さっさと宿題をやる子どもに変わる…「宿題が終わるまでおやつ抜き」より効果的な親の声かけ

2025年3月6日(木)18時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

子どもが自発的に宿題に取り組むようになるために、親はどうすればいいか。小児科看護師で育児アドバイザーの下村弥沙妃さんは「『宿題をやりなさい!』『宿題が終わるまでおやつ抜き』と言うより、宿題の主体はあくまで子どもであることを理解させることが重要だ」という——。

※本稿は、下村弥沙妃『3日で自発的に動く子になる!信頼声かけ』(Gakken)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/koumaru
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■なぜ親が子どもの宿題について悩むのか


毎日のように学校や塾から出される宿題。日々親を悩ませる問題の一つですよね。


「毎日のことなんだから、いい加減に自分から宿題に取り組んでほしい」
「さっさと終わらせて、ゆっくり遊んだり夜ご飯を食べたらいいのに……」
「ゲームの前に宿題を済ませると約束したのに、いつも後回しになって親子ゲンカになる」
「丁寧にやってほしいのに、適当に済ませるから全く進歩がない」


宿題一つでも、親を悩ませる数々の子どもの言動。毎日となると、本当にうんざりするものです。


何とか解決する方法はないかと、あの手この手で工夫を凝らして、子どもに接している方も多いのではないでしょうか。


そこで、宿題についての声かけをする時にまず心がけたいのは、子どもを「宿題の主体にする」ということ。子どもに「宿題を、自分のこととして認識させる」という意味です。


宿題のお悩みを抱える親の多くは、子どもの宿題を自分事、つまりは親のことと捉えてしまっているのです。これは、宿題の主体が親になってしまっている状態ということになります。


■言わないとやらないから仕方ない?


「いえいえ、宿題は子どものもの。そんなの当たり前じゃない? 分かってるよ」


そんな声がたくさん聞こえてきそうです。ただ、本当の意味で分かっている親は、どのくらいいらっしゃるでしょうか? 要は、意識の問題なのです。


「言わないとやらないから仕方ないじゃないか」


そんな声も聞こえてきそうですね。


実は、子どもたちはそんな親の思いを潜在意識で知り尽くしていて、宿題をきっかけに決定権の取り合い【決定権争い】に親を引きずり込んでいるのです。


なぜでしょう? それは、子どもが決定権を握ることで、家庭での揺るぎないポジションを獲得するためです。


■宿題の決定権争いに参加してはいけない


子どもは、家庭の中で自分という存在を一生懸命アピールします。それは、生まれながらに持った、生きるための本能でもあるのです。これは潜在意識でしていることなので、子ども本人も意識していない領域になります。


「宿題をやらせなくちゃ」「宿題をちゃんとやるまで見ていなくちゃ」。親がそう思った時点で、宿題に関する決定権争いは始まってしまいます。そう、宿題の決定権争いは、実は親から始めていることがほとんどなのです!


ここでは、そんな宿題にまつわる身近な問題を解決する声かけを紹介していきます。


ケース1:宿題を嫌がる子どもへの声かけ

×「宿題をやりなさい!」


この声かけは、宿題という決定権争いに親を引きずり込もうとする子どもの思惑にまんまと引っかかっている、典型的な例です。


ちょっと宿題をサボれば、親は積極的に決定権争いに参戦してくれる。子どもにとっては絶好の場面なのです。


写真=iStock.com/mapo
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■宿題の主体は子どもだと認識させる


さあ今日からは、そんないとも簡単な挑発に乗るのはやめましょう。次のように言えばいいのです。


○「(学校〈塾〉でたくさん勉強してきたのに、帰ってきてまで)宿題なんて、やりたくないよね」


「宿題をやりたくない」という子どもの気持ちに寄り添うことで、宿題の主体は子ども自身であることをしっかりと認識させることができます。


そしてもう一つ、この寄り添いの声かけをすることで、子どもはあるがままの自分を受け入れてもらったという安心感が芽生え、自ら宿題に向かう心を育むことができるのです。


「こんなこと言ったら、本当に宿題をやらないから困る‼」


そんな悲鳴が聞こえてきそうですね。


では、宿題をやらなくて困るのは誰でしょう? 宿題の主体は、そもそも誰ですか?


もし宿題をやらなくて困ることがあるなら、一番困るのは、主体である子ども本人なのです。宿題をやらなくて困るという経験を子どもから奪うことは、宿題の主体を親が奪うということなのです。


■宿題をやる気配のない子どもには…


「宿題をやらなくてはいけない」「やったほうが良い」。これまでの経験から、子どもはそのことはちゃんと頭では分かっています。だからこそ、やらなかった時に起きることを、主体として経験してもらうことが必要なのです。


親がやるべきことは、子どもの宿題の主体を請け負って、いつまでも子どもの経験を奪うことではなく、そんな子どもの能力を信じて成長に期待し見守ることです。


ただし、根気は必要。これまで親が主体だった場面で、主体をいきなり替えられたら子どもは戸惑いますからね。


ケース2:宿題をなかなかやらない子どもへの声かけ

家に帰ってきてもダラダラして、なかなか宿題をやろうとしない子ども。


「おやつを食べてから」「遊んでから」「ゲームをしてから」「ご飯を食べてから」——まあ、子どもの口から出てくるのは、宿題を後回しにする理由ばかり。


学校や塾から帰ってきて疲れているだろうと後回しを許したのにもかかわらず、いつまで経っても宿題をやる気配はない。


いよいよ寝る時間になって、ようやくのんびりと宿題をやり始める子どもを見ると、親は我慢の限界! 怒り爆発‼ という経験をしたことのある親も多いのではないでしょうか。


