だから「愛子天皇」しかない…専門家が「間違いなく待望論が盛り上がる」と予想する愛子さまの"公式訪問先"
2025年5月31日(土)9時15分 プレジデント社
■「愛子天皇」を後押しするメディアの動き
愛子内親王の初の外国訪問が決まった。11月にラオスを訪問することとなったのである。
戦後、日本とラオスが外交関係を結んだのは1955年のことで、今年は70周年にあたる。愛子内親王はラオス政府の招待を受け、訪問した際には、トンルン国家主席を表敬訪問するほか、外交関係樹立70周年の記念式典などに臨むことが予定されている。
愛子内親王は大学卒業後、さまざまな公務をこなし、5月には、能登半島地震の被災地、石川県も訪れている。被災地の訪問は、今や皇族の重要な役割になっているが、ラオスを訪問することで、愛子内親王について海外からの報道も増加することが予想される。
その愛子内親王が天皇に即位することを後押しするような動きも出てきた。それが、読売新聞が5月15日に行った提言である。国会で安定的な皇位継承と皇族数の確保についての議論が進むなかでの提言であり、新聞の紙面では第1面ほか全部で4面が費やされていた。読売新聞はどちらかと言えば政権よりの報道を行い、保守的と思われてきただけに、それは驚きをもって迎えられた。
写真=共同通信社
ウィーン少年合唱団の公演会場に到着し、着席される天皇陛下と長女愛子さま=2025年5月29日午後、東京都新宿区(代表撮影) - 写真=共同通信社
■読売新聞のもっともな危機意識
読売新聞の第1面に載った提言は4項目にわたっている。①皇統の存続を最優先に、②象徴天皇制維持すべき、③女性宮家の創設を、④その夫や子も皇族に、ということである。
ただ、より重要なのは、同日に社説で「男系男子にこだわり続ければ、象徴天皇制の存続は危うくなる。女性天皇や、女系天皇の可能性を排除すべきではないだろう」と指摘していることである。
愛子内親王が誕生し、悠仁親王が生まれるまでの間の時期には、自民党の政治家でさえ、女性天皇を認める見解を発表していた。そうした動きは、悠仁親王の誕生で一気にしぼんでいったが、皇位の安定的な継承について根本的な解決策があるというわけではない。
果たして悠仁親王は結婚できるのか。結婚したとしても、その家に男の子が生まれるのか。即位する時代になれば、皇族数は今よりはるかに減少し、天皇とその家族しかいない事態も考えられる。将来を考えれば、不安は大きい。読売新聞が、そうした提言を行ったのも、そこに強い危機意識を持っているからにほかならない。
■不自然な国会論議の女性宮家創設案
さらにその後、朝日新聞も5月28日の社説で、「将来の女性・女系天皇をことさらに排除しない方向で議論をまとめるのが望ましい」と、国会での議論の方向性に対して異議を申し立てている。
国会では、女性天皇や女系天皇についてはまったく議論されていない。議論されているのは、女性宮家の創設と、皇室が旧宮家に属する男系男子を養子に迎えることの2点である。
女性宮家の創設については各党が合意しているものの、その夫や子の身分については、皇族とするかどうかで議論がある。一方で、養子案については、賛成論とともに反対論も強い。今の国会でまとまるとすれば、女性宮家の創設のほうだろう。
ただ、その際に、夫や子が皇族にならないのであれば、一つの家の中に皇族と一般国民とが同居することになる。それはとても自然なこととは言えない。そもそも、それでは、「宮家」と言えるのかどうかが疑問になってくる。
■「女性・女系天皇」を容認しなければ変わらない
何より、女性宮家が創設されることが想定された場合、女性皇族の結婚のハードルは、今以上に高くなる。むしろそれは結婚を妨げることになるのではないか。実際、最近では、30歳を超えても独身という女性皇族が増えている。
旧宮家の男性を養子に迎えることについても、果たしてそれに応じる人物は現れるのだろうか。宮内庁は、それが法的に決定されなければ、調査もできないとしている。皇族になれば、民間にいたときとは異なり、相当に窮屈(きゅうくつ)な生活を強いられる。それまでのキャリアを捨てなければならないだろうし、一般国民が、そうした人物をどう評価するかの問題にも直面しなければならない。
国会で議論されていることが仮に決まったとしても、実際には何も変わらないのではないか。現状からすれば、「女性天皇や女系天皇を容認する」といった相当に大胆な方策を講じなければ、国民も皇位の安定的継承と皇族の数の確保について、真剣な議論をしないのではないだろうか。
事態が変わらないなかで、愛子内親王は、ラオスだけではなく、他の国々も次々と訪問するようになるであろう。
ラオスの国のシンボルである仏塔「タート・ルアン」(中央)(写真=Benh LIEU SONG/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons)
■海外公式訪問を精力的にこなした清子内親王
天皇の娘としての内親王の海外公式訪問としては、清子内親王の場合がその先例になる。清子内親王は、結婚して、皇族を離れるまでの間に6回海外公式訪問を行っている。
最初は1995年のブラジル訪問で、日本ブラジル修好100周年記念式典に臨席するためだった。その際にはボリビアとアメリカ合衆国にも立ち寄っている。
