ドラマ「ホットスポット」の元ネタ・甲府事件だけじゃない…昭和50年次々に目撃されたUFOの意外にリアルな正体

2025年3月9日(日)7時15分 プレジデント社

キービジュアルになった富士吉田市の本町通り(写真=Vitor Coelho Nisida/PD-author-FlickrPDM/Wikimedia Commons)

第4話までのTVer再生回数が1000万回を超えるなど、話題のドラマ「ホットスポット」(日本テレビ系)。エンタメに詳しいライターの村瀬まりもさんは「第8話で、宇宙人・高橋(角田晃広)の父は『甲府事件』の宇宙人という設定が明かされた。1975年2月に起こったこのUFO目撃談を調べてみると、当時は東京都心や奥多摩でもUFOを見たという報道があった」という——。
キービジュアルになった富士吉田市の本町通り(写真=Vitor Coelho Nisida/PD-author-FlickrPDM/Wikimedia Commons

■富士山麓の町に宇宙人が出現するドラマ「ホットスポット」


もし、自分の身近に「UFOを見たことがある」「宇宙人と会ったことがある」と言う人がいたら? あなたはその目撃談を信じてあげられるだろうか。


バカリズムの奇想天外な脚本で話題のドラマ「ホットスポット」(日本テレビ系)は、富士山麓の田舎町で起こる「未知との遭遇」を描くコメディだ。


物語の始まりで、市川実日子演じるホテル従業員の清美は、トラックにひかれそうになったところを、同僚の高橋孝介(角田晃広)に超人的なスピードとパワーで持ち上げられ、命を救われた。高橋はそんなことができた理由を「実は俺、宇宙人なのね」と説明し、清美は最初は本気にしなかったが、手の指で10円玉を曲げてみせた彼を信用し、地元の女友達にも紹介。彼女たちは高橋のパワーをちゃっかり利用しつつも、お互いに助け合う仲になっていく。


第8話(3月2日放送)では、「宇宙人の父と地球人の母」のハーフだという高橋が、自らの生い立ちを初めて語った。それによると、昔、宇宙人の祖父と祖母と父(野間口徹)が地球に不時着し、自分たちの生存に不可欠な成分を含む温泉を求め、富士山麓の町で人間に紛れて暮らすようになった。父は、夫が宇宙人でも気にしない寛大な母(安藤サクラ)と結婚し、すっかり地球に根を下ろしていた。


■角田晃広演じる高橋の父が「甲府事件」の宇宙人という設定


しかし、一度だけ異星人だとバレそうになったことがあり、それは高橋の父が「甲府のブドウ畑を散歩していて」、うっかり息子と間違えて男の子の肩をたたいてしまい、その子が「宇宙人に肩たたかれた」と言って大騒ぎになったときだという。父がいかにも宇宙人らしい銀色の防寒スーツを着ていたせいで新聞沙汰にもなってしまい、回想シーンではそのスーツと茶色い仮面のようなフードも映し出された。


このエピソードが、1975年(昭和50年)に報じられた宇宙人遭遇談、通称「甲府事件」と同じだとして話題になっている。UFOファンにとっては有名な話で、地元の甲府市では町おこしとして「甲府星人」のフィギュアやお菓子が売られ、写真撮影用のパネルなども設置されているが、全国的には知らなかった人も多いのではないだろうか。


出典=CAMPFIRE「UFOで山梨を盛り上げよう〜甲府UFO事件50周年にむけて

「甲府事件」とは、今から50年前の1975年2月23日、山梨県甲府市の郊外で、小学2年生の男の子2人がUFOらしき飛行物体と、そこから降りてきた宇宙人を見たという話で、翌々日の山梨日日新聞でこう報じられた。


■50年前、地元の新聞が小学生に取材した第一報の内容


見出しには「甲府にUFO出現⁉ 山城小の3人目撃 肩たたかれドキリ」とある。


円盤を見たのは山城小二年のK君(編集部註:新聞では実名)と山畑(原文ママ)克博君(七つ)の二人。二人の話では、二十三日午後七時ごろ、甲府市上町の日の出団地付近でローラースケートで遊んでいると、上空にカチカチ音を鳴らしてオレンジ色に光る物体二個を発見。大きい方は愛宕山方面に飛び去ったが、残りの一個が団地裏のブドウ畑の支柱のすき間を通ってぶどうだなの下に着地した。二人が近寄って見ると、長さ約五メートル、高さ約二・五メートルの大きなもの。二人が怖くなって帰ろうとすると、“円盤”の横が開いて身長約一・三メートル、目と口がなくキバが三本生えて全身銀色に輝く“宇宙人”が降りて来た。円盤の中にはもう少し小さい宇宙人がいた。
「山梨日日新聞」1975年2月25日付

