なぜメルカリにユニクロの服が大量に出品されるのか…「お金持ちになれる人」と「いつも金欠の人」の決定的な差

2025年2月19日(水)17時15分 プレジデント社

撮影=プレジデントオンライン編集部

お金の貯まる人、貯まらない人の違いはどこにあるのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「お金持ちになれる人は、お金の使い方に『ガイドライン』がある。ない人はこれを持っていないからムダな買い物をしてしまう」という——。
撮影=プレジデントオンライン編集部

■お金が貯まらない人は値段より割引率を見てしまう


最近たびたび耳にするガイドラインという言葉。改めて調べると、「物事を判断するときの指針・指標となるもの」や「守るべきルールや望ましい行動の指針を定めたもの」という意味となる。判断基準や行動指針となるものだと考えれば、お金の使い方にも応用できるだろう。


お金持ちと言われる人には、総じてお金の使い方に「ガイドライン」があるものだ。自分にとって、これはお金を払う価値があるものか、この金額は、もたらす性能や効果に対して妥当なのか。その基準で判断するからこそ、より有意義な使い方ができる。


しかし我々は、その判断をなんとなく印象まかせで決めてしまうことが少なくない。よくあるパターンは次のようなものだ。


売値そのものよりも50%オフなど割引率のほうを見て、かなりお買い得だと感じさせる値札の仕掛け。飲み放題30分で500円と大きく書き、2時間では2000円でよくある金額だと気づきにくくするメニュー。あるいは、先に数千万円といった大きな金額を見せておき、そのあとで勧める数百万円を安く感じさせる広告。人間の印象など簡単にコントロールされてしまう。


だからこそ、これは高いのか安いのかの判断を決める冷静な基準が大事になるだろう。妥当な価格かを判断するために相場を確認する、相場が分からないなら比較できるデータを調べてみる。むろん価格がよしとしても、自分の価値観や予算と見合うかも大事だ。どんな数字が参考になるか、いくつか挙げてみよう。


■大きな買い物は「分解」して考える


①クルーズ料金一人40万円は安いのか

豪華客船で行くクルーズ旅行が人気だという。食事つき、ショーイベントやアクティビティあり、ジムやスパ、カジノも楽しめ、むろん寄港地では上陸して観光ができる。100万円以上のハイプライスのイメージがあり、「自分には関係ないな」と感じるが、国内クルーズだともう少し手ごろな価格になる。10日間日本一周で約40万円と聞くとどうだろう。ここで、なら妥当と思うか、それとも高いと思うだろうか。


ちょうどその金額のクルーズがあったので、その料金に含まれるものを抜き書きしてみよう。含まれているのは、日本一周にかかる運賃、個室代、食事代(一般的なアルコールを含むフリードリンク付き)、ステージショーやアクティビティ・シアター利用料、プールやジムなどの設備利用代など。


さらに、寄港地で観光する際に利用できる循環バス代も入っているそうだ。おまけに韓国にも足を延ばす。このメニューで豪華クルーズ船に滞在して40万円。10日間だから、1日あたり4万円の計算だ(観光地で使うお金は含まない)。ぐっと身近な金額となるので、まずまずリーズナブルに思えてくるのではないか。


写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/courtneyk

大きな金額を前にしたとき、このように判断しやすい金額に直すのはよくやることだ。でも、クルーズを初めて利用する人にとって1日4万円がどの程度の金額なのか、まだピンとこない。筆者も事前知識がないため、もう少し突っ込んで計算してみることにした。


■「10日間40万円」の解像度を上げて考える


豪華クルーズ船に乗ったことはないが、フェリー旅はよくしている。それをベースにして、もし自分で手配したら、いくらくらいになるかをモデル算出してみた。


食事代は朝昼バイキングと夜はディナーコースなので、これも外食の価格から想像できそうだ。ステージショー料金は、プレイガイドなど発売されているチケット料金が参考になるだろう。プールやジムは船内設備なのでゼロ円でもいい気がする。それを使ってざっと計算してみる。


①日本1周運賃……東京〜北九州や、関東〜北海道までのフェリー運賃が片道2〜2.5万円ほど。ぐるりと回ればこれの5倍程度かと推測して、10万円
②個室代……豪華客船のデータがないので国内フェリーのデラックス個室代金で計算。2泊1室(2人部屋)2万円なので、一人当たりは1日5000円×10日で5万円
③食事・ドリンク代……食事代8000円(朝・昼各1000円、夜6000円と想定)+フリードリンク1500円×10日で9.5万円
④イベントと施設利用料……ショー9000円、アクティビティ施設利用料2000円×10日で11万円
⑤循環バス利用料……都バスの1日乗り放題チケットが500円なので5カ所で2500円
⑥海外旅行分……旅程には韓国の島への寄港が組み込まれている。しかし、通常の海外旅行と違ってホテル代はかからないので、運賃その他経費で2万円程度を計上する

