タワマン火災は消火や救助が困難、どう避難すべき?

2025年5月22日(木)13時16分 読売新聞

東京・湾岸エリアのタワーマンション群(2024年3月)

 大阪市天王寺区で1月、27階建てタワーマンションの中層階が燃えて住人の70歳代夫婦が亡くなった火災は、高層階で暮らす住人が避難する難しさを浮き彫りにした。全国でタワーマンションは増え、住人も高齢化しているとされ、専門家は「住人が避難に慣れるための取り組みが必要だ」と指摘する。(川本一喬)

避難したのは住人の4割のみ

 「妻は足が悪く、階段で避難するのは無理だ。エレベーターが止まったら、どうしようもなかった」

 火災が発生したマンションの21階に住む80歳代男性は、そう振り返る。火災時にエレベーターは停止することも多いが、この時は動いたため、何とか避難することができたという。

 天王寺署やマンション管理組合によると、火災は1月18日午前5時頃、13階の一室で発生し、住人の70歳代夫婦が一酸化炭素中毒で死亡した。マンションに居住する約120人のうち、1階ロビーに避難したのは4割の約50人。早朝の発生だったため、自室にとどまった住人が多かったとみられる。

 タワーマンションは、住戸ごとに耐火構造の壁や床で区切られているが、延焼が拡大してさらに被害が出ていた恐れもある。

根強い人気

 都市部を中心に、利便性の高いタワーマンションの人気は根強い。

 不動産鑑定会社「東京カンテイ」の調査では、20階建て以上のマンションは増加が続き、昨年末現在、全国で1561棟の約41万戸となり、このうち府内は282棟の約7万戸だった。

 一方、総務省消防庁によると、2023年に11階建て以上のマンションでは509件の火災が発生した。

 また、住人の高齢化も進み、円滑な避難が課題となる。東京都新宿区が20年にまとめたタワーマンションの実態調査(22棟回答)では、世帯主が65歳以上の割合は「5割以上」としたのが2棟、「3割程度」だったのが11棟に上った。

「訓練の参加者を増やす工夫を」

 それでは、火災時にどう避難すべきなのか。

 東京理科大火災科学研究所の松山賢教授は「焦らず階段を下りるのがいい。ベランダの避難はしごを使えることも知っておく必要がある」と助言する。

 その上で、階段を下りるのが難しい高齢者や障害者については、排煙設備が整った「特別避難階段」の利用を呼びかける。建築基準法で15階以上の各階に設置が義務づけられており、避難することで一定の安全性が担保されるという。

 松山教授は、避難訓練を年に1回は実施することも重要とし、「訓練の参加者を増やすための工夫も求められる」と指摘する。

はしご車が届くのは16階程度まで

 タワーマンションで火災が発生した場合、消火や救助の活動も困難を伴う。

 大阪市消防局によると、配備するはしご車が届く高さは50メートルほどで、マンションの16階程度に相当。より高い上層階には、消防隊員が非常用エレベーターなどを使って駆けつける。

 消防法では、7階以上の建物などには、地上から高層階に水を送る連結送水管の設置が義務づけられ、天王寺区の火災でも活用された。11階建て以上のマンションには、スプリンクラーの設置も必要とされ、火元の13階を中心に作動したという。

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