「足の踏み場もないくらい遺体が散乱していた」乗客乗員524名のうち520名が死亡…史上最悪の飛行機事故「日航ジャンボ機墜落事故」はなぜ起きた?
2025年4月29日(火)11時50分 文春オンライン
〈 そこらじゅうに散乱した乗客の肉片、「クソッたれ」と捨て台詞を残す記者も…520人が死亡した「世界最悪の飛行機事故」報道カメラマンが見た“この世ならざる光景” 〉から続く
「いたるところから航空燃料ケロシンやプラスチック、タンパク質の燻る煙が立ち昇っている。なんとも表現しようもない嫌な臭いが辺りを包んでいた」
今から40年前に報道カメラマンとして、世界最悪の飛行機事故「日本航空123便墜落事故」の現場を取材した橋本昇氏。400tのジャンボ機が山に衝突するという前代未聞の事故の様子とは? 橋本昇氏の新刊『 追想の現場 』(鉄人社/高木瑞穂編)より一部抜粋してお届けする。(全4回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆
520人が死亡した「最悪の飛行機事故」の現場へ向かうと…
墜落現場はどこか──ぶどう峠から南南東の方向で煙が上がるのを見た、という目撃情報もあった。まことしやかな情報が錯綜するなか、私は現場に向かう自衛隊員たちの車両の後を追った。彼らが向かう先は長野県から群馬県の下仁田へ抜ける県道124号線の、ぶどう峠だった。
あたりはすっかり明るくなり、蝉が暑苦しく鳴き始め、また暑い一日が始まった。
県道はいつの間にか狭い山道に変わり、所々盛り上がったわだちや鋭くとがった小石に車のエンジンは悲鳴を上げながら、曲がりくねった山道をぶどう峠をめざして登って行った。だが運転手は、「パンクしちゃった」。タイヤは完全に空気が抜けていた。仕方なく車を捨て徒歩で登っていった。背負ったリュックと、たすき掛けにした2台のカメラが、肩に食い込む。
峠には、自衛隊や警察車両がすでに到着していた。隊員たちの話によると、墜落現場はここから山を二つばかり越えた「御巣鷹山」。その尾根付近らしいという。
遠くでヘリの爆音が風に乗って聞こえてきた。道の脇へ入ると、山頂へ向かって真っ直ぐ伸びる道があった。その山道を自衛隊員たちの後からついて登っていった。
直ぐに息が荒くなり、一歩踏み出すごとに、体中から倦怠感が波のように押し寄せてくる。一分一秒でも早く現場へ行きたいと焦る気持ちと疲労感が、交互した。
ようやく一つ目の山の尾根付近までやってきたとき、前方にふらふらと歩いているスーツ姿の男がいた。
「水を持ってませんか」手ぶらの新聞記者
新聞社の記者だった。記者は山道脇の繁みに倒れ込むように横たわり、「水を持ってませんか」と声をかけてきた。驚いたことに彼は手ぶらで何も持っていなかった。だらしなくネクタイを下げ、汗と埃でヘロヘロになっていた。スーツに革靴、まったくの都会での取材スタイルを山に持ち込んでいた。
少し水を飲ませ、先を急いだ。すぐ側の木の梢で、美しい声の小鳥が我々の苦悶も知らずに盛んにさえずっていた。その山道の先々で、知り合いのカメラマンや記者たちが、喉の渇きと暑さで道でへばって倒れていた。驚いたのは、放送局名が書かれた業務用のビデオカメラが棄てられていたことだ。
現場に近づくにつれ、複数のヘリが唸りを上げながら山頂付近を旋回しているのが見えた。目指す墜落現場は、ヘリの下付近にあるらしい。何度も足を踏み外しながら急峻な山道を谷へ向かって下りていった。
すると突然、尾根へと続く深く切れ込んだ谷底に、墜落したジャンボ機の巨大なエンジンと思われる一つが、エンジンカバーから外れ剥きだしになって落ちていた。谷底に巨大なジェットエンジンが? なんとも不可解でシュールな光景だった。触れてみると、ささくれた軽合金のひんやりとした触感が手のひらに伝わってきた。
墜落現場へ通じる最後の急な山中を、笹を両手で握りながらを登って行った。乗客と思われる部分遺体が、いたるところに散乱している。
突然、眼の前の視界が開けた。狭い尾根の一角を覆うように、大きな文字で“JAL”とペイントされたジャンボ機の主翼の片方が、横たわっていた。尾根に沿って生えている木々のほとんどがなぎ倒され、いたるところから航空燃料ケロシンやプラスチック、タンパク質の燻る煙が立ち昇っている。なんとも表現しようもない嫌な臭いが辺りを包んでいた。
いままで見たことも無い現場の凄惨な光景に、呆然とするなか、現場の尾根へと蟻が這い上るよう登って来た捜索隊員やカメラマンたちの姿が、目に入った。
400tのジャンボ機が、墜落ではなく激突したのだ。想像するに、機体重量約500tの半分を占める200t近い航空燃料ケロシンは、尾根に衝突と同時に一面に、爆発的に燃え広がったのだろう。
そこらじゅうに散乱した乗客の肉片が…
主翼の周りには、バラバラになった機体部品や乗客の荷物、そして遺体、細かくちぎれた肉片、木の枝にひっかかったままの一本の腕、高熱に焙られて炭化してしまった部分遺体などが、足の踏み場もなくそこらじゅうに散乱していた。
目の前に一席の乗客シートが燃えずに残っていた。この光景を見た瞬間、「巨体が空を飛ぶということは大変なことなんだ」と、いまさらながら恐ろしくなった。
〈 弁当を食べようとしたら足元に「ちぎれた人間の足」が…「520人が死亡した飛行機事故」報道カメラマンが撮影した“壮絶すぎる事故現場” 〉へ続く
(橋本 昇,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))
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