ニコタマの隣「二子新地」駅には何がある? ローカル商店街と多摩川河川敷でスローライフを過ごせる街

2025年4月4日(金)21時25分 All About

東急田園都市線の“フタコ”といえば、誰もがまず思い浮かべるのは東京都サイドの「二子玉川(別称・ニコタマ)」。対して多摩川を挟んだ神奈川県の「二子新地」はいささか地味な印象ですが、降りると何があるのでしょうか。

東急田園都市線&大井町線で多摩川に面した駅は、東京都側の「二子玉川」と神奈川県側の「二子新地」の2つ。前者の二子玉川は有名施設「二子玉川ライズ」「玉川高島屋」などがある超人気タウンですが、それに対して二子新地はどうしてもマイナー感が否めません。
実際に二子新地駅周辺を散策すると、駅前や商店街はかなりコンパクトで、のんびりした雰囲気。その中にも普段使いしたくなる個人商店などが点在しており、多摩川河川敷の開放的な風景が美しく、ゆったりした魅力にあふれた街です。

二子新地駅の基本情報:家賃相場はいくら?

二子新地駅周辺の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約8.1万円、1LDKで約12.6万円、2LDKは約14.7万円。(SUUMO、2025年3月24日確認)。田園都市線中での家賃相場はほぼ中間で、二子玉川駅と比べると数千円ほど安め。川を1つ隔てただけで結構お得になりますね。
二子新地駅は1927年に玉川電気鉄道溝ノ口線(現在の田園都市線)に停留所として誕生し、1943年に鉄道駅へ昇格。江戸時代の頃は静かな田園地帯であり、そこに新しい歓楽街(関西圏の呼び方で「新地」)が開かれたことが駅名の由来になったそうです。

こじんまりとした駅前にも江戸時代からの歴史が

二子新地駅の改札周りは、東急線のガード下に設けられたシンプルな構造。多摩川を挟んで反対側の二子玉川駅とは正反対の、のんびりとした空気が駅前にも流れています。
改札の向かいには「富士ガーデン二子新地駅前店」があります。
また、駅と隣接する形でドラッグストア「ココカラファイン」も発見。ほかには駅の東西に1軒ずつある「まいばすけっと」や、駅東側の「ウェルシア」などを除けば、駅周辺に中規模の量販店は少なめの印象です。
駅の柱陰には「川崎歴史ガイド」として旧大山街道の案内看板がひっそりと立っています。二子新地駅から田園都市線に沿って続く道は、江戸時代には多摩丘陵(きゅうりょう)を登って丹沢(たんざわ)山地の大山まで続く道として利用され、多くの江戸庶民がここから大山へと参詣(さんけい)の旅に出たそうです。

駅の東西にコンパクトな商店街

二子新地で暮らすうえでは、駅の東西にある商店街を利用する機会が多くなるはず。旧大山街道にある西側商店街は、一軒家や低層の雑居ビルが並ぶなか、昔ながらの商店も点在していてのんびりした雰囲気です。
また、反対側の駅東側にある商店街は、狭く湾曲した道の両側に飲食店や食料品店が並び、西側よりも活気ある印象でした。
駅周辺にはいくつか気になるお店も発見できました。例えばピッツェリア「Quale(クアーレ)」は窯焼きのローマピッツァや、お店オリジナルのクリームフォンデュが人気とのこと。南欧風の鮮やかな外観もすてきですね。
駅東側にあるベーカリー「Len(レン) -Local Speciality Factory-」があるのは雑居ビルの3階ですが、軽やかで食欲をくすぐるパンの香りがほのかに地上まで降りてきています。こちらのシェフは都内の有名ホテルやフレンチレストランで経歴を積んだ超実力派で受賞歴もあり、雑誌などのメディアで取り上げられることもあるのだとか。
匂いにつられて入店し、クリームパンなどと迷いつつ、今回はキコリの竹炭ショコラ(税込345円)を購入しました。見た目が真っ黒でインパクトがありますが、味は正統派チョコパンといったところで、強過ぎず地味過ぎずのしっかりしたビター&甘味が味わえます。
また、「二子新地鮮魚店 魚市」では豊洲市場直送の新鮮魚介を扱っており、カップサイズにしたまぐろ中落ちなど、生食できる鮮魚商品3点を好きにチョイスできる「おつまみセット」(税込980円)も販売中。ほかにも青果・総菜・お菓子など販売しており、夕食のおかずからお酒のお供にまで幅広く対応してくれます。
ほかには和の雰囲気がすてきなせんべい屋さんなど、ほかの商店街ではあまり見なくなったタイプの懐かしいお店も充実しています。
また、駅前商店街から住宅街に入る小径は区画整理がされておらず、かなりの部分が昔のままの入り組み湾曲した姿を保っています。
ゆっくりとカーブする道の先へ進んだり、意外な場所へ出たり……ちょっとした迷路探索のような楽しみ方もできそうです。

