障害持つ妹の世話で部活を休みがちに、陰口はエスカレートしていき…教育系ユーチューバー・葉一の過去
2024年12月20日(金)10時0分 読売新聞
教育系YouTuberの葉一さん
小学生から高校生向けの授業動画を配信し、「教育系ユーチューバー」の先駆け的存在として知られる葉一さん(39)。幼い頃から勉強が得意だったのかと思いきや、むしろ体を動かすことの方が好きなスポーツ少年だったという。(読売中高生新聞編集室 塩島祐子)
宿題は面倒だった
「生まれは福岡県なのですが、父親の転勤で引っ越しを繰り返し、小学校に入る少し前から群馬県で暮らしていました。住んでいた地域はドッジボールがさかんで、小学校では休み時間になると男女みんなでドッジボールに明け暮れていましたね。
もう一つ、私が熱中していたのがバスケットボールです。当時はバスケ部の高校生たちを描いた『スラムダンク』のアニメが放送されていて、大人気でした。私も大好きで見ていたし、友だちから漫画も借りて読みました。心に響く言葉もたくさん出てきて、いまでも『人生のバイブル』だと思っているほど影響を受けましたね。スラムダンクがきっかけでバスケ自体にも興味を持ち、友だちと一緒に夢中でやっていました。
一方で、勉強は特別好きではなく、宿題も『面倒くさい…』と思っていたくらい。体を動かすことの方が楽しい時期でした」
中学では体操部に入るが、家庭の事情で練習を休まざるを得ないことが多かった。そして、それをきっかけに、つらい日々が始まる。
「最初はバスケ部に入ろうと思っていたのですが、顧問の先生と考え方が合わないと感じていました。友だちの誘いもあって、体操部に入ることにしました。
でも、特に土日は練習に出られないことが多く、他の部員から『サボっている』と陰口を言われるようになります。というのも、私には障害を持つ妹がいて、共働きの両親が忙しいときは、代わりに面倒を見ていたんです。顧問の先生には説明していたものの、部員たちは事情を知らなかったんですね。だから、陰口はどんどんエスカレートして、私は部活に行きづらくなってしまいます。結局、1年ともたないで退部してしまいました」
学校「絶対に行かきゃいけない場所じゃない」
陰口などのいじめは、部活内にとどまらなかった。
「当時は体形がぽっちゃりしていたので、クラスの女子たちが『きもい』『あいつ太ってるよね』と私の悪口を言っていて、それが学年全体へと広がっていきました。やんちゃな男子たちに目をつけられて、階段から蹴落とされたこともあります。中2〜中3はそんな状況で、とにかく毎日しんどかった。電車の線路脇に立って『飛び込んだら楽になれるかな』と思ったことすらありました。
不登校にならなかったのは、私が負けず嫌いだったからだと思います。『休んだら、いじめているやつらの思うつぼだ』と思って通い続けていました。親に心配をかけたくなかったというのもあります。特に女子からの陰口が苦痛だったので、高校は男子校に行こうと決めました。必死に勉強して、合格をつかみました」
いじめを受けた経験があるからこそ、いま、つらい思いをしている中高生に伝えたいことがあるという。
「私は登校することを選んだけれど、学校が苦痛なら、絶対に行かなきゃいけない場所ではないと伝えたいです。不登校は『不』という字がつくから、否定的なイメージがあるかもしれないけれど、『学校に行かない』という道を選んだだけです。どんなことがあっても人を傷つけていい理由にはならない。いじめは『する側』に問題があって、『される側』が自分を責める必要はないんです。
『学校に行かない』道を選んだ人には、浮いた時間とエネルギーを何かに注ぐことをおすすめしたいです。勉強でもゲームでも、何でもいいから全力でやってみる。そこからちょっとでも自信につながるものが見つかれば、前を向く力になっていくと思います」
プロフィル
はいち 1985年生まれ。2012年からYouTubeで授業動画の配信をスタート。YouTubeチャンネル(「とある男が授業をしてみた」)の登録者数は200万人超。