これを合計すると、37.7万円ほどとなった。むろん、前提にした数字が正しいわけではない。部屋代や料理代のグレードが安すぎると言われるかもしれないし、そもそも非日常なクルーズ体験は金額に置き換えるのが難しい。とはいえ、実際に数字を入れてみるかみないかで、10日間40万円、1日4万円というぼんやりとしたイメージより理解度が進むはずだ。


繰り返すが、この数字はもし自分が同じような内容で手配をしてみたらという計算であって、クルーズ主催側のコストではないのをお断りしておく。


■営業マンの言葉より、周辺の価格


②マンションを買うなら周辺家賃を見る

高額品を買う時も、非常に悩むものだ。自分が払える金額かだけでなく、この価格は割安か妥当かも気にかかる。周辺に比較できるような似た物件があればいいが、都合よく見つかるとも限らない。営業マンの「これから金利も上がるし、建築コストも上昇する一方。今この金額ならお買い得です」とのトークに、そうかもしれないと思いたくなってくる。


写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

そういう時には、周辺の賃貸家賃が参考になるだろう。例えば同じような間取りの家賃がいくらになっているか。毎月のローン返済額と家賃の釣り合いが妥当か、それとも築年数がたった物件だと、返済額より現家賃がかなり安くなっているか。もし家賃の方が安ければ、数年後の市場の評価はそこまで落ちてしまう可能性がある(むろん再開発などによっても変わるが)。


不動産などの高額な買い物では、資産価値も同時に考えるだろう。当然だが物件そのものだけでなく、立地が大きく絡んでくる。築年数が古い建物でも、そこそこの家賃が付くような場所なら、営業マンのトークを信じていいかもしれない。


高級時計やハイブランド品も、購入前に買い取り店のチラシをじっくり読んでおくべきだろう。そこに掲載されている金額が、第三者がつける評価のボトムラインになるからだ。ロレックス・デイトナの取引価格の相場は最近いくらか。ヴィトンのバッグならどのシリーズが高く売れるのか。ジュエリーもまたしかりだ。お目当ての商品の販売価格が妥当かは、第三者である市場価格が大いに参考になるだろう。


高額品こそ自分の主観だけで高い・安いを決めるのは難しく、決めたとしても迷いが残るものだ。中古になった時の価格を知っておくことで、買うかやめるかのジャッジを助けてくれるだろう。


■失敗を前提に買い物をするお金持ちはいない


③なぜフリマアプリでユニクロは人気なのか

メルカリなどのフリマアプリで最も取引量が多いのは衣料品で、中でもユニクロがトップにくると聞く。もともと手ごろな価格帯なのに、なぜあえてユニクロを買うのか。その理由はなかなか興味深い。


ネットで衣服を買う際に、もっとも気がかりなのはサイズだろう。試着ができないので、いざ届いてみたら体に合わなかったというのは避けたい。画面で見ていた時と実物が届いた際の色のイメージが違う事もよくある。


せっかく安く買っても、それではがっかりしてしまう。しかし、普段からよく買っているユニクロならサイズはわかるし、色味や質感も想像がつく。だから失敗が少なくて済むということらしい。新品時の販売価格も大体わかるので、どの程度の安さなのかも、だ。自分がデータを持っているからこその「賢い買い物」といえる。


写真=iStock.com/coldsnowstorm
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/coldsnowstorm

しかし、定価のイメージを持っていたにもかかわらず、不正に騙されてしまうこともある。2021年ごろ、閉店したデパートの通販サイトを騙って、ブランド品等を激安で買えるという偽広告がSNSに蔓延した。デパートのロゴなどが使われており、見た人は本物だと信用してしまったという。


しかし、一目で怪しいと感じるのが異常な安さだ。国民生活センターの注意喚起文書によれば、偽通販サイトでは高級ブランド品が80〜90%OFFという破格値で販売されていたのだ。これを信じて、お金を払ってしまった人が被害にあった。


■「安いから買う」の判断基準は危うい


むろん詐欺サイト側が100%悪いのだが、安すぎる価格を見た時には警戒してほしい。そもそも高額であることがステイタスとなるハイブランドにとって安く売るメリットは全くないからだ。それにブランド側はデパートにテナント出店しているだけなのに、大家(デパート)が勝手にハイブランド品を値下げするなどできるだろうか。


また、詐欺の例ではないが、「不動産に掘り出し物はない」と業界人に聞いたことがある。市場価格より格安の物件を見つけたら、安くなっているそれなりの理由が必ずあると考えたほうがいい。


お金持ちになる人ほど、ムダ金は使わないものだ。気軽に払っているように見えても、自分のガイドラインから外れた消費はしない。安いから買おうだけでない独自の基準を、私たちも備えておくべきだろう。


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松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト
『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。
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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)

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