住宅街の一角で見つけた「岡本太郎」アート

二子新地巡りでの注目スポットは主に河川敷側に集中しているため、今度はこちら側を歩いてみます。
駅から多摩川方向に少し歩き、多摩沿線道路を左折して少し行った場所にあるのは「二子神社」。
戦国時代、この地域に定住した武将が天照大御神をまつったのが神社の起源とされており、近くにある渡船場や宿場を利用する旅人や商人などに敬われてきました。
また、この敷地に隣接して設置されているのは、岡本かの子文学碑「誇り」。神社に近接するのんびりした住宅街の中にあって、このビジュアルはインパクト絶大……!
この碑を造ったのはあの前衛芸術家・岡本太郎。小説家・岡本かの子は岡本太郎の母で、母が愛していた多摩川のほとりに、太郎はこの碑を立てました。二子新地のある川崎市は岡本太郎とのゆかりが深く、晩年の太郎が川崎市に寄贈した作品が、現在では川崎市・生田緑地内の「川崎市岡本太郎美術館」で見られます。

多摩川河川敷は憩いの場

神社を後にして土手の階段を上り、多摩沿線道路の横断歩道を渡ります。
その先は多摩川の広々した河川敷。
ここには複数の野球場があり、地域の子どもたちが試合や練習に励んでいます。
金属製の「二子の渡し」の碑も発見しました。二子玉川側の碑とペアになっており、二子橋がかかる以前、ここを起点として多摩川両岸を渡し舟が往来していたことを今に伝えています。
また、こちらの河川敷には完全予約制の「川崎市多摩川緑地バーベキュー広場」も。12〜2月は土日祝のみ、3〜11月は毎日営業(※毎月第3金曜日は休業)しており、入場料は500円(税込)。訪れた時は適度に暖かい晴れた春の日とあって、数組がバーベキューに興じていました。

二子新地〜二子玉川は徒歩でもアクセス楽々

二子新地側の土手からは、隣の二子玉川駅が見えます。
二子玉川駅までは、二子橋を歩いていけば徒歩でらくらくアクセス可能。これも二子新地の強みと言えそうです。
二子橋からの景色はとっても広々! 開放的で爽やかです。
左を向けばゆるやかな多摩川の流れや、時おり飛んでくる野鳥などを眺めることができます。
右を向けばすぐ近くを鉄道橋が並走。ここを東急田園都市線・東急大井町線・東京メトロ半蔵門線・東武伊勢崎線が走っているので、こうした電車を間近で観察したいときにもベストスポットです。

二子新地はスローライフを送りたい人にもおすすめの街

二子新地の雰囲気は、再開発が進んでにぎやかな二子玉川サイドとは正反対。逆に言えば、過剰なにぎわいや人混みを避けてのんびりマイペースに過ごしたい人は、こちらに居を構える方がいいかもしれません。
休日の遊興やショッピングなども東急線を使えばさほど問題にはならず、二子玉川だけでなく神奈川県側の溝の口エリアにも簡単にアクセスできるのは大きな利点。休日は違う街で楽しみ、平日は二子新地の河川敷で多摩川の風を感じつつゆったり……なんていう生活スタイルが思い浮かびます。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)

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