現在50代になった山畠克博さんがYouTubeで語ったところによれば、山畠さんといとこのK君が小学校でこのことを黒板に絵を描きながら報告し、さらに同じクラスの少年(8歳)も(新聞によれば、団地からさほど遠くない甲府バイパスを家族と車で走っていたときに)、光る物体が団地の方に行ったのを目撃したと証言したことから、「尋常な話ではない」として校長が山梨日日新聞に連絡したのだという。


■ブドウ畑に降り立った円盤と宇宙人はどんな見かけだったのか


山畠さんたちはその後、テレビや雑誌の取材攻勢に遭い、学校の授業にも出られないほどの事態になったというが、山梨日日新聞は第一報だけに、にわかには信じられないような体験談でも、リアリティがある。


宇宙人は右手に銃のようなものを持ち、約一メートルほど円盤から歩いて右手を山畑君の肩にかけたという。
山畑君は驚いて腰を抜かし、K君がおぶって約三十メートル離れた自宅に逃げ帰った。山畑君の知らせで、家族も円盤を遠巻きにしたが、家族の話ではオレンジ色の物体が約五分間、ブドウ畑の中で弱くなったり強くなったりしながら光り続け、目を離したすきにどこかへ飛び去った。円盤には意味不明の文字四個が書いてあったという。
(中略)
円盤が舞い下りたブドウ畑では高さ一・七メートルのコンクリートの支柱二本が斜めに倒れかかっていたため、騒ぎはますますエスカレート。
「山梨日日新聞」1975年2月25日付


写真提供=共同通信社
「甲府星人」と握手する「甲府UFO事件」の目撃者・山畠克博さん=2024年2月、甲府市 - 写真提供=共同通信社

■宇宙人の体の生々しさ、歩き方などリアルな証言


現在の山畠さんによると、円盤の光を目撃した家族というのは自分の母と兄、K君の母と弟。母親が円盤の近くに行こうとするのを、山畠さんは「お母さんが宇宙人に連れていかれてしまう」と懸命に引き留め、知らせを受けた父親たちが駆けつける直前、円盤は飛び去るというより、白い光を放って消滅したという。


その際、山畠さんは宇宙人たちが円盤に乗り込む場面も目撃したと話す。歩くというよりはスーッと滑り込むような動作で、そのシルエットは今でも鮮明に覚えているとか。


宇宙人の茶色いシワだらけの顔や同じくシワだらけの手は、服などではなく生身にしか見えなかった、円盤は遠くから見たときはオレンジ色だったが、近寄って見ると銀色だったという証言も、リアルで興味深い。もし、これが作り話なら、円盤に文字が刻まれていたという情報も必要ないはずだ。


1970年代の日本ではUFOの目撃談が相次ぎ、高知の「介良(けら)事件」など、ほぼ捏造(ねつぞう)と判明した事件もあるが、「甲府事件」が、子どもの見間違いや虚言とされていないのは、50年後の今もぶれずに証言を続ける山畠さんの存在が大きい。山畠さんはこれまで「見間違いだったかもしれない」などとは発言していないし、一緒に目撃したという、いとこのKさんの証言とも、大きく矛盾する点がない。宇宙人らしきものを見たのは二人の少年だけだが、光って飛ぶ謎の物体を見た大人は、山畠さんの家族の他にもいる。


写真=iStock.com/AG
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AG

■低空飛行のプロペラ機、誰かのいたずらとも考えられるが…


しかし、あえて見間違いではないか? と考えると、いろんな説が考えられる。山梨日日新聞は「運輸省航空局の話では、甲府上空の午後六時から七時の間は定期便が飛ぶこともあり、特に三千メートルの高度を飛ぶYS11型プロペラ機などの尾灯、照明灯などの光りが肉眼でもはっきり見える可能性もある」と追記。それが円盤に見えた可能性を示唆している。


写真=iStock.com/gyro
花巻空港でYS-11プロペラ機が飛び立つ様子 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

