鳥取県「中の人」バズらせプロジェクト…若手職員25人が公式SNS運用、万博会場で鍛錬中
2025年5月22日(木)14時16分 読売新聞
河森さん(左)に尋ねる秋山さん(右)と井上さん(大阪市此花区で)=鳥取県提供
表に出ずに、団体などが運営する公式SNSで投稿する役割の人は「中の人」と呼ばれる。鳥取県は、県公式SNSを運用する、そんな「中の人」の若手職員25人の育成に取り組んでいる。大阪・関西万博を主な実践の場として「バズる(話題になる)」投稿のコツを徐々に体得。閲覧数が50万回を超える投稿もあり、魅力発信の戦力となっている。(山内浩平)
「人と自然はどのように関わっているか」「人は自然の恵みを得て共存している」
4月30日にあった、県と、「マクロス」で知られるアニメ監督の河森正治さん(65)が手がけるテーマ館「いのちめぐる冒険」の連携協定の調印式。とっとり未来創造タスクフォースの秋山遼佳主事(28)と広報課の井上敏宏主事(30)が河森さんに尋ねると、キーワードとなる言葉が返ってきた。2人は「いのちは合体・変形だ!」と調印式の様子を添えて、公式X(旧ツイッター)に投稿した。
県は万博を「鳥取の魅力を世界に発信する数十年に一度のチャンス」と位置付ける。「『中の人』育成プロジェクト」は、若手職員が発信のコツやスキルを身につける場として、25人が参加。2人1組で万博会場で勤務し、県ゾーンや県関連のイベントの様子をSNSで発信する。
5月19日には、「バルト館」(ラトビアとリトアニアの共同出展)に飾っていた万博公式キャラクター「ミャクミャク」のぬいぐるみの窃盗被害を受けて、鳥取砂丘の砂でできたミャクミャクの置物を寄贈したと投稿。すると、57万回の閲覧数を記録した。
「フォロワーの立場で、見たくなったり行きたくなったりする情報を、タイムリーに、批判も前向きに受け止め、楽しんで発信する」。県がSNS活用のポイントとする考え方だ。行政が運用するアカウントは一方通行な情報発信になりがちだが、「バズる」投稿にはフォロワーと対話する意識が重要だという。
秋山さんは「行政目線だと文章が長く、堅くなる」と難しさを感じつつ、「双方向のやりとりとタイムリー性を意識した。見た人が来県したくなる投稿をしていきたい」と話す。
今後、県がヨルダン館やサウジアラビア館と結んだ「サンド・アライアンス」(砂同盟)に関連した企画など若手の視点で情報発信企画にも取り組む。
県広報課の谷口健一課長は「タイムリーな情報を発信し続け、県庁として発信力を強化していきたい」と話している。
「バズる」投稿のコツは
県の公式SNSを運営する広報課の鷲見俊祐さんと、写真の撮影を担当する黒崎智治さんに「バズる」投稿のコツを聞いた。
——投稿をバズらせるには。
鷲見さん「行政の投稿は一方的になりがち。リプライや『いいね』といった反応を通じて、対等な立場でユーザーと交流することが大切だ」
黒崎さん「写真に入れられる情報を整理することが大切。背景にも発信の意図を持った被写体を入れることでうまく伝わる」
——メンバーへの期待は。
鷲見さん「おもしろい投稿のまねをすると、身につく。次の投稿を見たいと思わせる発信をしてほしい」
黒崎さん「伝えたいものに、漫然と勢いでシャッターを切るのではなく、一度立ち止まって発信の意図を考えて取り組んでほしい」