厚木基地騒音訴訟、国に59億円の賠償命じる判決…自衛隊機と米軍機の飛行差し止めは認めず

2024年11月20日(水)23時34分 読売新聞

米軍・海上自衛隊が共同使用する厚木基地(2021年10月、読売ヘリから)

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 米軍と海上自衛隊が共同で使う厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)の周辺8市の住民約8700人が国に対し、騒音被害の損害賠償などを求めた「第5次厚木基地騒音訴訟」で、横浜地裁(岡田伸太裁判長)は20日、騒音の違法性を認め、国に計約59億円の賠償を命じた。自衛隊機と米軍機の飛行差し止めについては認めなかった。

 厚木基地を巡っては、騒音の大きな原因となっていた米軍の空母艦載機が2018年に岩国基地(山口県)への移駐を終えており、訴訟では以降の被害をどう評価するかが争点となった。

 判決は、航空機の騒音量を評価する国際基準「WECPNL値」(W値=うるささ指数)75以上の地域について、「社会生活上、受け入れられる限度を超えた被害が生じている」と判断し、指数に応じて賠償額を1人月額5000円〜2万5000円と設定。4次訴訟の同4000円〜2万円より増額した。

 岡田裁判長は移駐前分の賠償は原告全員に認めたが、移駐後の騒音被害は軽減し、W値75以上の区域に住む原告は4割に減少したと指摘。それ以外の住民には賠償を認めなかった。

 原告らは、住民の不快感に基づく騒音の新たな科学的知見で評価すれば被害区域は大きく変わらないと訴えたが、判決は「専門家の間で十分に検討され、一定の方向性が示された知見とは言えない」として採用しなかった。原告が求めた将来分の賠償も認めなかった。

 自衛隊機の運航に対し、原告は飛行差し止めを求めたが、岡田裁判長は「国の平和と安全、国民の生命や財産を保護する観点から極めて重要な役割を果たしている」として訴えを認めなかった。米軍機も「国に権限がない」として過去の判決と同様、請求を却下した。

 自衛隊機の飛行差し止めは4次訴訟の1審と2審で、夜間・早朝に限り認められたが、最高裁が2016年、自衛隊の公益性などを踏まえて請求を棄却していた。

 閉廷後、原告側弁護団の関守麻紀子弁護士は「移駐後の騒音の評価について、裁判所が全く理解していない不当な判決だ」と非難した。防衛省南関東防衛局は「判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分検討の上、適切に対応していく」とコメントした。

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