力会社から正しく供給」し、「料金を正しく回収」する新たな仕組みが求められます。これらを実現するのが「スマートグリッド」です。

 スマートグリッドは、必要な場所に必要な量を送電する仕組みで、通信機能つきの電力量を計測する機械である「スマートメーター」との組合せで実現されます。スマートメーターは、消費者側の電力の使用量をリアルタイムで計測します。電力を送り届ける側は、スマートメーターの結果をもとに必要な場所に必要な分だけの電気を供給します。

 供給側は、スマートメーターで計測された情報に基づいて、すぐプログラムによって計算します。たとえば、Aさんの家での使用量が1000Wで、Bさんの家では500Wだったとします。このとき、Aさんの家へ1000W以上、Bさんの家へは500W以上の電力が確実に供給されなければ、各家庭の電気は止まってしまいます。このための計算を瞬時に行い、送電を制御しているのが、プログラムです。

 また、各家庭の使用量がリアルタイムにわかるとすれば、電力会社の検針員が各家庭を回らずとも、電気料金を計算することができます。電気料金の計算も、プログラムによって実現できます。

 家庭の数だけ電気料金を計算することは、とても膨大な数量になって大変だと思われるかもしれません。ですが、プログラムは同じ処理を何度も、正確に実行することが得意です。扱う規模が大きくなったとしても、正しく計算するためのプログラムを1つ記述することさえできれば、後は同じものを使って、必要な家庭の数だけ繰り返し計算させれば十分なのです。

工場から人がいなくなる?

 ほかにも、スマートシティではコンピューターの活躍によって効率化されるものがあります。工場での作業もその1つです。

 工場には、ロボットやベルトコンベアのような機械が多く設置され、多くの仕分けや加工などの作業を自動で行っています。これまでは、ロボットを使って自動的に行う工程の中にも、人手が必要なことが多くありました。たとえば、ロボットで自動的に製品を加工する場合、部品や加工品を正しい位置に並べる必要があります。また、正しく加工されているかどうかも、人が目視で確認を行う必要があります。完全な検品を行うには複数人でのダブルチェックなどが必要で、自動化とは裏腹に人手を多く介さなければならない事情もしばしばありました。

 時代は変わって、ITを活用したプログラミングの時代が到来しました。今では人工知能や画像認識といった技術を活用して、どうしても人手を割かなければならなかった検品作業なども自動化できるようになりました。人工知能とは、大量の情報を学習して推論を行い、人の思考・判断を支援する仕組みのことです。ロボットだけでは自動化できなかった部分も、こういった人工知能やセンサーとプログラムの技術を融合することによって、さらに自動化できるようになったのです。その結果、人間によるオペレーションミスが削減され、品質も生産性も向上しました。

 こういった先端的な自動化の仕組みを採用している工場では、センサーから入力された情報をもとに、画像を解析するプログラムも活用されています。画像上から対象となる加工品を検出して、その形・色・大きさなどを計測するプログラムです。たとえば、指定されている形とは異なる場合や、色が違う場合、サイズが大きすぎたり小さすぎたりする場合は、その加工品を出荷しない、といった判断を瞬時に行うプログラムを記述することで、工場の自動化を実現しているわけですね。

リセマム

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