高さ2mの壁に囲まれた土地に30棟近いアパートやスーパー・コンビニ…詐欺拠点は「街」、自首の男が明かす
2025年5月27日(火)7時13分 読売新聞
福岡県警察本部
男4人をかけ子勧誘容疑などで逮捕
カンボジアを拠点とする特殊詐欺グループの「かけ子」の仕事を紹介したなどとして、福岡県警は26日、福岡県の男4人を職業安定法違反(有害業務への職業紹介)や詐欺未遂容疑で逮捕したと発表した。同国でかけ子として加担した男が帰国後に自首。詐欺拠点について「壁で囲まれた土地に30棟近いアパートが密集してスーパーなども並んでいた」とその実態を警察に明かしたという。
県警によると、数十万円の借金を抱えていた男は「カンボジアで稼いでこい」などと3容疑者側から言われ、借金返済のため、渡航を決意。1月13日に出国し、首都プノンペンからタクシーで2時間半ほど移動し、森の中の一本道を抜けると高さ2メートルほどの壁が見え、入り口に拳銃を持った警備員数人がいた。
持ち物を検査された後、中に入ると「街」が広がっていた。30棟近くのアパートなどが立ち並び、飲食店やスーパー、コンビニなどもあった。10階以上のビルが建設中で、アジア系だけでなく、様々な人種の人や車が行き交っていた。
男は4階建ての建物に入った。1〜3階は居住スペースで4階が「仕事場」だった。4階フロアには約40の防音の個室ブースがあり、被害者の住所や氏名、電話番号、口座情報が書かれた名簿が置かれていた。かけ子は名簿に基づき「警視庁捜査2課」、「長野県警」、「検察」の3役に分かれ、電話やLINEのビデオ通話を使って、「資金調査できないと逮捕される」と振り込みを求めていたという。かけ子のほか、通訳や食事の用意を担当する人など中国人や日本人の十数人がいた。
男は1月17〜21日、1日十数件の電話をかけた。同19日の日曜日は「休日」で、「街」を歩くことができ、スーパーでビールとハンバーガーを買ったが、出入り口には警備員がおり、「軟禁状態だった」という。
男は元々、一時帰国を前提に渡航しており、1月22日に帰国した際、「二度としたくない」と福岡県警に自首。3月に詐欺未遂容疑で逮捕された後に処分保留となり、現在は任意で捜査を受けている。
特殊詐欺事件を巡っては、近年、カンボジアのほか、フィリピンやタイなどの拠点が摘発され、日本人の事件への関与が疑われるケースが相次いでいる。県警は今回の男の供述内容を警察庁に情報提供した。