「がん宣告」後すぐに<身辺整理>を始めた森永卓郎「整理業者は費用も質もピンキリ。売れるものもあると思ったが現実は…」

2024年10月28日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

経済アナリストとして、テレビ・ラジオなど多くのメディアで活躍する森永卓郎さん。2023年末にがんであることを公表してからも、病気と闘いながら活動を続けています。森永さんは、がん宣告をきっかけに「自分の後始末は自分で」と、身の回りのモノの整理を始めたそう。今回は、森永さんの新著『身辺整理 ─ 死ぬまでにやること』から一部引用、再編集してお届けします。

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お金をかけずにモノを捨てる方法


もちろん業者に依頼すれば経費がかかる。

ネットには、遺品整理や生前整理の広告が溢れているが、実はそこに登場する業者は、費用も、質もピンキリだ。

悪質な業者だと、依頼主に確認せずに大切なものを処分してしまったり、作業中に次々に追加費用を請求して、当初の見積もりの数倍から、下手をするとけた違いの料金を請求してくる。

私もネットでみつけた業者を徹底的にリサーチして、家の近所に拠点を持つ「エコトミー」という新進の「片付けサポーター」に依頼した。

依頼の電話への反応が迅速で、話をすると誠実に仕事に取り組む姿勢が伝わってきたからだ。

実際、作業を担ったスタッフは、とても丁寧に、一生懸命作業をしてくれた。

私の研究室の場合、料金は10万円を下回った。おそらく相場よりもずっと安いと思う。

ただ、実は研究室の整理は、ある意味で、「筋のいい」案件だ。

余計な生活用品はほとんど存在せず、また引き取った本も、その多くが古書店で引き取ってもらえるからだ。ただ、実際に生活していた家財道具を処分するときには、そうは行かない。

生活の基盤となっていた住居の生前整理や遺品整理には、想像を絶するコストがかかってくる。

義母の片付け


以前、ある大物俳優が、生前整理をしようと決意した。

長年、芸能界のトップを走り続けてきた人の自宅だから、例えば500万円もかけて購入した骨董家具もあったという。

それらの貴重品も含めて、業者にまとめて処分を依頼したそうなのだが、結局、儲かるどころか、最終的に80万円の費用を徴収されたそうだ。

私は、芸能人だから足元をみられたのではないかと疑っていたのだが、そうではないことが分かった。

それは、たまたま研究室の片付けと同時期に発生した義母の片付けをみたからだ。

義母が住んでいたのは2DKだったが、モノを捨てられない性格なので、家中に使わない生活用品がぎっしり積みあがっていた。

整理業者のスタッフ4人がまず取り掛かったのは、モノの分別だった。

いまは環境規制が厳しいので、ゴミ出しと同様、きちんと分別をしなければならない。

この作業が想像を絶する大変さで、結局、朝から夜まで連続で作業して、丸二日の時間を要した。人件費だけで大変なコストだ。

買取査定の現実


義母の荷物は最終的に、2トン車5台分にも及んだ。そして整理業者は、それを産業廃棄物処理業者に持ち込む。

そこでも処分費用を請求される。結局、義母の場合は、総額数十万円のコストがかかった。


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

「こんなに荷物の多い人はいませんよね」という私の問いかけに、整理業者は「いや結構たくさんいらっしゃいますよ」と答えた。

「売れるものもあるだろう」と思われるかもしれない。

しかし、売れるものなど、ほとんどないのが現実だ。

例えば、義母はたくさんの着物を所有していたが、買い取り業者に持ち込んだところ、査定額がつかなかった。

値段がつくのは、大島紬の名品といった貴重品だけだ。普通の家にそんなものはない。

義母の持ち物で、唯一買い取ってもらえたのは、金のアクセサリーだけで、それも純金ではなかったので、何千円かの価値しかなかった。

経費を節約するためには


ただモノを処分するためにかかる経費を節約する方法はある。

最初からモノを持たないことだ。

新卒で入社した専売公社に勤めていた頃、先輩が転勤になり、引っ越しの手伝いで社宅を訪ねたときのことだ。

家族持ちだというのにビックリするほどモノがなかった。

当初はどうしてこんなにモノが少ないのだろうと不思議に思っていたのだが、当時の専売公社では、頻繁に転勤があるため、防御策としてモノを持たないのだと気づいた。

突然転勤を命じられ、2週間後には新任地で仕事を始めないといけない。しかも多い人は、毎年のように転勤を命じられる。そうなったら引っ越しに時間をかけてはいられない。

モノがなければないほど楽なのだ。

逆にいえば、モノはなくても暮らせるということだ。

日頃から最低限のモノで暮らしていれば、一気に断捨離をする必要もないし、モノを捨てるための経費もかからないのだ。

※本稿は、『身辺整理 ─ 死ぬまでにやること』(興陽館)の一部を再編集したものです。

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