気分が沈みやすい人が無意識にやってしまう“思考のクセ”

2025年5月1日(木)6時10分 ダイヤモンドオンライン

気分が沈みやすい人が無意識にやってしまう“思考のクセ”

「変化の時代に、どう生きるか?」この問いに答える一冊が、アメリカでベストセラーとなった『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。彼が明かすのは、私たちの心を知らぬ間にすり減らし、日々の満足感を奪っている思考の落とし穴だ。なぜ、同じ出来事に直面しても、ある人は平然とし、ある人は深く傷つくのか。本稿では、本書の知見をもとに「気分が沈みやすい人が無意識にやってしまう思考のクセ」を探る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

Photo: Adobe Stock

〈楽観的すぎる予測〉が気分を左右している

「ちょっとしたことで気分が沈む」「ストレスを感じやすい」——そんな自分に対して、「メンタルが弱いせいだ」と責めたことがある人もいるだろう。

 だが、その原因は、脳が無意識に繰り返している“思考のクセ”にあるのかもしれない。

 人は日常のあらゆる場面で、脳内で無数の「予測」を立てている。

 たとえば「今日の会議はうまくいくだろう」「この人なら分かってくれるはずだ」といった具合である。

 こうした予測が現実と一致すれば、気分は安定し、ポジティブな感情が生まれる。だが、予測が裏切られた時——特に、楽観的すぎる予測が現実に打ち砕かれた時には、気分は一気に沈みやすい。

 ウェルビーイング研究の第一人者であるブラッド・スタルバーグは、この仕組みを端的に説明している。

 わたしたちが意識として経験しているものは、脳がいろいろな方法で絶え間なく生成する思考や感覚の連続だ。

 予測が正しければ、わたしたちの気分は良くなり、概して穏やかでポジティブな思考になる。だが、予測が楽観的すぎると、現実との落差によって気分が落ち込み、思考もネガティブになる

——『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 つまり、気分が沈みやすい人は、無意識のうちに「現実以上に良いことが起きる」と予測してしまっている傾向がある。

 それが裏切られるたびに、落胆し、自己否定感へとつながっていく。

 この思考のパターンが定着すると、どんな出来事にもネガティブな反応を返す“心のクセ”となってしまうのだ。

メンタルが安定している人は「期待しない力」を持っている

 この現象をより深く理解する手がかりとして注目したいのが、幸福度ランキングの上位に名を連ねるデンマークの研究である。

 スタルバーグは次のように指摘している。

 南デンマーク大学の疫学者たちが、ある画期的な研究をおこなった。幸福度調査や人生の満足度調査などで、デンマーク国民がいつも他の欧米諸国よりも高いスコアを出す理由を突き止めようとしたのだ。

 研究結果が発表された『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌の論文で、彼らは期待の重要性を強調した。

「非現実的なまでに高い期待を抱くと、失望して人生の満足度が下がりやすい。デンマーク人は満足度がきわめて高いが、彼らはそもそも多くを期待していない」と書かれている。

——『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より

 この研究は、幸福の鍵が「どれだけ得たか」ではなく、「どれだけ期待しなかったか」にあることを示唆している。

 高すぎる期待は、現実とのギャップを生み、失望を引き起こす。反対に、期待値を適切に設定することが、心の平穏と満足感につながっていくのである。

 気分が沈みやすいのは、弱さではない。

 ただ、自分がどんな期待を抱いていたのかを見つめ直すことが、思考のクセに気づく第一歩となる。

 自分自身に対しても、他人や未来に対しても、少しだけハードルを下げてみる。その意識が、落ち込みやすい心に変化をもたらすだろう。

※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』の内容を一部抜粋・編集したものです。

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