「防災庁」誘致へ12道府県市など名乗り…地方創生・防災人材育成を期待
2025年5月27日(火)5時0分 読売新聞
政府が2026年度中の設置を目指す「防災庁」を誘致する動きが、全国の県や市などで活発化している。石破首相が、地方に防災庁の分局を設置する考えを示しているためだ。今後予想される大規模災害時のリスク分散につながるなどとして、これまでに12道府県市と、近畿地方の府県などでつくる関西広域連合が手を挙げている。
「膨大な教訓や知見を国に還元するのは私たちの責務だ」。福島県いわき市で今月7日、防災庁の市内誘致を目指す期成同盟会が発足し、会長に就いたいわき商工会議所の小野栄重会頭が、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故を経験した福島県浜通り地方に設置する意義を強調した。
人口減少に歯止めをかけるきっかけにしたいとの狙いもある。小野会頭は「防災を切り口に人やお金の流れを変えて地方創生の成功モデルにしたい」と力を込める。
能登半島地震の被災地も名乗りを上げている。
石川県の馳浩知事は今月12日、東京・霞が関で防災庁設置準備担当相の赤沢経済再生相と面会し、石川県小松市の小松空港周辺への設置を求める要望書を手渡した。
要望では、小松空港が日本海側の中央に位置し、太平洋側と相互補完できることや、能登半島地震で物資や人員の輸送を行った航空自衛隊小松基地との共用空港である点などを強調する。馳知事は面会後、記者団に「訓練、教育、バックアップ機能にふさわしい地政学的な立地だ」と述べた。
富山県の新田八朗知事は昨年12月、首相官邸に石破首相を訪れ、県内設置を直談判。「日本海側のため、南海トラフ地震のリスク分散になる」「能登半島地震で被災県・支援県両方の立場で経験や教訓の蓄積がある」などの利点を挙げた。1月に伊東地方創生相、4月には赤沢担当相を訪問し、県庁近くの「県防災危機管理センター」を移転候補地として提示した。
このほか、「産官学連携が進む」「防災人材の育成が期待できる」などとして、北海道や岐阜県、兵庫県などが表明。仙台市は、今月中に国に提出する政策要望書の中で、設置を求める項目を盛り込む。
防災庁は石破首相の肝いり政策で、昨年11月に「設置準備室」が内閣官房に発足。内閣府防災関連の今年度予算を昨年度から約2倍となる146億円とし、職員数も110人から220人に増やした。
石破首相は昨年12月の記者会見で「地方への支分局的な発想は当然あってしかるべきだ」と述べ、誘致合戦が始まった。政府は、6月中に組織の概要を発表する予定だ。