「ほら見て。入った。入った」目の前でレイプされているのに「母は助けてくれなかった」…男女関係なく性的虐待する「悪魔のような父親」のもとに生まれた姉弟のその後
2025年5月29日(木)14時20分 文春オンライン
〈 「弟の遺体は山の中で見つかりました」姉は生理のお祝いの日にレイプ、弟は殴られながらレイプ…男女関係なく「性的虐待する父親」のもとに生まれた姉弟の悲劇 〉から続く
「弟の遺体は、住んでいる地域とは違う場所の山中で見つかったんです。一人で練炭を使って亡くなっていました」
幼い頃から父親に性的虐待を受けていた姉弟。その心理的な後遺症は、大人になったあとでも続き、ついに弟は自殺を選択してしまう…。2人の父親はどんな人間だったのか? 弟を逃がそうとした姉が取った行動とは? フリーライターの渋井哲也氏の新刊『 子どもの自殺はなぜ増え続けているのか 』(集英社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/ 最初 から読む)

◆◆◆
「母には、父を殴って殺してほしかった」
「隣に座っていた母に、父が『ほら見て。入った。入った』と言ったんですが、母は『何をしてるの?』と笑って見ているだけ。母には、父を殴って殺してほしかったと、今では思います。性交はほぼ毎日で、終わったあとは必ず『誰にも言うんじゃないぞ』と念を押されました」
弟だけでなく、リツコ自身も死にたいと思ったことがある。
「『死にたい』とか線路に飛び込みたいって気持ちにはなったことあります。もうこのまま殺してくれって思いました」
児相に保護されてもすぐに戻されてしまう。
性的虐待だけでなく、身体的虐待も悲惨だったという。
「虐待という虐待はすべてやられました。腕を縛られて紐で吊るされて、ベルトとか濡れたタオルとか、洗濯機のホースとかで殴られました。そうすると傷ができるので、その部分に酢やしょうゆをかけられました。すごく痛かった」
「そしてうつ伏せにさせられて、他人から見えない背中やお尻とかを、布団叩きで殴られました。下着を全部剝ぎ取られ、殴られ続けました。理由は何もありません。ひたすら叩かれていました。泣くと、『うるさい。黙れ。声を上げるな』と言われて、さらに殴られました。父が疲れると、弟や妹に『やれ!』と命令して、やらせていました」
こうした状況でリツコは弟を逃したことがあった。
弟を逃がそうとしたけれど…
「“父の手が届かないところへ”と思ったんです。そのため弟は県外まで家出をしたこともありました。児相に保護されても、当時は親の力が絶対だったので、家に戻ってきます。すると、父が殴って、また逃げての繰り返し。ある日、裸で立たされていた弟は、近所の洗濯物を盗んで逃げたんですが、窃盗で捕まりました。父から逃げられるなら少年鑑別所に送られてもよかったんだと思います」
弟の虐待に学校の先生が気づいたときもあった。
「私が4年生ぐらいのとき、弟の担任の先生が気がついたんです。性的虐待以外にも、タバコを押し付けられたりしていましたので、腕に根性焼きのような跡がありました。その先生がある日の夕方、家に来て、両親に話をしたことがありました。私と弟を養子にしたいと言ったんです。もちろん父親が追い返しました。その後、その先生とは連絡が取れなくなりましたね」
◆◆◆
【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556 (午前10時〜午後10時)、 0120-783-556 (午後4時〜同9時、毎月10日は午前8時〜翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 (対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338 (24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは 0120-279-226 (24時間対応)
(渋井 哲也/Webオリジナル(外部転載))