「20歳未満で未婚」の条件撤廃、相馬野馬追に20年ぶり出場の細川さん「担い手になれて誇り」
2025年5月20日(火)16時0分 読売新聞
本番に向け、早朝の馬場で練習に励む細川さん(4月27日、福島県南相馬市)
24日に始まる福島県相馬地方の伝統行事「相馬
日が昇り始めた同市の牧場で4月27日午前5時、細川さんは愛馬にまたがって馬場を駆けていた。「無事に
細川さんは相馬地方の飯舘村出身。牧場を営む両親のもと、子どもの頃から馬の世話や乗馬が当たり前の環境だった。
相馬野馬追の初陣は小学1年の時だった。大人に交じり、
翌年から年齢制限で出られなくなり、騎馬武者に馬を貸し出すサポート役に回った。しかし、出陣の合図となるほら貝が吹き鳴らされると、悔しさがこみ上げた。「やっぱり出たい。男に生まれたかった」
1000年以上続くとされる相馬野馬追は長らく、男性だけの行事だった。女性への門戸開放は1947年頃。参加に制限はなかったが、84年に「化粧をしない」「未成年の未婚者」という条件が明文化された。「議事録などが残っていない」(運営団体)として理由は不明だ。
今回の条件撤廃の背景には、地域の過疎化がある。出場者は95年の614人をピークに減少傾向で、昨年は382人となった。男女平等の観点も含めて条件見直しを求める声が高まり、運営団体は今年2月に撤廃を決めた。
細川さんは「伝統を絶やさないために成人女性の出場解禁は必要なこと。今の時代にあった魅力が生まれるはず」と歓迎する。
「今年の野馬追が終わったら…」
細川さんにとって、今回の出場にはもう一つ、大きな意味がある。約20年にわたり内縁の関係にある男性(48)がいるが、「未婚であれば、いつか野馬追に出られるかもしれない」との思いから、結婚せずにいた。「今年の野馬追が終わったら婚姻届を提出しよう」。2人でそう話している。
細川さんは「野馬追の担い手になれることは誇り。甲冑姿で馬に乗ると侍になれる」と本番を心待ちにしている。
相馬野馬追は24〜26日の日程で、甲冑競馬や打ち上げられた旗を騎馬で奪い合う「神旗争奪戦」などが行われる。運営団体によると、女性は40人が出場する予定で、20歳以上は細川さんを含めて8人だという。