流氷溶解後の知床沖に魚や鳥類の好物「オキアミ」の大群、豊かな生態系証明…東京農大など研究結果

2025年4月28日(月)7時23分 読売新聞

 流氷が解けた後のオホーツク海などにクジラや魚、鳥類が押し寄せるのは、餌となる動物プランクトンが、流氷の来ない海よりはるかに高密度で繁殖しているから——。こうした研究結果を、東京農業大と水産研究・教育機構(横浜市)の研究チームがまとめた。特に知床沖には好物のプランクトンが多く生息していることが分かり、豊かな生態系を育んでいる理由が初めて定量的に裏付けられたという。(石原健治)

 研究チームは2022年の春(5〜6月)と夏(8月)、北海道内の日本海5か所とオホーツク海の沿岸4か所、沖合5か所の水深1000メートルで、目の細かな引き網を使って動物プランクトンを採取。その結果、流氷溶解後の春のオホーツク海沖合で動物プランクトンの密度が極めて高かった。流氷が到来しない日本海の地点と比べると、差は十数倍に上る。

 中でも知床岬から約50キロ沖のオホーツク海の地点では、採取した動物プランクトンのうち半分が「チサノエッサ・ロンギペス(チロ)」と呼ばれるオキアミの一種だった。チロは体長1・6〜3センチで、主に北太平洋の水深500〜1000メートルに生息。栄養価が高く、ナガスクジラやミンククジラ、サケマス、知床に飛来する渡り鳥・ハシボソミズナギドリが競い合って食べることで知られている。

 チロは動きが速いため採取は難しく、チームの中川至純よしずみ・東京農大教授(浮遊生物学)は準備に10年近く要したという。「流氷が解けてオキアミが大増殖する実態をようやく科学的に明らかにすることができた。知床の海がどれだけ素晴らしいのか、さらに調査を進めたい」と語る。

 研究結果は、3月に北里大(相模原市)で開かれた日本水産学会で発表された。

 流氷が解けた後のオホーツク海は、海面が黒くなるほどハシボソミズナギドリに埋め尽くされ、ナガスクジラなどの大群が押し押せる。チームとは別に、鯨類とプランクトンの関係を研究する東京農大の小林万里教授は「チロが高密度に生息するのは鯨類や鳥類の命を支えるのに重要。動物プランクトンの繁殖には流氷や海流が運ぶ鉄分と栄養分が不可欠で、近年の流氷の減少や到来期間の短縮などが生態系にどのように影響するのか注視する必要がある」と指摘する。

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