「コスプレで万博に行くなんてモラルがない」と批判殺到…“万博コスプレ”で炎上した女性が明かす、コスプレ姿で万博を訪れた“本当の理由”

2025年5月18日(日)12時0分 文春オンライン

 開催中の大阪・関西万博にコスプレで来場したことが、ネット上で賛否両論を呼んでいるコスプレイヤーの鹿乃つのさん。


 万博の公式サイトには「持込禁止物に該当しないものであれば、装着しての入場は可能」と記載されているが、なぜ彼女は批判されることになったのか。そもそも彼女はなぜコスプレをして万博を訪れたのか。話を聞いた。(全2回の1回目/ 2回目に続く )



コスプレイヤーの鹿乃つのさん(写真=本人提供)


◆◆◆


コスプレイヤーさんを生で見て、そのキラキラに圧倒された


——鹿乃さんは、そもそもコスプレをいつ頃からやられているんですか。


鹿乃つのさん(以下、鹿乃) 2023年の夏コミからです。一番最初は初音ミクのコスプレでした。北海道から上京してきたのですが、東京ではいろいろなイベントがあるじゃないですか。今までネットでしか見る機会のなかったコスプレイヤーさんを生で見た時に、そのキラキラにすごく圧倒されて。


 最初は「私がキャラクターになれるわけがない」と思っていたんですけど、何回か行くうちに「私もやりたい」という思いが強くなっていって。それで勇気を出して夏コミに参加しました。そこからは楽しくて、コスプレをするようになりました。


——鹿乃さんは2024年夏コミで、万博と同じ「ダンジョン飯」のマルシルのコスプレがバズって有名になった印象です。


鹿乃 あれがちょうど1年の節目だったんですよ。コスプレ界隈で嫌なことを見聞きする機会が多くて、コスプレを辞めようと考えていた時期でした。


 でも、その夏コミでコスプレの面白さに改めて気付かされたんです。バズったからと思われてしまうかもしれないんですけど。ああした偶然性やお祭り感は貴重で楽しかったですし、なによりコスプレもコミケも大好きだって気づいて。「ああ、やっぱりもう少しやりたいな」と。


「あのコスプレ、あり得なくない?」更衣室で聞いた気持ちの悪い話の内容


——お話にあった「嫌なこと」とはどんなものなんですか。


鹿乃 まずコスプレの更衣室にいると右から左から気持ちの悪い話がすごく聞こえるんですよ。「◯◯ちゃんのあのコスプレ、あり得なくない? あの写真も加工エグ(笑)」と悪口を言ったと思えば、トイレから戻った〇〇ちゃんに「おかえりー!」みたいなシーンとか。身内で目配せしながら他のコスプレイヤーを見て「あれヤバ」とクスクス笑ったり。それがSNSでも毎日のように繰り広げられています。


 私自身が困らされたこともたくさんあります。コスプレイヤーの子とお泊まり会を予定していたら、インフルエンザを理由に当日ドタキャンされて。ただその子は翌日コンカフェにゲスト出勤していたのでひと言欲しかったと伝えたら、その子が周囲のカメラマンさんに「具合が悪かったのに文句を言われた」と話していたようで、次のイベントからカメラマンさんたちに無視されたこともありました。


 他にも、私からイベントのチケットを無料で譲ってもらえなかったことに腹を立てた先輩コスプレイヤーが「某マルシルでバズった人はレイヤーの住所をばらして歩くから気をつけてね」と嘘をSNSに書き込んだり、先輩男性コスプレイヤーにありもしないことを次から次に書かれて、警察に相談したこともありました。


「いいね稼ぎのためじゃない」コスプレをして万博に行ったワケ


——しかしその後も鹿乃さんはコスプレ活動を続け、そして万博にもマルシルのコスプレで行きます。


鹿乃 もともと関西に旅行に行く予定があったんです。万博についてはSNSで「行ったら楽しかった」という声がある一方、「あれがダメ」という批判も多くて、行くかどうか悩んでいました。


 そんな中、万博がコスプレOKになったという記事を見て、ただの私じゃなくマルシルがいろいろなところに遊びに行ったよ、という写真が撮れるんだったら楽しいし、貴重な体験だなと思って行きました。


 SNSでいいねが稼げるからコスプレで行ったと言われるんですが、それは誤解です。いいねは、私がいい報告をした時に友達が「よかったね」と笑ってくれるような、そういう副産物だと思っています。


 万博の楽しい空気感を伝えることは重視していましたが、撮影も旅行の記念写真を撮るのと同じようにスマホで撮っていて、ライトを立てたりはしていません。


スタッフの方からは「なんの作品ですか?」と…万博会場でのコスプレへの反応


——万博について書いたnoteも話題になりました。


鹿乃 コスプレイヤーでもそれ以外でも、コスプレで万博に行ってみたい人の不安や疑問を解消できたらなという思いでした。


 私も感じていた、「万博は批判も多いし楽しくないのかな。コスプレで万博を楽しむには特別なチケットが必要なのかな」という不安を乗り越えるきっかけになってくれたらと思って書きました。


