インチキ手術で何十人も殺したニセ医者「ジョン・ブリンクリー」の正体
2025年4月20日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン
インチキ手術で何十人も殺したニセ医者「ジョン・ブリンクリー」の正体
顎髭を生やしたジョン・ブリンクリー。1920年撮影(同書より転載)
1910年代末のアメリカには、ヤギの睾丸を人間に移植する偽医者ジョン・ブリンクリーがいた。彼は精力旺盛なヤギに着目し、インポテンツ治療としてこの荒唐無稽な方法を用いた。それにもかかわらず、多くの患者が彼の元を訪れた。現在でもこのようなインチキ治療の被害者は後を絶たない。※本稿は、ポープ・ブロック著、杉田七重訳『ヤギの睾丸を移植した男:アメリカで最も危険な詐欺師ブリンクリーの天才人生』(国書刊行会)の一部を抜粋・編集したものです。
自殺寸前の若者を救う…?手術にまつわる「但し書き」
ヤギの睾丸の有用性については、これまで誰も目を向けることがなかったとブリンクリーはいう。
かつての患者たちからの手紙にはどれも、「性欲が驚くほど増進した」とあり、その詳細についてはみな「ほのめかすだけにとどめておきたい」といったことが書いてあったという。そしてさらに喜ばしいニュースは精神的な病を負った若者への効果だとブリンクリーはつけ加える。
この症状はもう治らないから、ずっとこのままでいるしかないと、とうとう医者に宣告された。それで彼はわたしのもとを訪れたのだが、この手術に失敗したら自殺をすると心を決めていた。
移植手術が終わって36時間が経過したところで、この患者の体温が39.4度を越えたが、それから24時間経つと平常にもどり、以来ずっと平温を維持している。彼の頭はしだいにはっきりしてきて、見かけも気持ちも以前より若々しくなり、結婚も考えるようになった。これまでずっと彼を悩まし、眠りを妨げていた恐ろしい悪夢が消え去ったのだ……。