利益供与、広告募集や経営相談など複数の取引でも…空港ビル内部調査 

2025年5月9日(金)7時43分 読売新聞

 羽田空港ターミナルビルのマッサージチェア(MC)事業を巡る疑惑で、MC事業とは別に、広告募集や経営相談といった複数の取引でも、古賀誠・元自民党幹事長(84)の長男(52)が経営するコンサルティング会社「アネスト」(東京)に利益供与をしていた疑いのあることが、「日本空港ビルデング」(東京)の特別調査委員会による内部調査でわかった。(糸井裕哉、福益博子)

 内部調査では、空港ビル社の鷹城勲会長(81)、横田信秋社長(73)ら幹部や担当者らへの聞き取りのほか、パソコンや携帯電話について、消去された電子データを復元する「デジタル・フォレンジック」も実施した。アネストに対しても調査への協力を求めたが、回答がなかったという。

 関係者によると、アネストは2008年12月、空港ビル社の子会社「ビッグウイング」(東京)との間で、空港内に掲示する広告を巡る代理店契約を締結。この際、アネストは、掲示場所を提供するビッグ社に支払う代金を、相場の半額程度に割り引いてもらう優遇を受けていた。

 その上、アネストは、広告を出す企業から受け取る「掲出料」について、代理店契約で決められた定価の10倍を超える金額を提示していたケースもあったとみられる。ビッグ社が16年に税務調査を受けた際、国税当局から「アネストは広告主から定価を大幅に超える掲出料を受け取っている」と指摘されたという。

 広告取引を巡っては、アネストからビッグ社への支払い遅延が慢性化していた。20年度以降、アネストの滞納は3年連続で300万円以上に上り、今年3月時点での未払い分は1900万円を超えているという。

 ビッグ社の幹部は調査委に対し、「アネスト以外の代理店に割引したことはない」と証言。調査委では「合理的な理由なく長男に利益を与えた」と認定する見通しだ。

 一方、内部調査では、長男に紹介された別のコンサル会社を介して、空港ビル社からアネストに金銭が流れたケースも発覚した。

 空港ビル社は13年4月、空港事業に関する経営相談業務をこのコンサル会社に委託する契約を結んだが、業務に実態はなく、空港ビル社から支払われた委託料は、最終的にアネストに渡っていたという。

 当時、空港ビル社の社長だった鷹城氏が「長男に紹介された」として社内に契約締結を指示していた。調査委は「委託契約は、アネストに金銭を支払うための形だけのものだった」と認定するとみられる。

MC事業、別の供与疑い

 このほか、2億円近くの利益供与が判明しているMC事業を巡っても、長男側に対する別の利益供与の疑いが判明した。

 ビッグ社は23年6月、羽田空港第3ターミナルで行われるMC事業を巡って、長男が紹介したMC会社との委託契約を締結した。このMC会社に対しては24年12月に第1、第2ターミナルのMC事業についても契約するなど、取引を拡大した。

 調査委はMC会社について、22年8月に設立されたばかりで羽田空港のMC事業を適切に運営できる保証はなかったものの、横田氏らは十分に検討しないまま、長男の求めに応じて契約を結んだと認定。ビッグ社幹部が「長男側に金を流すための会社と認識していた」と説明していることも踏まえ、「長男への利益供与が目的で、極めて不適切だ」と指摘する見通しだ。このMC会社とは現在も取引が続いているという。

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