救急車呼ぶか迷った時の「#7119」GWは電話殺到、つながりにくいかも…類似サービスの利用呼びかけ
2025年4月18日(金)15時32分 読売新聞
救急車を呼ぶかどうか迷った時に相談できる電話窓口「#7119」が大型連休中、つながりにくくなるケースがある。不要不急の119番の件数を抑えるために導入されたが、認知度が上がったことで電話が集中し、対応が追いつかないという。自治体などはゴールデンウィーク(GW)に向け、つながりにくい場合は携帯電話アプリなど類似サービスの利用検討を呼びかけている。(飯田拓)
30秒に1件
「いつから、どのような症状ですか」。大阪市消防局にある「救急安心センターおおさか」(大阪市西区)で今月上旬、窓口を担当する8人の看護師らがパソコン画面を見ながら、電話の相手に尋ねていた。
専用のプログラムに沿って症状を聞き取り、「緊急度」を判定。必要ならその場で消防に電話を転送する。判断に迷った場合、常駐の医師に相談する。
同市は2009年に制度を導入。10年12月以降は大阪府内全域からの相談を受け付けている。24年の対応件数は約34万7700件で、11年から10万件以上増えた。現在は回線を当初の4倍の16本に増やし、曜日や時間帯によって2〜16人の看護師を配置している。
それでも、開いている医療機関が少ない年末年始やGWの大型連休中は電話が殺到し、対応しきれない場合がある。平日や通常の土日は1日600〜1500件ほどだが、インフルエンザが流行した昨年12月29日は1日で約2800件と、過去最多を記録した。「約30秒に1件」の計算で、順番待ちの時間が長くなったという。勤務歴10年の看護師庄司京子さん(64)は「相談が終わった瞬間に次の電話を取るような状況がずっと続いていた」と振り返る。
応答率に差
総務省消防庁によると、高いニーズに対応するため、大型連休中は態勢を強化する必要がある。ただし、単に回線を増やしても、連休中だけ勤務できる人材を見つけるのは難しい。導入して間もない自治体では、不慣れなため相談の多い時期や時間帯を予想しきれないこともあるという。
同庁が昨年7月に公表した、「#7119」を運用する30地域(当時)への調査結果によると、着信に対応できた割合を示す「応答率」は、回答した19地域の約半数が8割台だった。大阪府は72・4%で、最高は神戸市の97・3%。全県での運用が初年度だった岐阜県が62・2%と最も低かった。
80%だった徳島県の担当者は「大型連休などの混雑が、全体の数字を引き下げている」と説明する。
無関係な電話も
24年の救急車の出動数(速報値)は全国で771万件と過去最多で、14年(約598万件)の約1・3倍となった。不要な119番は重篤な患者に対応できず、救急隊員の負担になる可能性があるため、事前に「交通整理」をする「#7119」の重要度は高い。
「#7119」と似たサービスに、選択式の質問に答えると緊急度が分かる消防庁の全国版救急受診アプリ(愛称・Q助)や、子どもに関する相談に特化した電話窓口「#8000」などがある。ただ、認知度が低いため、「#7119」に相談が集中しているとみられる。
大阪市消防局によると、119番の判断や医療機関の紹介という「#7119」の目的以外の相談内容も約1割あり、中には「家の鍵をなくしたので開けて」「マンションの火災報知機が鳴っているので止めて」など、救急と関係ない相談もあるという。同局の担当者は「緊急の判断を要する場合もあり、心配な時は遠慮せずに電話してほしいが、無関係な電話はやめてもらいたい。連休中は対応が追いつかない可能性があり、インターネットを使える人は、他のサービスも検討してほしい」と呼びかけている。
一般財団法人「日本救急医療財団」の横田裕行理事長の話 「『#7119』は119番の負担軽減につながる重要なサービスだが、運営側の努力だけでは限界もある。今後さらに普及を目指すなら、国はモデル地域を作るなどして改善を目指してほしい。利用者側も、明らかに不要な相談は踏みとどまることが必要だ」
◆#7119=2025年4月時点で全国の37地域が導入し、全人口の79・1%をカバーする共通ダイヤル。救急出動の増加を背景に、東京消防庁が2007年に導入した。原則は24時間態勢だが、夜間に絞る地域もある。