もしくは誰かが変装するなどして仕掛けたいたずらだったという可能性もある。というのは、事件発生当時、1975年2月の新聞各紙を調べただけでも、そういった記事が見つかるからだ。


2月14日の毎日新聞夕刊では東京都での騒動が報じられている。


13日夜8時ごろ、品川区西中延付近で、マンションの4階に住む人がUFOらしき白く光る飛行物体を見て110番に電話した。そのとき、地上では平塚中学の3年生がその光に追いかけられ、「飛び上がるほど驚いた」が、その光がふわふわと地上に降りたので、警察へ持っていった。


荏原署が確認したところ、その正体はヘリウムガスを入れた銀紙の風船で、縦横各80センチの三角錐形。乾電池と豆電球が付いて光っていたので、警察は「手の込んだいたずらだ」と判断した。その日は日本テレビで「UFO追跡研究レポート」という番組が放送されていたこともあり、誰かの悪ノリだと思ったという。


■UFO→風船で手の込んだいたずら→実は観測気球というオチ


ところが、このエピソードには後日談があり、2月16日の読売新聞は「アルミUFO 観測気球だった」と報じている。


「なぞの飛行物体か」、とさる十三日夜、東京・品川区の住民を騒がせたアルミハク製の三角スイは、実は清掃工場建設のため、都から大気拡散の影響調査を託された会社が飛ばした気球の一種とわかった。
“怪物体”が持ち込まれた荏原署に十五日朝、株式会社「公害気象研究所」の金清勝応社長が「もしや、ウチのものでは……」とかけつけ、確認したもので(中略)、飛ばした三個のうちの一個が下降気流に乗って落下したのではないかという。
(中略)
同社は「東京では今回が初めてだが、さる(昭和)四十二年以来、全国各地で千個以上を飛ばした」と言っているので、これまでのUFO(未確認飛行物体)騒ぎのいくつかは、この気球が正体かも?
「読売新聞」1975年2月16日


光るUFOの正体は、人知れず飛ばされた観測気球だったという、なんとも現実的なオチ。甲府事件もこのあたりが真相か? とも考えられるが、一方で、読売新聞の同じ紙面では、東京都の多摩エリアで目撃されたUFOの写真が大きく掲載されているのだ。


■山梨県に隣接する奥多摩でUFOの写真が撮影されていた


読売新聞には「多摩の空 またUFO⁉」「昨夜も5回、マニアどっと、大騒ぎ」「ダ円の光、点滅——撮影に“成功”」とエキサイトした見出しが躍る。


記事によると、2月7日から、青梅市や奥多摩町で晴れた夜空を音もなく飛ぶUFOを見たという人が続出。目撃されたのは「オレンジ色の豆電球を数個並べたような円盤状の飛行物体」であり、「ヘリコプターぐらいのスピード」で飛び、山陰に消えたという。複数の人が実名を出した上で証言している。


これは形、スピード共に観測気球とは思えない。13日夜には26歳の男性がニコンの300ミリ望遠レンズで、円盤状の光を撮影することに成功。円盤は「下方に向けて、かなり強い光を点滅させている状態」で、その写真も掲載されている。


ちなみにこの時間、青梅方面から見える上空に飛行機は飛んでいないと運輸省はコメントした。


写真=iStock.com/Toshihiro Nakajima
奥多摩の山から見た富士山 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toshihiro Nakajima

気になるのは、円盤状の飛行物体、オレンジ色の光という点が甲府事件と共通しているところ。しかも、青梅市や奥多摩は東京の西の端で、ひとつ山を越えれば山梨県という地理関係だ。そこで10日前に目撃されたUFOが、甲府で山畠さんたちが見たのと同じものだったとしても、おかしくはない。


一般人でも飛行機のフライトレーダーがネットでチェックできる現在からは考えられないが、昭和50年当時は、新聞でも「航空路監視レーダー網」の計画が遅れていることが指摘され、日本の空は無法地帯だった。もしかすると、UFOにとっては、気軽に遊びに来られる旅行先だったのかもしれない。


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村瀬 まりも(むらせ・まりも)
ライター
1995年、出版社に入社し、アイドル誌の編集部などで働く。フリーランスになってからも別名で芸能人のインタビューを多数手がけ、アイドル・俳優の写真集なども担当している。「リアルサウンド映画部」などに寄稿。
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(ライター 村瀬 まりも)

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