我が子の写真をSNSに投稿する「シェアレンティング」でトラブル、子どもの肖像権を侵害する恐れも

2025年5月5日(月)10時33分 読売新聞

 保護者が子どもの写真をSNSに投稿する行為に注意を促す動きが広がっている。投稿がトラブルにつながる可能性もあり、有識者は、「子どもの安全と権利を考慮して写真を管理してほしい」と呼びかけている。(野倉早奈恵)

公開範囲限定や肖像権配慮を

 SNSの利用が日常的になり、成長や思い出の記録になどと子どもの写真を投稿する保護者は多い。法律相談サイトを運営する「弁護士ドットコム」が、2022年に18歳未満の子どもがいる会員328人から回答を得たネット調査では半数が写真や動画を投稿したことがあると答えた。

 一方で投稿に不安を感じる人も。「過去に投稿したが、1年以内には投稿していない」と答えた人に理由(複数回答)を尋ねると、「将来子どもが不利益な目にあう可能性がある」が55%と最多で、「悪用された、悪用される危険性がある」(45%)、「危害が加えられた、加えられる可能性がある」(40%)が続く。

 東京都内の会社員女性(35)は、4歳の長男の写真を投稿するようになってから、インスタグラムの公開範囲を友人や家族のみに限定した。「写真をどこで誰が見るのか分からないのは怖い」と話す。

 投稿をきっかけに、友人から連絡をもらったり、自身のアカウントで成長の様子を一覧できたりと利点を実感している。一方で、「危険がないように、投稿する写真には気を使う」と話す。

 保護者が子どもの写真をSNSに投稿する行為は、「シェアレンティング」と呼ばれる。共有の「シェア」と、育児を意味する「ペアレンティング」を合わせた造語だ。投稿してトラブルになる例としては、名前や居住地などの個人情報が特定される、他人が写っていた、写真を悪用された、などが挙げられる。

 ネット上の違法、有害情報の通報受け付けやパトロールを行う一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)事務局長の中嶋辰弥さんは、「写真が児童ポルノとして悪用される可能性もある」と話す。

 同協会が24年に受けた通報のうち、児童ポルノ関連は2373件で、全体の3割を占める。着替えや水遊び、トイレトレーニングや入浴の画像は特に注意が必要だ。こうした画像は複数のサイトに拡散していることが多く、中嶋さんは、「一度悪用されると完全に削除するのは難しい。投稿する場合は公開範囲の制限が必須。被写体が大人だったら、どんな印象になるかを考えてほしい」と注意を促す。

 欧米ではSNSが一般的になった十数年前から、シェアレンティングが子どもの肖像権を侵害しているのでは、と問題視されるようになった。

 関連の本として話題になっているのは、23年に児童書として日本で出版された「インフルエンサーのママを告発します」(晶文社)。元々は韓国で出版され、母親に日常生活を投稿された小学生の女の子の視点で書かれている。著者のジェ・ソンウンさんは娘から「SNSに写真を載せないで」と言われた経験があるという。編集担当の深井美香さんは、「大人の読者が多いようだ。日本でも多くの人が気になっている問題なので注目されているのでは」と話す。

 成蹊大客員教授(情報リテラシー)の高橋暁子さんは、「投稿は子どもに不利益を与える可能性がある。子どもの情報をしっかり守ることを心がけてほしい」と話す。

育児情報交換、SNSは有効

 SNSを通じて子育てに関する情報を交換したり、励まし合ったりするケースもある。成蹊大客員教授の高橋さんも「核家族化で孤独な育児をする中、SNSに救われたという話は実際に聞く。乳児の時だけ、子どもが保育園、幼稚園に通い始める前までなどと投稿の期限を決めるのも一つの考え方です」と話す。

 写真を投稿する際の注意点として、顔がはっきり分かる写真は避ける。「小さな手や足、後ろ姿や影だけでも伝わるのでは」と高橋さん。写真の中で名前や居住地、通園・通学先などを推測できる情報を出さないことも大切だ。

 子どもの意思を確認できる年齢なら投稿の是非を本人に確かめよう。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「写真」をもっと詳しく

「写真」のニュース

「写真」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