口の中のヨボヨボ化で年4万人亡くなっている…医師が「1つ選ぶならこれ」と推す噛む力がつく「スーパー野菜」

2025年3月4日(火)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/naturalbox

不健康な生活は財布にやさしくない。体調不良で仕事の生産性は落ち、医療費や薬代などがかさんでしまう。では、どんな生活習慣を送ればいいのか。医師の鎌田實さんと経済ジャーナリストの荻原博子さんによる対談から読み解いていこう——。

※本稿は、鎌田實・荻原博子『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。


■お酒をやめたら、背中に羽が生えました


【荻原】実は私、5年前にお酒をやめました。ずっと浴びるように飲んでいたのに(笑)。


【鎌田】やめられたんだ、すごいですね。でも、どうしてやめようと思ったの?


【荻原】私以上によく飲んでいた友人が、あるときお酒をスパッとやめたんです。そのとき彼女が「お酒をやめたら背中に羽が生えてくるのよ。あなたもやめてみたら?」って言ったんです。


【鎌田】体が軽くなったということかな?


【荻原】そうみたいですね、気分爽快って言っていました。私は「うそでしょう?」って思ったんですけど、その言葉にすごくインパクトがあって。試しにその日の夜はお酒を飲まないで寝てみたんです。そしたら……。


【鎌田】そしたら?


【荻原】羽が生えました(笑)。


【鎌田】それはよかった(笑)。その後はスッパリやめられたの?


【荻原】最初の3日間は「お酒がほしいなあ」って思ったんですが、そのときに「お酒を飲むなら、好きなドラマは見ない」と決めたんです。いままではドラマを見ながらお酒を飲んでいたので、「ドラマか、お酒か」の2択にしてみたんです。で、私はお酒よりもドラマを見るほうを選んだ。それでお酒をやめられたんです。3日間続くと、次は1週間、次は1カ月……結局、5年続いています。


【鎌田】それはすごい。ぼくも56歳のときに病院の管理責任者を辞めてからは、つきあいの酒が減って、いまではたまに飲む程度。お酒とはほどよく距離を置いています。


【荻原】お酒を飲まないと体調もいいんですが、お金が貯まりました(笑)。おつまみも含めて、1日に500円くらい使っていたんです。でもそれがゼロになったので、1カ月で1万5千円、1年間では18万円の節約になったんですよ。


【鎌田】それは見過ごせない額だ!


【荻原】ですよね。お酒はやめて大正解でした。ちなみに、健康的なお酒の飲み方ってあるんですか?


【鎌田】「お酒は食事の間だけ飲む」って決めるのがいいと思いますよ。夕食のときに、食事のお供としていただく。そうすれば深酒にはなりません。糖尿病の患者さんにも、日本酒なら1合、ビールなら500ミリリットル、ワインなら180ミリリットル程度ならいいよ、と言っています。


写真=iStock.com/naturalbox
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/naturalbox

【荻原】「全部ダメ」だと続かないけれど、「ここまでならいいよ」っていう基準があると、なんとなくがまんできるんですよね。


【鎌田】でも、タバコは1本も吸わないほうがいいですね。いまは喫煙者の中で間質性肺炎や肺腺維症になって苦しんでいる人も多いんです。当然、タバコで肺がんになる人も多い。この本を読んでいる人でタバコを吸っている人がいたら、この際スッパリやめてほしいですね。


■食事の間を14時間あけると細胞が活性化する


【荻原】私が以前腰を痛めて5キロの減量に挑んだとき、3つだけルールを決めたんです。


①夕食は20時までに食べ終えて、朝食は10時にする
②野菜中心の食事にして、主食は玄米にする
③なるべく間食はしない


これだけです。食事の量とかもあまり厳密にしませんでしたし、仕事のおつきあいなどがあればその日はルールを守れなくても仕方がない、くらいのゆるさで始めました。それでも始めて1カ月で2キロやせましたし、健康診断の数値も改善したんです。


【鎌田】いいと思いますよ。あまり厳しすぎないのがよかったんだと思います。がんばりすぎないのが継続のコツです。


【荻原】よかった! 私だけでなく主人にもダイエットが必要だったので、2人で取り組みやすいルールにしたんです。


【鎌田】大成功でしたね。荻原さんのやり方ですが、①はいわゆる「ミニ断食」ですね。食事と食事の間を14時間以上あけて軽い飢餓状態にすることで、細胞が若返るんです。もとになっているのが「オートファジー理論」です。


荻原博子、鎌田實『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)

【荻原】2016年に大隈良典さんがノーベル生理学・医学賞をとった研究で話題になりましたよね。


【鎌田】人間の細胞には、いらなくなった物質をエネルギーとしてリサイクルする仕組みがあって、細胞が自分の細胞の一部を分解することから「オート(自分で自分の細胞を)ファジー(食べる)」っていうんです。オートファジーが活発になると、免疫力が高まったり、老化防止になったり、さまざまな効果があるといわれています。体内が飢餓状態になることで、このオートファジーがよく働くようになるんです。ぼくも夕食は19時までには食べ終えて、朝食は8時にしていますよ。


【荻原】……ということは、夕食と朝食の間は13時間です。鎌田先生みたいに健康的に生きている人は、やっぱり空腹の時間をとっているんですね。私はそれまでオートファジーなんて全然知らなくて、夜遅くにたっぷり食べていたし、食事が終わってからもお酒を飲みながらおつまみを食べてテレビを見て……。そのせいで、体が脂肪をため込んじゃっていたのかもしれません。


