森永ヒ素ミルク事件、補償不十分と訴えた脳性まひ女性の請求棄却…大阪地裁
2025年4月22日(火)13時33分 読売新聞
大阪地裁
約1万3000人に健康被害を出した1955年の森永ヒ素ミルク事件で、脳性まひになった大阪市の女性(70)が、補償が不十分だとして製造元の森永乳業(東京)に慰謝料など5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(野村武範裁判長)は22日、女性の請求を棄却した。
事件では、同社徳島工場で製造された粉ミルクにヒ素が混入し、飲んだ乳児らがヒ素中毒症状を発症した。同社と国、被害者団体が1973年に被害者救済で合意。翌年、救済団体「ひかり協会」(大阪市)が設立され、同社が拠出した資金で症状に応じた手当を支払っている。
訴状によると、女性は同社の粉ミルクを飲み、脳性まひで幼い頃から左半身が動きにくかった。年齢を重ねるうち、首や右半身にも痛みを発症、2004年には自力歩行が困難になった。
女性側は訴訟で、月約7万円の手当を受け取ってきたが、「生まれてからずっと症状は悪化し、全く足りない」と訴えた。
同社側は1973年の合意で解決済みだと反論。不法行為から20年間で賠償請求権が消滅する民法(当時)の「除斥期間」が経過しているとも主張した。