翌1996年にはブルガリアとチェコを訪問し、ドイツとイギリスにも立ち寄っている。97年には「フランスにおける日本年」ということで、パリ日本文化会館開館式に臨席し、オランダにも立ち寄っている。3年続けて海外を訪問したことになる。
1999年にはペルーとボリビアを訪問しているが、どちらも日本人の両国への移住100周年の記念式典に招待されたからだった。2000年にも招待を受けてスロバキア、スロベニア、アイルランドの3カ国を訪れている。2002年には日本とルーマニアの交流100周年を記念して招待され、クロアチアからも招待を受けて訪問している。2003年には、ウルグアイとホンジュラスから招待を受けて訪問し、フランス、アルゼンチン、アメリカ合衆国にも立ち寄っている。
このように、2005年に結婚するまで、清子内親王は精力的に海外訪問をこなしていた。
■外交官の血を受け継ぐ愛子内親王
こうした先例からすれば、愛子内親王は、来年以降、友好親善のために、さまざまな国を公式訪問することになるであろう。内親王は、他に秋篠宮家の佳子内親王しかいない。愛子内親王に対して、各国から招待が殺到する事態も考えられる。
母親の雅子皇后は、結婚するまで外務省の職員であった。皇太子として結婚する決断をする上で、皇室外交の担い手になることが、重要な要素になっていたものと推測される。
しかも、雅子皇后の父親は、国連大使・外務事務次官などを歴任した小和田恆(ひさし)氏である。愛子内親王には外交官の血が流れている。海外訪問も、ごく自然にこなせるのではないだろうか。
ラオス訪問以降、どういった国々を訪れることになるかは、今の時点では見通せないが、いつかは必ずヨーロッパを訪問することになるであろう。ヨーロッパには、王室の存在する国も少なくない。そうした国々から招待を受ける可能性は大きいのである。
2019年11月10日、天皇陛下の即位パレード「祝賀御列の儀」の天皇皇后両陛下(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)
■王女が次期女王となるオランダ王室
とくにオランダはその可能性が高い。というのも2006年に、愛子内親王は、両親とともにオランダを私的に訪問しているからである。愛子内親王は、幼い頃からオランダ王室と親交を結んでいる。
しかも、オランダ王室には、3人の王女がいて、今の時点で23歳の愛子内親王と年齢も近い。カタリナ=アマリア王女が21歳、アレクシア王女が19歳、アリアーネ王女が18歳である。
他にもイギリス、スペイン、スウェーデン、ベルギーに王室があるが、もっとも注目されるとしたらやはりオランダを訪問したときだろう。
というのも、カタリナ=アマリア王女は次期女王と定められているからである。現在のオランダ王はウィレム=アレクサンダーだが、1890年にウィレム3世が亡くなった後、オランダでは、3代にわたって女王が続いた。ウィレム=アレクサンダーは、123年ぶりに男性の国王だった。
ただ、国王には3人の娘しかいない。国王には、事故で亡くなったヨハン・フリーゾ王子とともに、コンスタンティン王子がいる。コンスタンティン王子には、3人の子どもがいるのだが、夫婦の取り決めで王子や王女の称号を持たないようになっている。そのため、カタリナ=アマリア王女が次の女王になることが決まっているわけである。コンスタンティン王子を秋篠宮、その男性の子を悠仁親王と置き換えてみると、その意味も明らかになってくるであろう。
■伝統は社会に認められてこそのもの
愛子内親王がオランダを訪問すれば、カタリナ=アマリア王女との立場の違いについても報道されることになるはずだ。現在のヨーロッパの王室では、ほとんどが長子が王位を継承する伝統が確立されている。なぜ日本では違うのか。3代も女王が続いたオランダの人々からすれば、その点は理解されないかもしれない。
島田裕巳『日本人にとって皇室とは何か』(プレジデント社)
そうした海外での報道が、さらに女性天皇、女系天皇を容認すべきだという声を強めていく方向に作用するはずだ。
保守派は、徹底して男系男子の皇位継承にこだわるが、日本にはそんな「家」は天皇家以外に存在しない。女性天皇と女系天皇の違いについて一般国民は認識していないと保守派は言うが、それも当たり前のことで、国民が暮らしの中でそれを意識する機会などまったくないのである。
拙著『日本人にとって皇室とは何か』で詳述したように、伝統は社会に認められてこそのものである。保守派の議論は、世論とは益々かけ離れたものになっていくであろう。読売新聞の提言に納得できない国民は、今やごく少数になっているのである。
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島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。
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(宗教学者、作家 島田 裕巳)
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