道路橋の床版更新における設計業務時間を10分の1に 3Dモデル自動生成システムを開発
2025年2月27日(木)13時46分 PR TIMES
このたび、本システムを「阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)」(以下、雄の山更新設計業務)に適用した結果、これまで熟練のCADオペレータが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が1/10程度になりました。
なお、本システムは、BIM/CIMモデルが同時に完成するため、施工方法の検討や発注者等との協議にも使用できます。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/125/116603-125-4138f9574b11907ed6ebe001408b52bf-296x199.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]プレキャストPC床版の3Dモデルイメージ[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/125/116603-125-bacaa9937a391b4a43e848e860f4d841-350x256.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]床版取替工事の施工イメージ
【開発の背景】
高度経済成長期に整備された国内の道路橋の多くは、供用開始から半世紀以上が経過しており、各地で床版取替工事が進められています。床版取替工事のプレキャストPC床版は、運搬および架設時の制約から橋軸方向に約2mごとに分割されており、道路線形と鋼上部工の形状の関係から1つ1つの形状が少しずつ異なります。例えば、長さ500mの道路橋の場合は約250枚の床版が必要で、これらを1枚ずつ全て手作業で作図するには膨大な時間が必要なため、大量の図面を正確かつ短時間で作成する設計の生産性向上が課題となっています。また、供用中の床版の現況と図面にずれが生じていることも少なくないため、図面の修正を容易に何度でも行うことができるシステムが求められています。
【本システムの概要と成果】
本システムは、床版の3Dモデル生成だけでなく、鋼桁の3Dモデルの生成および測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正も可能です。
本システムを雄の山更新設計業務に適用した結果、これまでCADオペレータが手作業で実施していた繰り返し検討の時間が大幅に削減され、設計業務に要する時間が1/10程度になりました。
1.床版の3Dモデル生成
本システムは、パラメトリックモデリング※1が可能な3D-CADソフト※2を活用し、設計条件や数値情報といったパラメータを入力し、システム化された設計仕様やノウハウ通りに、床版の3Dモデル化を行います。
※1 あらかじめ定義されたテンプレートに対応する寸法値等のパラメータを入力するだけで、簡易に生成および修正が可能な 3Dモデルのこと
※2 ダッソー・システムズ 3DEXPERIENCE CATIA on the cloud
1.プレキャストPC床版のモデル化
道路線形情報を数値入力するだけで、3次元情報を有した橋梁の橋面を再現できます。さらに、床版を自動割り付けし、床版厚などの形状データを数値入力するだけで3Dモデルを生成できます。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/125/116603-125-2ff98c2d80a01c29b852ac143bc1cb73-271x126.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]プレキャストPC床版のモデル化
2.配筋モデルの自動化
鉄筋径やピッチ、かぶり等を数値入力することで、それぞれが干渉しない配筋の3Dモデルを自動生成できます。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/125/116603-125-0526dbcf855df95e570b1d7c5ca0c91b-261x128.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]自動生成された配筋3Dモデル
3.図面化・数量算出
床版1枚ごとに、2Dの図面データも出力することができます。さらに、数量算出のための構造寸法表
も出力できます。
2.鋼桁の3Dモデル生成および測量データの取り込みによる現況と設計の差分解析・修正
本システムに建設当初の鋼桁手書き図面から読み取った部材厚・幅等の数値を入力することで、様々な鋼桁の3Dモデルを生成することができます。床版と鋼桁の干渉チェックは、2Dの図面で行う場合と比較して、3Dモデルでは容易になるため、設計業務の生産性が大幅に向上します。
また、3Dモデル上に測量データ(点群情報)を取り込み、差分解析を行うことで橋梁全体の現況と図面のずれを瞬時に数値で把握することが可能です。数値を打ち換えるだけで、現況に合わせた微調整を瞬時に設計に反映することが可能となります。
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/116603/125/116603-125-d1112a5c284b4c0ed1fe457e285e3f31-765x198.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
【今後の展開】
鹿島は今後、本システムを複雑な道路線形を有する橋梁や、プレキャストPC床版の製作および架設の施工計画へも展開するとともに、当社が開発した「スマート床版更新(SDR)システム(R)」と連携させた情報化施工の技術開発も進めてまいります。
【工事概要】
工事名 : 阪和自動車道(特定更新等)雄の山第1橋他16橋橋梁更新工事(設計業務その1)
工事場所 : 大阪府泉南市信達岡中〜和歌山県和歌山市直川
発注者 : 西日本高速道路株式会社 関西支社
施工者 : 阪和自動車道雄の山橋梁更新工事特定建設工事共同企業体
工事諸元 : 1.床版取替工(撤去・設置)24,000平方メートル 、2.RCラーメン橋の土工化8,000m3(1橋)、3.塗替塗装4,000平方メートル 、4.橋脚耐震補強6基(1橋)、5.落橋防止構造26基、6.支承取替8基、
7.泉南IC拡幅のうち、1.、3.〜6.の橋梁補修改築に係る設計業務
工期 : 2021年8月〜2025年12月