「わざわざ中学受験をして偏差値50レベル学校に入れるなんて」高学歴親ほど知らない"中受"本当のメリット

2024年2月16日(金)11時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/OKADA

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中学受験ブームが続いている。一方で「中学受験をさせるのはかわいそう」という声もある。プロ家庭教師集団・名門指導会の西村則康さんは「中学受験には本来メリットが多い。勉強は面白いと思って頑張っている子もたくさんいる。だが、正しい勉強法をしないと“かわいそう”なものになってしまう」という——。
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■中学受験と高校受験で「偏差値」はもはや別物


2024年度の中学入試が終わった。首都圏では小学生の5人に1人が中学受験をする時代となり、近年は、偏差値45〜55の中堅校がボリュームゾーンになっている。


首都圏で中学受験をすることは、もはや特別なことではない。しかし、それでも今もなお「遊びたい盛りの小学生に塾通いをさせるなんてかわいそう」という見方をする人は一定数存在する。また、夫婦間でも母親は中学受験をさせたいのに、父親が難色を示すケースも少なくない。


特に偏差値70超えの地方トップ校出身で、その後、自分の努力によって難関大学に進学したという成功体験を持っている父親に多いのが「わざわざ中学受験をして、偏差値50の学校に入れるなんて」という考え方だ。そういう人にとって、偏差値50の学校は、勉強ができない子が集まる学校というイメージがつきまとう。しかし、同じ受験でも、中学受験と高校受験とでは、偏差値はもはや別物であることを忘れてはいけない。


■偏差値50レベルの学校が、高校では偏差値70レベルに


偏差値というのは、そのテストを受けた人の全体に対して、自分がどの位置にいるかを表したものだ。同じテストで同じ点数をとっても、まわりの受ける人が入れ替われば、偏差値も変わる。中学受験に挑戦する子供たちは、小学校では勉強のデキる子がほとんどだ。中学受験の偏差値は、そういう優秀な子たちが集まって受けるため、当然数字もシビアに出る。


また、塾の難易度によっても、偏差値は変わってくる。難関中学を目指す子がこぞって集まるサピックス偏差値の50は、中堅校がボリュームゾーンの四谷大塚偏差値では55を超える。そして、これらの偏差値帯の学校が、高校受験では偏差値70レベルの学校に化ける。中学受験では偏差値50レベルの学校でも、その6年後の進学実績を見ると、国公立大や私立難関大への進学率は高く、決してレベルが低い学校というわけではないのだ。


■大学受験に有利なカリキュラムで学習できる


では、今なぜ中学受験熱が高まっているのか? それはあきらかにメリットが多いからだ。


中学受験をするメリットはいろいろあるが、学習面だけでも次の5つが挙げられる。


1 学習の習慣が身につく
2 多くの知識を得ることができる
3 考える力がつく
4 高校受験をしなくていい
5 大学受験に有利なカリキュラムで学習できる


まず、中学受験をする=中高一貫校へ進学する、となると、3年後の高校受験をしなくて済む。また、中高一貫校では中2までに中学校3年分の学習を終わらせることが多いので、大学入試に必要とされる高校の教育内容を4年かけて学習できる。多くの学校では、中3から高2までの3年間で高校の教育内容を終え、残りの1年間は大学受験のための勉強に充てている。つまり、大学受験に有利なカリキュラムが作られているということだ。


写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

■「詰め込み型学習」は間違った勉強法のイメージ


だが、そこに通うには、中学受験は避けて通れない。一般に中学受験の対策は、小3の2月からスタートし、そこから3年間かけて準備をしていく。小学校生活の半分、しかも遊びたい盛りの小学生に塾通いをさせ、夜遅くまで勉強させる。これが、中学受験アンチ派の中学受験に対するイメージだろう。確かに、中学受験で求められる学習内容は、小学校で習うものとは大きくかけ離れているので、その指導をしてくれる塾に通うのが望ましい。塾の授業は、学校が終わった後に行われるため、必然的に帰宅時間は遅くなる。それは、発達段階の途中にいる小学生の子供にとっては負担になるかもしれない。


しかし、目標に向かって努力をすることは良いことだし、何より毎日コツコツ勉強をすることで学習習慣が身につく。これを中学に入ってからも続けていけば、勉強で困ることはまずない。


中学受験で学ぶ内容は多岐にわたる。特に理科と社会の知識量は膨大だ。小学校課程の内容に加え、公立中学で3年間かけて学ぶ内容までほぼほぼ小学生のうちに吸収してしまう。これを「詰め込み型学習」と指摘する人もいるが、それは間違った勉強のやり方を身につけて、受験を突破した人がいう台詞だと私は思う。


■正しい勉強法を選ばないと「かわいそう」になる


また、中学入試というと、難問・奇問のオンパレードというイメージを持っている人は少なくないが、近年の入試はその中身が大きく変化している。確かに以前はそういう問題が多く見られ、できるだけ多くの知識を詰め込み、たくさんのパターンの問題を解いて鍛えるという勉強法に走りがちなところはあった。しかし、今は大学入試と同様に、思考力や表現力を重視する問題へとシフトチェンジしているため、「なぜそうなるのか?」という納得感のある理解なしに解くことはできなくなっている。


こうした「自らの頭を使って考える学習」をし続けていけば、志望校合格といった目先の目標だけでなく、問題解決力といった生涯必要となる力を身につけていくことができる。つまり、メリットだらけなのだ。


だが、それは正しく勉強すれば、の話だ。そこを間違えて、詰め込む学習やパターン学習に走ってしまうと、成績が伸び悩むばかりか、親子で疲弊する。そして、その姿は他の人から見れば「かわいそう」に映るのだ。