——実際、万博は楽しかったですか。


鹿乃 コスプレ抜きにしてもすごく楽しい場所でした。今までの私みたいにSNSの批判を見て、行くのを悩んでいる人がいたらもったいないと思います。


——万博では、鹿乃さんのコスプレに対して周りはどんな反応だったんですか。


鹿乃 会場ですれ違った方が「エルフいる?」となって、追いかけて写真を撮りに来てくれたり、万博のスタッフの方が「なんの作品ですか?」「どういうキャラクターなんですか?」って声をかけてくださって。「『ダンジョン飯』っていうんですよ。アマプラで見れますよ」と話したりしていました。


批判が広がるようになった最初のきっかけ


——現場の反応は好意的だったんですね。当初はXでも鹿乃さんのコスプレに好意的な反応が多かった印象ですが、どこから流れは変わったのでしょうか。


鹿乃 Xに「愚痴アカウント」という批判を専門にするアカウントがあるんですが、その中でもコスプレ専門のアカウントに目をつけられたのが、批判が広がる最初のきっかけだったと思います。


 批判で多かったのは「コスプレで万博に行くなんてモラルがない」というものでした。万博の公式サイトに「持込禁止物に該当しないものであれば、装着しての入場は可能です」と書かれているんですけど、批判側は「更衣室やロッカーがない=暗にコスプレは歓迎されていない。可能と言われたからといってどこでもコスプレするなんてモラルや倫理観に欠けている」「私たちが苦労して築いてきたルールを破るな」という主張でした。


——日本国際博覧会協会の担当者も、毎日新聞の取材に対し、会場はルールを守ればコスプレ禁止ではないと答えています。公式サイトには「会場内の公序良俗に反する服装や平穏を乱す行為は禁止」とありますが、マルシルのコスプレは過度な露出でもありません。


鹿乃 胸の露出が激しいような卑猥な衣装のキャラクターであったりは、さすがにダメだなというところだと思います。


「そもそもコスプレが嫌いな人もいる」という批判に思うこと


——そもそもコスプレが嫌いな人もいるから、そうした人に配慮して万博にはコスプレで来るべきではないという批判もありました。


鹿乃 そうやって批判する人たちの中にも、名古屋の「世界コスプレサミット」や池袋の「アコスタ」に参加している人もいると思うんです。


 もちろん一般の方に混ざってコスプレをすることで我慢させちゃう人もいるかもしれないんですけど、もしそこを考えるのであれば、万博以外の市街地、住宅街でのコスプレイベントについても広い課題として考えなきゃいけないと思うんです。


——「ダンジョン飯」のキャラクターという版権もののコスプレで著作権侵害という批判もありました。


鹿乃 実際の是非については自分には判断できかねない。著作権侵害は基本的に親告罪なので、版元から言われたら対処はしなければいけないと思います。


「火消しをしなきゃ」「誤解を解かなきゃ」と焦ってしまい……


——鹿乃さんは自身を批判する投稿に対して、積極的にリプライされています。それはなぜですか。


鹿乃 今回の騒動の中でも話し続けていたのにはいくつか理由があります。1つは批判側の方とも対話をしたかったんです。今批判をしている人にもその感情に至った経緯がある訳で、それを知ればお互いわかりあえるところがあるんじゃないかと思っていて。


 この間、Xのスペースで万博コスプレ批判側の方々と話したんですけど、話した方のほとんどはその後に「応援してます」とDMをくださったんです。だから「話したらわかるとか期待をしすぎだ」と結構言われるんですけど、そこは諦めきれなくて。


 もう1つは万博のことで批判を受ける中で「火消しをしなきゃ」「誤解を解かなきゃ」と焦って投稿していたところがあります。


 もともと私自身は議論や意見交換が好きで。普段は気をつけていますが、それでもすごく強い言い方に映るというご指摘をいただいたことがあります。そういう私の気質が焦る精神状態と相まって、すごく悪い方向に作用したなと思っています。


 本当は私がもっとうまく話せればよかったのですが、「万博が失敗したらお前のせいだ」「万博に迷惑コスプレイヤーが来て国際問題になったらお前のせいだ」とか、全ての責任を押し付けられる中で、「冷静な判断ができないのだったら投稿をやめよう」とも判断をすることができず、ただただ「なんとかしなきゃ」が先行してしまいました。


写真提供=鹿乃つのさん

〈 “万博コスプレ”で炎上→「はよ死ね」「ゴミ」と誹謗中傷の嵐→殺害予告まで…「心身の限界です」女性コスプレイヤーが語る、“ネットリンチ”の恐怖 〉へ続く


(徳重 龍徳)

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