地球の北磁極がシベリア方面へと移動、未来のコンパスは「真北からずれる」可能性

2024年12月24日(火)20時0分 カラパイア


Photo by:iStock humonia[https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/humonia?mediatype=photography]


 世界のナビゲーションを支える地磁気空間モデル「World Magnetic Model 2025(世界磁気モデル2025)[https://www.bgs.ac.uk/news/airlines-shipping-companies-and-sleigh-drivers-rush-to-update-crucial-navigation-systems-ahead-of-christmas-rush/]」の最新版が公開された。


 世界磁気モデルは、地球の地磁気(地球がもつ固有の磁場)の状態を表したもので、航空・航海・GPS・地図作成など、現代社会のさまざまな技術を支える基礎となっている。


 5年ぶりの更新となるその最新バージョンでは、コンパスが示す北、すなわち「北磁極」がさらにカナダ方面からシベリア方面へと移動していることが判明した。2040年までには、コンパスが真北を指さなくなる可能性もあるという。


カナダからシベリアへ移動する北極軸の不安定な動き


 地理的な北極と、コンパスが指す北はぴたりとは一致しない。なぜならコンパスの北、すなわち「北磁極」は固定されておらず、地球内部で絶えず動く溶融金属の流れにより、その位置が変化する。


 1831年、イギリスの探検家ジェイムズ・クラーク・ロス卿によって初めて「北磁極」の位置が特定されて以来、それは、カナダからシベリアへ向かうように2,200km以上移動している。


 これについて専門家が注目していたのは、その移動スピードだ。


 英国地質調査所のウィリアム・ブラウン博士は、同調査所のニュースリリース[https://www.bgs.ac.uk/news/airlines-shipping-companies-and-sleigh-drivers-rush-to-update-crucial-navigation-systems-ahead-of-christmas-rush/]でこう説明する。


北磁極の現在の挙動は、これまでに観測されたことのないものだ。過去500年間、カナダ周辺をゆっくりと移動していたが、ここ20年間でシベリア方向に加速した(ブラウン博士)


 2000年代初頭、この加速によって北磁極の移動スピードは年間50〜60kmに達していたのだ[https://karapaia.com/archives/52270845.html]。最近では年35kmにまで減速したものの、さらにこの移動は続くとみられている。



1590年から2030年(予測)にかけて北磁極の位置を示したもの image credit:: BGS / UKRI / Wessel


 現代社会には不可欠な地磁気モデル


 英国地質調査所や米国地球物理学データセンターなどが作成する世界地磁気モデルは、私たちが知らず知らずのうちにお世話になっている大切なものだ。


 航空・航海・GPS・地図作成など、現代社会のさまざまな技術を支える基礎となっており、船や飛行機、さらにはスマホのコンパスも正確な道案内をするためにこのモデルを利用している。


 その重要さゆえに、アップデートが数年遅れるだけで重大事故の原因になりかねない。英国地質調査所によれば、南アフリカから英国まで8,500km区間を移動する際、古いモデルを使用すると150kmもコースがズレる恐れがあるという。


 正確さを保つために世界地磁気モデルは5年ごとに更新されているのだが、その最新バージョン「WMM High Resolution(WMMHR2025)[https://www.bgs.ac.uk/news/airlines-shipping-companies-and-sleigh-drivers-rush-to-update-crucial-navigation-systems-ahead-of-christmas-rush/]」では、これまでの10倍以上の精密さが実現されている。


 赤道付近で300kmの空間分解能を誇り、これまで信頼性が低かった極付近のブラックアウトゾーンの情報も調整されているという。



北極の地磁気を示した画像、北磁極の伏角になった北磁極とブラックアウトゾーンが示されている/Source: NOAA NCEI


北磁極はなぜふらふらと動くのか?


 ちなみに北磁極がふらふらと落ち着かないのは、カナダとシベリアの地下に存在する巨大な磁気領域が関係している。


 これらの間で北磁極の綱引きが行われており、最近ではシベリア側が優勢だった。


 だが地球の地磁気自体は、外核にある液体の鉄とニッケルが、対流と地球の自転によってぐるぐると動かされることが原因だ。


 これが巨大な発電機(ダイナモ)のように作用して電気が流れ、その結果として宇宙にまで広がる地磁気が発生するのだ。


 私たちが普段それを意識することはないが、太陽風や宇宙線を防ぐバリアであるため、地上の生命にとっては欠かせないものだ。


References: The Magnetic North Pole Has Shifted Again. Here’s Why It Matters[https://www.zmescience.com/science/news-science/the-magnetic-north-pole-has-shifted-again-heres-why-it-matters/] / Airlines, shipping companies and sleigh drivers rush to update crucial navigation systems ahead of Christmas rush - British Geological Survey[https://www.bgs.ac.uk/news/airlines-shipping-companies-and-sleigh-drivers-rush-to-update-crucial-navigation-systems-ahead-of-christmas-rush/]

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