〈Youは何しに東大へ?〉「官僚」でも「商社」でもない…「東京大学」卒業生に人気の“仕事”とは
2025年4月26日(土)7時0分 文春オンライン
〈 「女は短大でよい」「大学は地元国立のみ、上京不可」「化粧くらいしろ」…地方出身の“女子東大生”が明かす「生きづらさ」 〉から続く
日本の最高学府「東京大学」を卒業した学歴エリートたちの多くは、どんな仕事に就いているのか。卒業生を対象とした調査を見ると、「医師」でも「弁護士」でも「商社」でもない、意外なデータが明らかになった。『 「東大卒」の研究 ——データからみる学歴エリート 』(本田由紀編著、久保京子、近藤千洋、中野円佳、九鬼成美著、筑摩書房)より、本田由紀氏が執筆した章から一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/ 前回を読む / 続きを読む )
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就労状態や雇用形態は外形的な変数ですので、もう少し仕事の中身に踏み込んでみましょう。現在働いている者に職種をたずねた結果を見ると、4割と最大のボリュームを占めているのは、「専門職」です。次いで「管理職」が2割、そして「技術職」と「事務職」がそれぞれ1割強で続きます。
あくまで今回の調査の回答者の中でではありますが、東京大学とは、実は専門職を大規模に養成している教育機関であることがわかります。入学者のジェネラルな学力の高さのイメージが強い東京大学ですが、そこで学んでから社会に出てゆく人たちの中には、特定の分野の専門人材が大きな比重を占めているのです。
この専門職の割合を、性別、文系・理系別および学位別に見ると、女性では2人に1人と男性の約4割を上回っており、また文系では3人に1人、理系では2人に1人が専門職です。そして学部卒では2割強、修士では3割強ですが、博士卒では8割以上までを占めます。当然とも言えますが、修士と博士の間の相違が大きく、特に博士学位を取得した場合に、多くが専門職に就いていることになります。
「医師」でも「弁護士」でもない…東大卒が最も就職している専門職
職種の分布を、性別・世代別に示したものが図表です。男性は高年齢層ほど専門職と管理職の割合が大きくなり、最高年齢層ではそれぞれ4割強、4割弱を占めています。逆に若年層ほど技術職と事務職が多くなります。
女性では高年齢層ほど顕著に専門職が多く、最高年齢層の回答者では4人に3人までを占めます。若年層では事務職が多くなります。男性との違いは、高年齢層では管理職が少なく、若年層では技術職が少ないことです。
では、東大卒業者の中でかなりの割合を占めている「専門職」とは、具体的にはどのような仕事でしょうか。自身の現職を「専門職」と回答した人たちが、仕事内容を記述してくれた結果を分類すると、約半数が「研究者、大学教員」、1割強が会計士やコンサルタントなどの「ビジネス系専門職」、約1割が「医師」、1割弱が「弁護士」、5%が学校教員や塾講師などの「教育系専門職」という結果でした。
理系に限れば「研究者、大学教員」が6割を占め、逆に文系では「ビジネス系専門職」と「弁護士」がそれぞれ2割以上と多くなります。学部卒の専門職は3人に1人が「ビジネス系専門職」ですが、博士では8割弱が「研究者、大学教員」です。東京大学が総合大学であることを反映して、「研究者、大学教員」が専門とする分野も、人文系、社会科学系、自然科学系という形でバラエティに富んでいます。
このように、性別、分野や学位によっても異なりますが、「研究者、大学教員」を中心としつつ、それ以外にも非常に多様な専門職を東京大学は社会に送り出していることがわかります。男性に多い経営者・役員というビジネスエリートだけでなく、さまざまな領域の専門エリートを東京大学は育成しており、卒業生の中でも特に女性は、東大卒という学歴資本だけではなく、それに加えて学位や資格、専門知識という武器を身につけてキャリアを築いていると言えます。
むろん、学歴資本と専門性がかけ合わされることで、東大卒の専門職がいっそう有利になっている可能性は否定できません。それでも、東大卒の中のかなりの割合が、人生初期に身につけた学歴資本の有効性だけで勝負しようとしているわけではなく、それ以外の諸資本をも獲得し活かそうとしていることは銘記する必要があるでしょう。
〈 「氷河期世代」でもさすがの“高収入”…学歴エリート「東大」卒業生たちの“世代別月収” 〉へ続く
(本田 由紀/Webオリジナル(外部転載))