写真=iStock.com/takasuu
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■うまくいっている家庭は、親も一緒になって勉強を楽しんでいる


「小学生に夜遅くまで勉強をさせてかわいそう」
「小学生の子供なのに遊べなくてかわいそう」


中学受験に良いイメージを持たない人は必ずこう言う。


だが、私は本当にかわいそうなのか、疑問に思う。


まず、中学受験の勉強がうまくいっている家庭では、夜遅くまで勉強させることはない。確かに塾の帰りは20時を過ぎるが、やり方次第ではいくらでも早く寝ることはできる。そもそも、小学生の子供には8時間の睡眠は必要だ。睡眠時間を削ってまでして勉強をしたところで、集中力は続かないし、効果はない。


塾のある日は、その日授業で習ったことを復習すれば十分だ。よく勘違いされるのが、「復習」=「宿題」だと思っていること。宿題は復習をした後に行うものだ。では、復習は何をするのかというと、その日の授業で習ったことを親に教えてあげればいい。人に説明をするには「なぜそうなのか」という因果関係の理解が必要になる。


そうやって、インプットした後にアウトプットをすることで、理解が定着する。授業の話をするだけだから、夕飯の会話の中で済ますことができる。あとはお風呂に入って、寝るだけ。22時にはベッドに入れる。宿題は塾のない翌日にやればいい。または、朝型学習を取り入れるのもおすすめだ。


■放課後の実態は「ゲームやYouTube」


「遊べなくてかわいそう」と思っている人は、放課後の公園やマンションのロビーを見てほしい。おそらく小学生の子供たちがゲームやYouTubeの画面を見ているだろう。公園で鬼ごっこやかくれんぼをしたり、野山を探検したりといった親世代がイメージする小学生の子供像は、今は都会ではなかなか見ることができない。「スマホ脳」が指摘されているように、IT機器がこれだけ浸透している今、子供を自由に遊ばせると逆に勉強から遠ざけてしまうリスクがあることを知っておいてほしい。


写真=iStock.com/RicardoImagen
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だから、中学受験をさせた方がいい、と短絡的な考えを押しつけるつもりはない。先にも伝えたように、中学受験がその子にとって吉と出るか、凶と出るかは非常に紙一重であることは事実だからだ。


では、うまくいく家庭とダメにする家庭の違いはどこにあるのか?


それは、親の関わり方が非常に大きいと感じている。


■親も一緒に勉強を面白がる家庭はうまくいく


うまくいっている家庭は、親も一緒に勉強をするような雰囲気がある。子供の勉強に常に興味を持ち、面白がる。または、子供が問題に行き詰まっているときには、一緒になって考える。


「なんでこう解くんだろうね〜」
「へぇ〜、そういうことか!」
「なるほど、こういう解き方もあるんだね」
「いや〜、この問題、なかなか面白いね!」


といったように。


そんなの勉強が苦手だった私にはムリ! と思わなくていい。今の中学受験の内容は、大人でも難しいと感じるものばかり。分からなければ、分からないと素直に認め、一緒に考えてみればいいのだ。方程式や裏ワザなど大人が知っている知識を見せびらかして、わが子にマウントを取るよりよっぽどいい。


そうやって子供の勉強に興味を持ち続ける親は、「この子は今、こんなに難しい問題に挑戦しているんだな」「毎日コツコツと頑張っていてえらいな」と、子供の今の頑張りとこれまでの成長に目が向けられるようになり、自然と「本当によく頑張っているね」と肯定的な言葉をかけてあげられるようになる。また、暗記やパターン学習では決して解くことができない「今の中学受験で必要とされる力」が理解でき、「なるほど、だから大学受験に有利なのだな」と、中学受験をするメリットが納得できるようになる。


■「わが家にはわが家の方針がある」夫婦間の共通理解がカギ


一方、子供の勉強の中身より成績を見る親は、「なぜできないの?」とできていないことばかりを指摘する。そして、かつて自分がやってきた丸暗記や演習の繰り返しといった力ワザで成績を上げさせようとする。すると、子供の睡眠時間が削られ、自由裁量権が奪われ、やらされ感いっぱいの勉強になる。


うまくいっている家庭は、中学受験を通してわが子の成長を感じるだけでなく、勉強の面白さを再発見することも多い。そういう家庭は、「中学受験はかわいそうなもの」とは微塵も思わない。だから、祖父母世代や中学受験に反対のママ友たちといった外野に何を言われようと気にしない。「わが家にはわが家の方針があるのだ」と堂々としている。もちろん、夫婦間の共通理解が大前提ではあるが。


「小学生の子供に中学受験をさせるのはかわいそう」と思っている外野は、まずは今の時代の子育てを取り巻く環境をよく見てから言ってほしい。


また、偏差値にこだわっている人は、その数字の真相を確かめてみてほしい。


■「勉強は面白い」と思ってやっている子はたくさんいる


今子供に中学受験の勉強をさせているけれど、「本当にこれで良かったのだろうか」「かわいそうなことをさせていないだろうか」と心が揺らいでいる人は、今一度勉強のやり方を見直してみてほしい。そして、わが子が今どんなことを学んでいるかに興味をもってみることをおすすめしたい。


正しく勉強をすれば、中学受験は決して「かわいそう」なものではない。「かわいそう」なものにしているのは、まわりの大人たちの価値観や経験の押しつけなのである。大人でもそうだが、自分が楽しいと思って取り組んでいることを「かわいそう」と不憫に思われることほど、腹の立つことはない。中学受験に挑戦している子供の中には、「勉強は面白い」と思ってやっている子もたくさんいる。大事なのは挑戦する本人がどう感じるかだ。


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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。
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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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