昼職パートも即挫折...夜職歴15年→結婚引退の元ベテラン嬢「水商売の後遺症」にあえぐ壮絶末路
2025年4月22日(火)17時0分 J-CASTニュース
水商売の後遺症としてよく挙げられるのが「金銭感覚」だが、長年従事した上でのデメリットはそれだけではない。どっぷり浸かるほど一般社会に馴染みづらい要素がほかにも残るからこそ、夜職は気軽に手を染めるべきではないと私は考えている。
仮にたくさんのお金を手元に残せたとしても、私生活に支障をきたすキズが残るのは何とも悩ましい。なぜなら「現役」よりも卒業後の人生の方がずっとずっと長くて、生涯キャストを貫ける人の数は極めて少ないからだ。
水商売で性格や価値観が変わるワケ
夜職は華やかでないと客に選ばれないことから、少々浮世離れしたキャストが脚光を浴びやすい。その結果、独特のオーラが身につくだけではなく、内なる部分や考え方、そして所作などの細かい部分に「後遺症」が滲み出る。
歓楽街は基本的に、一般常識が通用しない世界。あり得ないルールもまかり通り、昼の社会では許されないようなことも平然と行われているため、誰かを心の底から信用できる環境とは言い難いだろう。
来客予定を飛ばれる(=バックレ)、根も葉もない嘘を流される、同期が連絡もなしに店へ来なくなるなどはもはや日常茶飯事だ。人間としての「負」の部分を見せられ続けると、次第に心が歪む。「やめた後も人間不信が治らない」といった内容で悩み続けると、生きづらさを抱えたまま毎日を過ごさねばならないのだ。
好意を抱かない異性に毎晩口説かれて、すっかり人間嫌いになった元キャストも多い。水商売卒業後も恋愛をする気が起きず、他者を斜めから見るクセがつき、とてもルックスが良いのに恋人いない歴○年......のような人々が現れるのも、決して珍しくはないのである。
恋愛や他者への見方だけではなく、自分に向けられる視線ばかりに気をとられ続ける例もある。俗に言う承認欲求が抑えきれないと、昼職での生活がつまらなく感じたり、常に誰かからの反応を欲し、SNS依存や店への出戻りパターンへとハマりがち。
心の隙間を埋めるのが誰かからの褒め言葉ばかりだと、「私を見て」という気持ちが抑えきれない人間になってしまい、自己主張が激しくなる恐れが考えられるのだ。
「夜職をして性格が変わった」と嘆くナイトワーカーは、溢れんばかりに存在する。どれほど意識を働かせても、毎日何かのタブーを見せつけられたまま過ごせば、人間性や価値観に悪い変化が起きるのは致し方がないのかもしれないが......。
知らない間に染みついた夜型生活、体へのダメージも
夜働く生活を送れば、毎日朝決まった時間に起きるのはほぼ不可能である。
起床時間を午前中に設定するナイトワーカーは少なく、だいたいが昼12時以降に活動を開始し始め、中には夕方〜出勤ギリギリまで寝続けるキャストもいるほど。完全なる昼夜逆転を3カ月続けただけでも、体はすっかり夜型になってしまう。
朝起きない日々が日常化すると、転職の際につまづきやすいのが大きなデメリットだ。
面接が午前中に指定されて起きられず、そのまま飛んだエピソードなどは時に笑い話として扱われるけれど、冷静に考えたら常識を逸脱した話でしかない。たとえ無理をして体を動かせたとしても、今までと異なる時間帯で動き回るのは慣れるまでに多大な時間を要するだろう。
実際に夜職歴15年超えのベテランキャストが結婚で卒業。その後はパートを始めようとしたが長年染みついた夜型体質が変えられず、早々に断念してしまった。「私が元気になるのはやはり、夕方以降からだ」と諦め気味につぶやき、結局活動時間帯を変えられなかった様子を今でも私は覚えている。
夜職はそこそこの体力がないと続かない商売だが、やめた途端にツケが一気に回ってくる可能性もある。お酒や昼夜逆転のダメージが蓄積し、免疫力の低下、持病の悪化などへつながれば、業界入りをする前より確実にパワーが擦り減っているだろう。「せっかく動ける時間が作れたのに、体が言うことを聞かない」と、引退後しばらくジッとせざるを得ない「卒業生」も少なくはないのだ。
「たくさんのお金を稼いで誰もが幸せになれる」は幻覚
夜の世界を抜け出すと金銭面への心配ばかりが目立つけど、実際は他の部分にまで大きな影響を及ぼすことを忘れてはならない。お金があってもマインドがすっかり変わって集団生活ができなくなったり、病気がちになればマイナスの要素を引き寄せているのとイコールだ。
昨今の夜職ブームはキラキラと輝いた部分ばかりピックアップされて、裏側に関して生々しく描かれていない。少々言い過ぎかもしれないが「たくさんのお金を稼いで誰もが幸せになれる」なんてことは、幻想、いや幻覚だととらえるに越したことはない。
稼げる分、さまざま々なところで蝕まれる現実は、「現役」も「入門生」も誰もが心得るべき部分だろう。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。