そんな宿題をなかなかやらない子どもへの、効果的な声かけをご紹介します。


■やりたいことを制限するのは逆効果


×「宿題が終わるまで遊びに行ってはいけません」
×「宿題が終わるまでおやつは抜きよ」


これらの声かけをすると、宿題の主体が親になってしまうのは、もうお分かりですよね。


さらには、宿題と関係のないことで罰を与えてしまっていることにお気づきでしょうか? 「宿題」と「遊びに行くこと」。「宿題」と「おやつ」。これらは全く別のことです。


このように、つながりのないことで子どものやりたいことを制限をすると、子どもはまるで罰を受けている気持ちになります。子どもにとっては、全くの理不尽。反発したくなる気持ちも分かりますよね。


これでは、子どもが納得してさっさと宿題をやるとは到底思えません。では、どんな声かけが効果的でしょう?


■親からの信頼のメッセージを込める


○「宿題はおやつの前にする? 後にする?」


おやつを、罰の道具として使うのではなく、行動を起こす動機づけの選択肢として登場させるやり方です。


この声かけには、親から子どもへ、能力に関する信頼のメッセージが二つ含まれています。一つは、あなたには自分で行動を決められる能力があるというメッセージ。もう一つは、子ども自身で宿題をやり遂げられると信じているというメッセージです。信頼されたと感じた子どもは、みるみるとやる気が出てきます。


そんなことで? と疑問に感じるかもしれません。


また、ある日突然この声かけをされた子どもは戸惑って、わざと宿題に手を付けようとしないなど、親を試すようなことをするかもしれません。


でも、「うちの子には無理だった」と思わずに、習慣になるまで続けてみてください。


さらに、「今まであなたの宿題のやり方に口出ししてしまってごめんね。もう、あなたは自分でいつ宿題をやるか決められると思うの」。こんなふうに言ってみるのもお勧めです。


写真=iStock.com/Stefan Tomic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Stefan Tomic

■「集中しなさい!」の効果は一瞬


ケース3:すぐに集中力が切れる子どもへの声かけ

やっと宿題を始めたと思ったら、すぐに集中力が切れてボーっとしたり、他のことを始めたり……。


これもまた親を悩ませる問題ですね。どうしてうちの子はこんなに集中力が続かないのかしら? 勉強に向いていないのでは? そう心配になる親もいらっしゃるでしょう。


でも、考えてみてください。好きなこと、得意なことにはきっと時間を忘れて集中していますよね。なぜなら楽しいから。


ということは、楽しいと思えるなど何でもいいので、「宿題に集中する理由=メリット」を、子どもに感じてもらえればいいわけです。


×「集中しなさい!」


そう言いたくなる気持ちは、とてもよく分かります。


でも、そう言われて集中できる子どもを見たことがあるでしょうか? ありませんよね。一瞬集中したとしても、そう長くは続かないでしょう。


では、どのような声かけが効果的でしょうか?


■子どもの成功体験を増やす親の声かけ


○「どうしたら集中できそうかな?」


この場合、集中する場面を自分で作り出す絶好のトレーニングの場だと考えてみましょう。



下村弥沙妃『3日で自発的に動く子になる!信頼声かけ』(Gakken)

これは、「あなたは集中することができる」という信頼が大前提で、さらに「あなたなら、自分で集中する場面を作り出せる」といった、二つの能力に対する信頼を伝えることができるのです。


そして、集中して宿題をいつもより短時間で終えられた時には、こんな声かけをしてみましょう。


「集中して宿題ができたから、いつもより早く終わったね! 早く終わった時間で、今から何がしたい?」


こう言うことで、宿題に集中することのメリットを、子ども自身にしっかりと感じてもらうのです。このことは子どもにとっては成功体験となり、さらには自分自身への自信を育むことにつながります。


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下村 弥沙妃(しもむら・みさき)
小児科看護師、育児アドバイザー
1977年、三重県生まれ。看護学校卒業後、大学病院の小児科病棟へ就職。理想の育児を徹底的に学ぶべく数々の資格を取得し、2011年より自己肯定感を高める育児セミナー、カウンセリング、育児相談を開始。評判を呼び、ロコミだけで最長2年半待ちのセミナーとなる。2020年に長男がエレクトーンと両立しながら1年で灘中学に合格し、次男も難関校の滝中学に合格。現在までに、育児セミナー、個人セッションのほか、公立中学校PTA研修講師、公立小学校特別授業講師、児童発達支援事業所専属心理士など1万人以上の心身の健康をサポートしている。メディア出演も多数。株式会社マインドプラスアカデミーode代表取締役、一般社団法人保育福祉サポート協会統括主任、児童発達支援管理責任者(R4年基礎研修)、強度行動障害支援者、チャイルドマインダー、メンタルトレーナー、HSPカウンセラー、食育インストラクターほか。
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(小児科看護師、育児アドバイザー 下村 弥沙妃)

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