「宇宙ロケット廃材でつくるベンチ」アップサイクルで宇宙を身近に感じてほしい
2025年3月13日(木)14時0分 PR TIMES STORY
&SPACE PROJECTでは、2025年大阪・関西万博の「Co-Design Challengeプログラム」で、宇宙ロケットの開発廃材の試験用燃料タンクをリメイクしたアップサイクル家具「宇宙タンクベンチ」を提供する。宇宙産業が活発な北海道を舞台に、道内のものづくり企業や道内外のクリエイターが力をあわせ、宇宙をもっと身近に感じられるプロダクトを開発し、新しい産業の創出をめざしている。また、道東エリアでの自然体験や文化体験とあわせて、活発化する宇宙産業も感じてもらえるような体験企画を行う予定だ。そのプロジェクトについて、3回のシリーズ企画で迫る。
※シリーズ記事は、「Co-Design Challengeプログラム」のホームページに公開しています。各記事は、取材時点の情報のため、プロジェクトの進捗や開発状況によって当時から変更となった点などが含まれます。
「宇宙ロケット廃材でつくるベンチ」アップサイクルで宇宙を身近に感じてほしい Vol.1
試作品の「宇宙タンクベンチ」
アポロ11号が持ち帰った "月の石" は、1970年の大阪万博アメリカ館で展示され、大きな話題を呼んだ。2025年の大阪・関西万博では、日本の南極観測隊が採取した "火星の石" の展示が発表されているが、Co-Design Challengeに採択された「宇宙ロケットアップサイクルプロジェクト『&SPACE PROJECT』」により、ロケット廃材のタンクを使用した「宇宙タンクベンチ」も会場に提供される。宇宙関連産業の集積が進む北海道東部エリア、道東を舞台にプロジェクトは進む。
北海道大樹町は1985年より「宇宙のまちづくり」を掲げている。2008年には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と連携協力協定を締結。宇宙産業を誘致し、ロケット発射場では数多くのロケット打ち上げなどの航空宇宙実験が行われ、2021年春には商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」が本格稼働するなど、酪農が基幹産業の約5,300人が住む小さな町の取り組みは注目を集めている。
大樹町から車で約2時間30分ほどに位置する釧路市内で、カフェを併設したインテリアショップ「BASE9」を営む「11株式会社」代表の十枝内(としない)一徳が「宇宙タンクベンチ」製作の中心人物だ。大樹町の宇宙産業関連企業とつながりがあり、建築などの空間デザインを行う会社「ADDReC(アドレック)」(本社・東京)から、約4年前に「ロケット廃材」を使ったプロジェクトの相談があった。大樹町で進む宇宙産業は、インテリアを本業とする十枝内にとっては、近くて遠い存在であったが、「ロケット廃材の活用ということを聞き、ロケット開発といった、多くの人が思い浮かべるような宇宙産業に関するテクノロジーは持ち合わせていないが、得意分野を生かして何か発信していけるのではないか、ユニークなプロジェクトにできれば面白い」と連携を決めた。
十枝内を起点に、プロジェクトの輪は広がっていく。道内のものづくり企業と道内外のクリエイターを抱える企業など9社が集い、ロケット廃材をアップサイクルし、宇宙をもっと身近に感じられるプロダクト開発を行う「&SPACE PROJECT」がスタートする。「みんな単純に『面白い』というのが参画した一番の理由だと思います。今後さらに協力企業も増えていくと考え、プロジェクト名も『&SPACE』にしました」。十枝内が専門とするベンチ、椅子、テーブル、棚などの「宇宙家具づくり」を進める中、プロジェクトメンバーからCo-Design Challengeへの参加の声があがった。
株式会社11代表十枝内一徳さん
ベンチの耐久性や安全性について議論する様子
「宇宙ロケット廃材でつくるベンチ」アップサイクルで宇宙を身近に感じてほしい Vol.2
雄大な自然が広がる釧路湿原
Co-Design Challengeを通じて、十枝内は自身が「&SPACE PROJECT」で実感するように、「宇宙産業は一部の人たちだけが関わるものではなく、見て、触れてもらうことができる、意外と身近なものだ」と感じてもらいたかった。国内外の多くの人々が訪れる万博会場で、ロケット廃材を使用していることが一目でわかり、かつ身近に感じてもらえるプロダクトは何なのか。
試験用ロケットの燃料タンクを使用した「宇宙タンクベンチ」の万博会場への提供を決めた。タンクは高い強度と軽さを併せ持つアルミ合金だ。溶接などの金属加工は、巨大な橋梁(きょうりょう)製造を得意とする「釧路製作所」で行う。ベンチシート部分のベースは北海道産木材を使用した木工組みで、木製家具・建具や店舗什器(じゅうき)製作を行う「得地ファニチャ工業」の釧路町にある工場で加工する。道東エリアのものづくりの力を結集して、ベンチに仕上げていく。「切り刻んで元の形がわからなくなっては意味がない。タンクだと一目でわかるプロダクトはなにかと考えた結果が、ベンチでした」。廃材の傷や汚れはあえて残して、タンクに刻まれたロケット開発の記憶も大切にする。試作品は完成したが、気温が上昇した際の熱対策や小さな子どもが触ってもけがをしないような安全に配慮した加工など、万博本番に向けてアップデートを行っていく。
