出雲11位、全日本13位…東洋大は箱根駅伝で“V字回復”できるのか?酒井監督、梅崎、石田が考える「攻めの調整」

2024年11月30日(土)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


出雲11位、全日本13位の舞台裏

「NIKE RUNNING MEDIA CAMP 2024」のスペシャルゲストとして登場した東洋大。今年正月の箱根駅伝は4位に入ったが、今季の学生駅伝は苦戦している。出雲は3年生以下のオーダーで臨み、関東勢最下位の11位。全日本は4年生が復帰するも、13位に終わった。チームはどうなっているのだろうか。まずは酒井俊幸監督が両駅伝の状況を説明した。

「すべての大会でピーキングを持ってくのは厳しいので、出雲は4年生を起用しませんでした。戦略的な部分と、想定以上に故障期間が長くなってしまったのが理由です。全日本は完全な状態ではないですけど4年生を4人起用しました。区間配置も前年と変えたなかで、7区の緒方澪那斗が区間6位、8区の岸本遼太郎が区間7位と悪い流れでもしっかりと走りました。3年生の成長は収穫かなと思います」

 では全日本に出場した梅崎蓮と石田洸介(ともに4年)はどのような状態だったのか。前回アンカーを務めた梅崎は3区で区間7位。1年時に4区で区間賞を獲得している石田は6区で区間21位に沈んだ。

「大きな故障はなかったんですけど、北海道マラソンの前ぐらいから調子が低下していた状態だったんです。ポイント練習で離れてしまうことも多かったんですけど、1週間前くらいから上がってきた感じでした。自分がしっかりとチームの流れを作る走りができれば、後ろの区間の選手の走りも変わったと思うので、自分の力のなさを感じています」(梅崎)

「夏合宿中に故障してしまって、全日本に向けては2週間前に練習復帰した感じだったんです。それでも2年生からタスキをもらって3年生に渡したので、4年生として精神的支柱にならないといけませんでした。良い流れを作る役割もあったので、それを果たせなかったのは悔しいです」(石田)

 出雲と全日本は順位だけみると“惨敗”といえるだろう。しかし、新戦力に経験を積ませることができて、主力選手たちのハートに火がついた。正月決戦に向けて、梅崎と石田は静かに燃えている。


4年生の覚悟

 昨季は全日本で過去ワーストの14位に沈みながら、箱根は4位に急上昇。見事な“ごぼう抜き”を見せたが、今回は前回の経験を生かすことができるのか。酒井監督はこう考えている。

「昨年は全日本に出場しなかった選手は、その期間で箱根に向けた合宿を行い、箱根で活躍してくれました。ただ昨年できたから、今回も4位になれるという甘いものではありません。昨年以上の覚悟を持ってやらないと厳しいと思っています。攻めの調整ではないですけど、練習も思い切ってやっていきたいです」

 そして梅崎は主将として、強い気持ちでチームを引っ張っていく覚悟を持っている。

「昨季は全日本の悔しさがあったので、しっかり走り込んで、もう一度作り直すことができました。そのおかげで箱根は4位になれたと思うので、前回以上の結果を残すには、それ以上やらないといけないと思っています。昨季の経験をしているので、それをチームに伝えていきたい」

 石田は昨季、チームを離れていた時期があるほどメンタル的に苦しみ、学生駅伝も出場できなかった。

「2年時の箱根駅伝で悔しい思いをしたんですけど、そこからなかなか立ち直ることができませんでした。チームから離れた期間に、自分がなぜ陸上をやっているのか? 陸上で何を目指しているのか? 自分軸を見直すきっかけになったと思います」

 石田は3000mの中学記録、5000mの高校記録を塗り替えてきた超エリートだが、挫折を経験したことで、精神的に大きく成長した。そして今季は5月の関東インカレ1部10000mで28分08秒29の自己ベストで6位に食い込み、完全復活を印象づけた。


花の2区はどっちが走る!?

 最後の箱根駅伝を迎えることになる梅崎と石田。ともに花の2区を経験しているが、ふたりは何区を走りたいのか。

「山は苦手なので、それ以外だったら、どこでも走れるかなと思っています。任された区間をしっかり走りたい」と梅崎が言えば、石田も「5区と6区以外なら(笑)。2区に対して複雑な思いはあるんですけど、理想は往路を走りたいなと思います」と話した。

 面白いことに、ふたりとも「2区をやりたい!」という言葉は出なかった。そこでもう少し突っ込んでみると、「できれば梅崎に任せたいですね(笑)」という石田の声を聞いた梅崎は、「区間にこだわりはないので、任されたらしっかり走りたい」と頼もしかった。

「2区はプレッシャーがかかるんですけど、梅崎はいい意味であまり感じない。表に出さないタイプ」と酒井監督は梅崎に絶大な信頼を寄せている。3区は2年連続で好走している小林亮太(4年)が希望していることを考えると、石田は1区もしくは4区の起用になるのだろうか。区間配置について、酒井監督はこう話していた。

「コースの特性と本人の状態。それに他選手の組み合わせ。あとは他大学の動きも考えないといけません。往路は速い展開になりますが、復路での巻き返しはなかなか難しいので、調子の良い選手を往路に使っていこうかなと考えています。1年生は故障もあったんですけど、無理に全日本に起用してしまうと箱根の練習や選考に影響します。山区間の候補もいますし、箱根に向けた練習で見極めたいなと思っています」

 出雲と全日本では合計13人の選手が出走。その後の上尾シティハーフマラソンや小江戸川越ハーフマラソンで結果を残した選手もいる。正月決戦に向けて、本格的な練習に入っていくなかで、最上級生たちは熱い思いを抱いている。

「状態を考えると総合優勝を目指すのは厳しいですけど、最後まであきらめなければ何が起こるかわかりません。自分は前回よりも良い走りが求められると思うので、しっかりと自分の走りをしてチームに勢いをつけて、後悔のないように終わりたい。上位進出を目指して、頑張っていきたいです」(梅崎)

「箱根駅伝は小さい頃からの憧れの大会ですし、出雲と全日本が惨敗に終わってしまった分、箱根だけは譲れないという執着心を持っています。同時に、歴代の先輩方がつないでくださった東洋の伝統を自分たちが引き継ぎ、後輩に託すという意味でも最後は4年生としての使命を全うしたい。悔いのない走りができれば、大学4年間の競技人生はすごく意味のあるものになると思うので、とにかくやり切って、箱根に向かいたいです」(石田)

 箱根駅伝の“主役”を目指す東洋大にとって“試練の1カ月”が始まった。

筆者:酒井 政人

JBpress

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