選挙で候補者名に印つけるだけの「記号式投票」 開票・集計作業も簡素化するが日本いまだ行わず

2025年5月7日(水)14時30分 J-CASTニュース

選挙の投票で、候補者や政党の名前を書く「自書式投票」は、先進国では日本だけだ。候補者名に印をつけるだけで、開票・集計作業も簡素化する「記号式投票」が世界では広がっているが、日本の議員心理は保守的だ。「電子式投票」「インターネット投票」への模索も続くなか、日本の議員が新システムを受け入れる日は来るのか。

記号式投票への変更を自民党が「元へ戻した」理由

日本が20歳以上の男女に投票権を広げた完全普通選挙になったのは1946(昭和21)年だった。この時点で「自書式投票」は、有権者が同一言語で識字率も高い「恵まれた環境」にあったともいえる。しかし、さすがに書き間違いや候補者以外の余分な文字などを書く「他事記載」による無効票が多く、開票作業に時間がかかることから、1994年に小選挙区(比例代表並立)制が導入された時に、衆院選挙に「記号式投票」(事前に印刷された候補者名などに〇をつける)が導入された。

ところが、当時、政権を取り戻したばかりの自民党(社会党、さきがけと連立)内では「記号式は新しい党や人に投票が行きやすい」との導入反対論が浮上して、記号式が一度も実施されることなく廃止されてしまった。当時、選挙・投票制度の専門家は、「自書式投票が自民党に有利との根拠は全くない」とあきれ返った。

実は、「記号式」はこれより30年余り前の62年に、知事選や首長選など地方選挙では導入が可能とされていた。ただ、実際に条例を作って導入する自治体は多くなかった。当時の朝日新聞は、「官僚の事なかれ主義と現役議員のエゴイズムだ」と批判していた。有権者の便利さより、選挙される側の議員の思惑が優先されたのである。

電子投票、ネット投票へ模索が続くが

その後、「自書式」は相変わらず続いているが、地方選挙では、記号式を飛び越えて「電子投票」、さらに「インターネット投票」への試みが進んでいる。

「電子投票」は、2002年に岡山県新見市で初めて実施され、その後10団体25回行われた。しかし、03年に岐阜県可児市の市議選で電子機器のトラブルが原因で選挙無効となったことで、16年以降は実施団体がなくなった。ただ、24年末になって大阪府四条畷市で8年ぶりに復活、開票作業の時間や人員を大幅に縮小した。

電子化の先にあるゴールは、自宅や職場、海外など、どこからでも投票できる「ネット投票」だ。高齢者や障がい者、過疎地域での投票可能性を大幅に拡大したうえ、若者の投票率をアップすることも期待されている。ただ、セキュリティー面で、「不正投票・集計防止」「投票内容の秘密保持」など、ハードルは少なくない。

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)

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