富士山で5日間に2度救助された中国籍男性 救援費用は原則タダ、野口健氏「請求するべき」と激怒
2025年4月30日(水)19時41分 J-CASTニュース
まだ頂が雪におおわれた富士山で、遭難者が無事に救助され、一件落着......といかない「事件」が起こった。
実は同じ人物が5日間で2度、救援要請していたのだ。
閉山中なのに登り「体調が悪くなった、寒い」
富士山の富士宮口8合目(標高3250m)にいる登山者が、擦り傷を作り、震えた状態で倒れている男性を発見、通報を受けた静岡県警の山岳救助隊員が男性を救助した。2025年4月26日13時ごろのことだ。
男性は東京都渋谷区に住む中国籍の男子大学生(27)。救助隊員と日本語で会話ができる状態で、「体調が悪くなった、寒い」と話したという。単独で下山中の最中に高山病になったと見られている。
救助隊が出動して男性を救助し、翌27日未明に、富士宮口5合目(標高2400m)で消防の救急隊に引き継いだ。命に別状はないという。
ところがその後の警察の調べで、この大学生は5日前の22日にも「アイゼンを紛失して下山できない」と富士山頂から警察に通報し、山梨県の防災ヘリコプターによって救助されていたことが判明した。
22日に遭難した際に置き忘れた携帯電話を回収しようと、再び登山して今回の騒動につながったのだという。
富士山は4月25日に5合目までの道路が開通しているものの、山頂までつながる登山道は積雪などで冬季閉鎖が続いており、滑落などの危険性も高い時期だ。
救助は公務、税金から支払われる
こうした危険を顧みない身勝手な行動に、1999年に最年少の25歳で当時の七大陸最高峰登頂を達成したアルピニストの野口健氏は、自身のXで「あまりに愚か」と激しく憤り、「救助費用を請求するべき」と述べている。
日本では、警察や消防といった公的機関が行う山岳救助活動においては、ごく一部の地域を除いて救助費用が遭難者に請求されることはない。救助は公務となるため、税金から支払われることになる。今回の救助においても同様だ。
さらに、人が遭難するような場所に向かうということは、救助隊員たちにも当然危険が伴うことも忘れてはならない。
今回のケースで、「税金が使われているのが納得できない」「ペナルティを設けるべき」「日本人は寛大すぎる」などと、SNSなどを中心に非難があふれた。だが、こうした状況は日本に限ったことでもないようだ。
海外では無謀な登山者に救助費用請求すべきとの声も
無謀な登山者が増えているヨーロッパアルプスの最高峰・モンブランの麓にある、フランス・サンジェルベレバン市のジャンマルク・ペイレックス市長が怒りの声をあげたのは2022年のことだ。
フランスでも山岳救助は公共サービスであるため、その費用は国の税金から支払われることになる。そのため市長は「費用をフランスの納税者が負担するのは容認できない」と述べ、波紋を呼んだのである。
登山は危険と隣り合わせだ。それだけに十全な注意を払って行動をとらなければならない。だが、その準備が不十分であったり、明らかな過失による救助に対しては、費用を請求するべき、という議論が進んでいる国もある。
たとえばアルプス山脈に位置する国、スロベニアでは、明らかな過失が認められる場合は、遭難者に対して救助費用請求が可能となる法律が施行された。これが抑止力となったのか、以降は費用を求めるような事故は起きていないという。
日本でもこうした議論が進む可能性はあるのだろうか。