やらないといけないと思っているのに無気力な状態が続いてしまう。それ実は「アパシーシンドローム(無気力症候群)」では?
2024年12月15日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン
やらないといけないと思っているのに無気力な状態が続いてしまう。それ実は「アパシーシンドローム(無気力症候群)」では?
すべてがめんどくさくなる、やる気やモチベがなくなる「アパシーシンドローム(無気力症候群)」とは?それを語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
Photo: Adobe Stock
すべてがめんどくさくなる
「何をするにもめんどくさい」「やる気が全然出ない」
仕事や学校に通っていて、ついつい日常がイヤと感じることは誰にでもあります。
しかし、これが長期間にわたって続き、昔のように仕事や勉強に身が入らなくなったり、ふつうにできていたことができなくなってしまう。
もしかして、それは「アパシーシンドローム(無気力症候群)」と呼ばれる状態のせいかもしれません。
この記事では、そんなアパシーシンドロームの特徴や原因、対処法について詳しく解説します。
アパシーシンドロームとは?
アパシーシンドロームとは、仕事や勉強など、やらないといけないと思っているのに無気力、無関心な状態が続いてしまうことを指します。
以下のような症状が特徴的で、
● やる気の低下:これまで興味を持っていたことに対しても、何の意欲も湧かなくなる。●感情の鈍麻:楽しい、悲しいといった感情の変化が少なくなる。● エネルギーの喪失:何をするにも疲労感を感じ、動き出しが億劫になる。● 先延ばしが多くなる:やらないといけないと頭ではわかっているのに手がつかない。● 集中力が低下する:勉強や仕事などでミスが多くなってしまう。
こんな状態が続き、自分をコントロールできなくなることをアパシーシンドロームと呼び、自己嫌悪や罪悪感が募り、さらなる無気力感を招く悪循環に陥ってしまうことがあります。
なんで起こるの?
基本的には日常生活の中に起こっている問題や、ストレスによってひどく傷つき社会が怖くなったり、一生懸命に仕事や学業を頑張りすぎて疲労感を感じるようになったりと様々な原因が考えられます。
1.過剰なストレス 仕事や人間関係、学業などで過度なストレスを抱えたことで、感情が不安定になったり社会が怖くなることで無気力感が現れる。
2.燃え尽き症候群(バーンアウト) 一生懸命に頑張りすぎた結果、精神的に疲弊し、やる気が急激に失われる。 特に、大学受験や昇進など、目標を達成した後や、期待が報われないときに起こりやすい。
3.身体疾患による影響 脳梗塞や認知症、頭部の外傷など、脳への器質的なダメージによって脳のバランスが崩れ、引きこもりがちになってしまいます。
とくに怖いのが3番で、無気力ややる気がなくなることを放置することで、恐ろしい病気が起こっているのに見逃してしまうことなんかもあるのです。
アパシーシンドロームへの対処法
アパシーシンドロームを乗り越えるためには、まず自分の状態を客観的に見つめ直し、原因に応じた適切な対処を行う「メタ認知」が大切です。
そのためには、無気力感の原因がストレスや過度なプレッシャーが何から起こっているのか、原因を把握することで、プレッシャーとなっている仕事量を調整したり、人間関係の距離感を見直したりすることで、心の負担を軽減するなど環境を整えることができます。
また、適度な運動を取り入れるなど、規則正しい生活を心がけることで、心身のバランスを取り戻すことも重要です。
とくに最近運動ができていない場合、これらの運動療法によってアパシーシンドロームは改善できると知られています。 1日2回、朝晩でも少し足を伸ばしてみるようにしましょう。
さらに、無理のない範囲で達成感を得られる活動を少しずつ増やすことも有効とされています。
例えば、簡単な家事をこなしたり、短時間の散歩を毎日する習慣をつけることがやる気の回復につながるでしょう。
アパシーシンドロームは、現代社会において多くの人が抱える問題です。
この問題は古い時代から人間に存在していて、「スチューデント・アパシー」などと呼ばれる時代もありました。
しかし、現代では学生だけでなく、社会人を含めたさまざまな人がアパシーシンドロームに悩んでいることがわかっています。
「何をしてもめんどくさい」「やる気が出ない」と感じたときは、自分を責めず、まずは心のケアを意識にすることが、やる気を引き出す第一歩なのです。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー本名:一林大基(いちばやし・たいき)世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10〜20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。