温泉の街・草津、小中学生が平日に休める新制度…旅館や飲食店で働く保護者と過ごす時間確保へ
2025年4月18日(金)9時2分 読売新聞
群馬県草津町は今年度、町内の小中学生が保護者の休暇に合わせて平日に学校を休んでも欠席としない「学校特別休暇制度」を導入した。県内の自治体が同制度を導入するのは初めて。草津温泉を核とする観光業が盛んな同町としては、土日勤務が多い保護者と子どもがともに過ごせる時間の確保につなげていく狙いだ。
45%が「宿泊・飲食サービス業」
2020年の国勢調査によると、同町で宿泊業・飲食サービス業に就く人の割合は45・41%と県内で最も高く、県平均の5・05%を大きく上回る。土日や長期休暇、年末年始は書き入れ時で、旅館や飲食店で働く保護者が家族とレジャーに出かけることは難しかった。
こうした状況を踏まえ、町は今月、県外の自治体の導入事例も参考にして保護者が事前に学校に申請すれば休んだ日を「家族体験学びの日」とし、インフルエンザや新型コロナウイルスでの病欠と同じ「出席停止等」扱いにする制度を導入。年3日まで取得可能で、家族の思い出作りを後押しすることにした。
申請時には休みの期間や体験場所、目的などを記入してもらうが、過ごし方は自由だ。学校行事や定期テストの時は対象外で、子どもだけで遊ぶ場合も認めない。休んだ分は家庭の自習で補い、授業で使った教材やプリントも後日配布してサポートするという。
湯畑近くで土産店を経営し、地元の小中学校に通う2人の子供がいる宮崎政幸さん(44)は「これまでは平日で休校になる県民の日(10月28日)くらいしか家族旅行ができなかった。ぜひ制度を活用したい」と喜ぶ。
この制度は「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせて「ラーケーション」と呼ばれ、愛知県や茨城県、栃木県日光市など全国で導入が進んでいる。
例えば、草津と並ぶ人気温泉地・大分県別府市は23年9月に導入し、24年度は小中学生約7200人のうち延べ2075人が利用した。保護者からは好評で、市は今年度、休める日数を年4日から5日に増やした。24年度は、導入を検討する全国の約30自治体から問い合わせがあったという。
一方で課題もある。名古屋市は、家庭の事情で休めない子どもとの公平性の問題や、欠席者が多くなって授業ができなくなる恐れなどを理由に、愛知県内で唯一、導入を見送っている。保護者から「経済的余裕がなくて休みが取れない」との声があった別府市は、市外旅行に限定していた取得条件を24年度からなくした。
草津町教育委員会は「現場と相談しながら柔軟に運用していきたい」としている。