体験企画では、釧路製作所や得地ファニチャ工業など、ベンチ製作を担った工場のものづくりを体感してもらうオープンファクトリー企画とあわせて、道東エリアの豊かな自然や文化を満喫できるツアーを検討中だ。釧路湿原には、キタキツネやエゾリス、希少種のタンチョウ、シマフクロウ、オジロワシなど200種以上の鳥類や動物が生息している。「釧路湿原の展望台近くにいると、エゾシカが顔を出すことがあります。体験企画では、地域特有の体験をしていただくことで道東に来てよかったと思ってもらえるようにしたい」と十枝内は道東をどう楽しんでもらうか思いを巡らせている。
「宇宙産業は過渡期にあると言われています。そうした時期に、道東を中心にした道内外の多くの企業と連携して、ロケット廃材を使ったベンチを万博会場へ提供することができるところまで来ました。宇宙は遠いけど、確かにある、楽しくてワクワクする存在です。私たちの『&SPACE PROJECT』を通じて、宇宙に興味を持ち、自分も関われるかもしれないと思い、目指す人が増えると幸せです。万博は一つの契機になると強く思っています」
釧路製作所での金属加工の様子
体験企画の様子(得地ファニチャ工業での木材端材を使った木工製品の工作)
「宇宙ロケット廃材でつくるベンチ」アップサイクルで宇宙を身近に感じてほしい Vol.3
宇宙ロケット廃材を活用したアップサイクル家具「宇宙タンクベンチ」
万博開幕まで3か月を切った2025年1月中旬。宇宙タンクベンチの制作現場では、突起部分をアクリル加工したり、屋外用のシートを取り付けたりと、いよいよ総仕上げの段階に入っていた。子どもから大人まで多くの人が訪れるため、安全対策を万全に講じていく。その一方で、体験企画のコンテンツ作りは練り直しが進み、すでに決定しているオープンファクトリーや道東を巡るツアー以外に、宇宙への夢を育めるような体験プランも用意しようと意見を交わす日々が続いていた。
プランを固めるため、宇宙関連のツアーに豊富な実績をもつ旅行会社と連携し、プロジェクトの出発点となった大樹町を視察。実物の小型ロケットの展示施設やロケット発射場、航空宇宙実験場を備えた公園などを巡り、宇宙に一歩でも近づこうと活気づく街の魅力を感じながら、ペットボトルロケットの工作・打ち上げ体験などを楽しめるプログラムがアイデアとして盛り込まれた。
「みんな宇宙に手が届く」。このキャッチフレーズとともに、北海道を舞台にした新産業創出に向けて突き進んできた「&SPACE PROJECT」。趣旨に賛同してくれる企業からの問い合わせも相次ぐようになった。この流れをもっと個人に、特に子どもたちに宇宙を身近に感じられる機会を届けたい。十枝内たちは、万博がその呼び水になればと期待を寄せる。宇宙人からUFO、ブラックホールまで、テレビや雑誌など多くのメディアがこぞって宇宙関連の話題を取り上げた時代に、十枝内らプロジェクトのメンバーたちは幼少期を過ごした。「潜在的な憧れとして心のなかにあった宇宙が、この取り組みのおかげで一気に距離が縮まり、無限の可能性に再び胸が躍りました。子どもたちにも心ときめく瞬間をぜひ味わってほしい」
民間企業が次々と宇宙ビジネスに参入したことで、将来的には宇宙旅行が一般化される未来が予想されている。プロジェクトでは、第1弾とする宇宙家具の制作以外にも、宇宙産業に興味がある企業同士を結び付けるサポートをするなど、北海道を起点に第2弾、3弾へと続く取り組みを考えているところだ。「いずれは宇宙旅行で人気のお土産を開発するとか、いろいろな切り口で宇宙産業を盛り上げていければ面白いよねって、いつもみんなで話しています」。誰もが宇宙を身近に、もっと楽しくかかわれる未来を信じ、十枝内たちの熱い挑戦は続く。
11株式会社 代表 十枝内 一徳さん
道東の雄大な自然が感じられる釧路湿原国立公園の展望台
Co-Design Challengeとは?
Co-Design Challengeプログラムは、大阪・関西万博を契機に、様々な「これからの日本のくらし(まち)」 を改めて考え、多彩なプレイヤーとの共創により新たなモノを万博で実現するプロジェクトです。
万博という機会を活用し、物品やサービスを新たに開発することを通じて、現在の社会課題の解決や万博が目指す未来社会の実現を目指します。
Co-Design Challengeプログラムは、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が設置したデザイン視点から大阪・関西万博で実装すべき未来社会の姿を検討する委員会「Expo Outcome Design Committee(以下、「EODC」)」監修のもと生まれたプログラムです。
※EODCでの検討の結果はEODCレポートをご覧ください
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