【鎌田】そういう人は多いんだけど、実は体にとっては最悪なんです。


【荻原】日中の間食も多かったので、長い間「おなかがすいた」っていう感覚を忘れていました。最近「おなかすいたな」って目が覚めるので、なんだか爽快なんです。


【鎌田】細胞が活性化し始めたのかもしれませんね。


■体内の「酸化」を防ぐのは、たっぷりの野菜


【荻原】最近、おいしいと思うものが少し変わってきました。お肉が大好きだったのに、最近はあまり食べられなくて。そのかわり、野菜のおいしさに目覚めています。


【鎌田】それはよかった。②の「野菜中心の食事」っていうのはすごくいいですよ。野菜には抗酸化力があるので、老化を遅らせる意味でも野菜はとても大切なんです。


【荻原】抗酸化力ってよく耳にしますけれど、老化と関係あるんですか?


【鎌田】老化って「体のさびつき」なんです。ぼくたちは毎日呼吸しているでしょう? 呼吸でとり入れた酸素が体の中にたまっていくと、鉄が酸素でさびるみたいに、体もさびていくんです。このさびが、老化の原因のひとつです。それを防ぐのが、野菜がもつ酸化を防ぐ力、「抗酸化力」なんですよ。


【荻原】なるほど! 「太りにくいから野菜を食べる」というだけではなく、老化を防ぐためにも野菜は大切なんですね。


【鎌田】そうです。厚生労働省は、少なくても毎日350グラムは食べることを推奨しています。ところが、日本人の平均野菜摂取量は男性290グラム、女性270グラムだというんですね。ざっと考えると1日60〜80グラム足りないんです。


【荻原】350グラムってどれくらいですか?


【鎌田】野菜の種類で重さが違うから一概には言えないんだけれど、こうやって両手を合わせてお皿にして、そこに生野菜をのせるでしょう? これを3倍にした量が1日に食べる分量と考えるといいと思います。


【荻原】3倍が1日分っていうことは、1食につき両手1杯分食べなくちゃいけないっていうことですよね。かなりの量です。


【鎌田】その量をサラダで食べようと思うと、全部食べるのは大変でしょう? だからぼくは「具だくさんみそ汁」を推奨しています。葉物野菜でも根菜でも、冷蔵庫に残った野菜の切れ端でも全部入れて、みそ汁にしちゃう。野菜のかさが減るので、たっぷり食べられます。


【荻原】それはいいですね。根菜は料理するのがちょっと面倒ですけれど、みそ汁なら手軽ですもんね。


【鎌田】野菜が多い分、汁が少なくなるから減塩にもなるんです。あとね、ミニトマト1個はだいたい10グラムなんですよ。いままでの食事にプラスして、毎食ミニトマトを2個食べると、不足している60グラムを補える計算になります。


【荻原】野菜ジュースはどうですか?


【鎌田】いいですよ。ジューサーやミキサーがあれば、新鮮な野菜で作ってほしいですね。アメリカのヴァンダービルト大学の研究によると、野菜ジュースを週3回以上飲む人は、1回以下の人よりアルツハイマー型認知症の発症率が76%少ないことがわかったそうです。


【荻原】野菜のパワー、すごいですね。「この野菜はとくにおすすめ!」みたいなイチオシ野菜はありますか?


【鎌田】野菜は本当にどれも食べてほしいし、旬の野菜を食べることも大事なんですが、「何か1つ」といわれればブロッコリーです。


写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alvarez

【荻原】ブロッコリーですか!


【鎌田】ブロッコリーには血圧を下げる作用のあるカリウムが多いし、骨をつくるビタミンKも豊富。抗酸化物質もいっぱい。しかも野菜の中ではたんぱく質が一番多いんですよ。ボディビルをやっている人にとっては必須の食品だそうです。


【荻原】そうなんですね! そんなスーパーフードだとは知りませんでした。


【鎌田】ブロッコリーをおすすめする理由が、もうひとつあるんです。ブロッコリーってちょっとかたいじゃないですか。しっかりかまないと食べられません。高齢になるとかむ力が衰えてしまって、「オーラル(口腔)フレイル」になりやすいんです。そのせいで誤嚥(ごえん)性肺炎などになって、毎年約4万人が亡くなっています。だからこそ、口腔を鍛えるためにブロッコリーをしっかりかんで食べる習慣をつくってほしい。かむ力をキープできるから。


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鎌田 實(かまた・みのる)
医師・作家
1948年、東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院に赴任。「地域包括ケア」の先駆けをつくり、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導く(現在、諏訪中央病院名誉院長)。現在は全国各地から招かれて「健康づくり」を行う。2021年、ニューズウィーク日本版「世界に貢献する日本人30人」に選出。2022年、武見記念賞受賞。ベストセラー『がんばらない』(集英社文庫)ほか書多数。チェルノブイリ、イラク、ウクライナへの国際医療支援、全国被災地支援にも力を注ぐ。現在、日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET顧問、一般社団法人 地域包括ケア研究所所長、公益財団法人 風に立つライオン基金評議員ほか。
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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。
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(医師・作家 鎌田 實、経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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