適性評価制度 円滑な運用で情報連携深めよ
2025年5月24日(土)5時0分 読売新聞
政府が保有している半導体や人工知能(AI)といった先端技術に関する情報を扱う人に資格を与えて、外部への
経済安全保障にかかわる機微な情報を同盟国や友好国と共有し、連携を深めていきたい。
政府職員や民間企業の社員を対象に、機密情報を扱う人に資格を与える「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度は、昨年5月の関連法の成立で導入が決まった。1年間の準備期間を経て、現在、運用段階に入っている。
政府は既に、各省庁や企業が提出したリストに基づき、機微な情報を扱う候補者を選び、本人の同意を得たうえで身辺調査に着手している。2025年度中に数千人に資格を与える予定だという。
対象者は、近親者を含めて国籍や犯罪歴、借金の有無などを、A4判35ページにのぼる質問票に回答しなければならない。内閣府がその内容を確認し、信頼できるとみなせば資格を与える。
主な先進国の中でこうした制度を持っていなかったのは日本だけだった。このため欧米からは、機微な情報が日本から漏れかねない、と懸念する声が出ていた。
近年は軍事と民生双方で活用できるデュアルユース(両用)の技術が広がっている。
適性評価制度を生かし、先端技術を活用した装備品の国際共同開発などに積極的に取り組むべきだ。そうした機会の拡大を経済成長につなげていきたい。
ただ、適性評価制度を運用する際には、官民ともに細心の注意を払う必要がある。
対象者の中には、身辺調査の結果、何らかの問題がみつかり、資格が認められない人も一定数出てくるだろう。
そうした人が昇進する際に不利に扱われたり、望まない部署に配置転換されたりするようなことになれば、資格の取得を希望する人自体が減りかねない。
その種の個人情報が広まることがないよう、情報の管理を徹底することが重要だ。
身辺調査を断った人への対応も、慎重を期さねばならない。
政府は、調査に同意しなかった人に対しては、機微な情報を扱う部署からの配置換えを容認するよう求める「不同意書」への署名を義務づけている。だが、これでは身辺調査を断りにくくなる。
仮に配置転換の必要が生じた場合でも、人事評価や配置換えで不利に扱わないことが大切だ。