北海道・鈴木直道知事の中学時代は「ゲーセン通い」、「学校はつまらない」「家にも居たくない」…そんな日々を変えたのは
2025年5月2日(金)10時0分 読売新聞
サッカーをする小学生の鈴木さん
2019年から北海道知事を務めている鈴木直道さん(44)。政治家と聞いて思い浮かべる“エリート”のイメージとは異なり、実は家庭環境が複雑で、少し荒れた子ども時代を過ごしたという。(読売中高生新聞編集室 真崎公美)
突然の引っ越し
「小学1年生のとき、急に家を引っ越すことになりました。当時は理由がわかりませんでしたが、事情があって、元々住んでいた家を手放さなければならなくなったようです。両親は共働きで、ほとんど家にいなかったので、2歳上の姉と2人だけで過ごす時間が長かったですね。生活は苦しくて、夫婦げんかも絶えませんでした。私は勉強が全然好きじゃなくて、授業中に教室をウロウロ歩き回るような子どもでした。だから、通知表には『落ち着きがない』『椅子に座っていない』と書かれました(笑)。
鍵っ子で時間を持て余していたので、よく、家の近くにあった
中学に上がると、自分の「居場所」は駄菓子屋からゲームセンターに変わった。
「仕事を終えた父と母が家に帰ってくると、たいていギスギスしているし、ヒートアップすると夫婦げんかが始まるので、家にはあまり帰りたくなかったんです。小学生の頃とは違って、だいぶ色々と物事が見えるようにもなっていました。そんなとき、時間をつぶすために向かったのが、ゲームセンターでした。
ゲームセンターに集まる子どもたちは、みんな何かしらの事情を抱えていて、そういう子たちがコミュニティーを築いていたんです。その中での付き合いが深まり、次第に学校には足が向かなくなりました。
ゲームセンターで過ごすこと自体が、それほど楽しかったわけではありません。ただ、家にいても面白くなかったので、そこが私にとっての居場所になっていました。ゲームセンターで過ごす時間が長くなるにつれて、学校はどんどんつまらなくなっていきました。授業の内容がわからないから、聞いていてもつまらなくて、つまらないから、勉強する気がなくなりました。完全に負のスパイラルです。学校はつまらない。家にいてもつらい。だからゲームセンターに集まる。そんな日々を過ごしていました」
変わったのは先生の涙
鈴木さんを変えたのは、中学3年のときの担任の先生だった。
「絵に描いたような熱血教師で、すごく気にかけてくれていることはわかっていたけど、正直、『めんどくさい先生だな』と思っていました。ある日、授業中にガムをかんでいたことがばれて、呼び出されたんです。こっちはつっかかる気満々で部屋に入ったわけですが、先生を見てビックリしました。泣いていたからです。『お前はやればできるはずだ』と言われ、試しに、先生の担当教科だった社会科だけでも勉強してみるように勧められました。
私は、こんなふうに自分のために泣いてくれる人まで突っぱねたら、自分の中の何かが壊れてしまうような気がしました。それで、人生で初めて勉強をしてみたんです。教科書をちょっと読んでみるところからスタートして、授業も聞いてみました。そしたら、ちゃんとテストに出るポイントとかを説明してくれているわけです。それまでの私は、勉強する気がないから、授業をちゃんと聞いてなくて、そんなことにすら気づいていませんでした。そして、次の社会科のテストでは、そこそこの点数が取れました。テストを返却されるとき、先生に『だからやればできるって言ったでしょ』とほめられて、自分でも、やればできるのかも、と思えるようになりました」