相場展望4月10日号 米国株: トランプ氏、相互関税上乗せ分90日間停止、株価大幅上昇 報復措置を取った中国には計145%に引上げ 日本株: トランプ氏の見せかけの譲歩に乗ると危険
2025年4月10日(木)13時25分 財経新聞
●1.NYダウの推移
1)4/7、NYダウ▲349ドル安、37,965ドル
2)4/8、NYダウ▲320ドル安、37,645ドル
3)4/9、NYダウ+2,962ドル高、40,608ドル
【前回は】相場展望4月7日号 米国株: トランプ関税で、米国が最大の敗者になる可能性 日本株: 日経平均の下げ幅を拡大する可能性が大
●2.米国株:トランプ氏、相互関税の上乗せ分を90日間停止、中国には計145%に引上げ
1)NY株式市場は4/3〜4の2日間で時価総額を▲959兆円を消失
・4/3〜4の2日間で、NY株式市場は時価総額で▲6兆6,000億ドル(約▲959.1兆円)を消失した。
・今年1/20のトランプ大統領就任以降では、▲11兆1,000億ドル(約▲1,613兆円)を消失した。
2)4/7、NYダウは一時▲1,700ドル超値下がりも、関税停止検討報道で買い戻し
・NYダウの終値は▲349ドルと下げ幅を縮めた。
・トランプ関税が、いかに株式市場に不安を与えているかを証明した。
3)機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は4/8、約1年ぶりに5,000割れ
・関税を巡るトランプ氏の譲歩がなく、市場の期待が薄れ株価下落。
・NYダウは4/8、一時+1,400ドル高も、一転▲800ドル超下落し、終値▲320ドル。
4)トランプ氏、追加関税で関税収入が1日で20億ドルと主張も、誇張には注意
・トランプ氏は誇張して発言したりSNS投稿したりする傾向がある。このため、関税収入についても財務省口座に入ってくる1日当たりの関税の入金額の変動を確認する必要がある。
・誇張された数値に惑われされないようにしたい。
5)トランプ氏、相互関税の上乗せ分を90日間停止、中国には計145%に引上げ
・トランプ氏は4/9、SNSに投稿。
(1)相互関税について報復措置をとらなかった国に90日間停止。
(2)相互関税に報復をした中国には、相互関税を125%に引上げて計145%。
・中国への相互関税の推移:34%⇒84%⇒104%⇒125%。
・中国には2/4・3/4に課した20%を加えると追加関税は合計145%。
・米国株式は4/9、SNS投稿を受けNYダウは+2,962ドルと史上最大の上げ幅となった。
6)「90日間停止」にヌカ喜びしてはいけない
・「90日間の停止」で「4/9に株価上昇」したが、「全面停止」ではない。基本関税10%引上げは活きており、実施される。米国内では、すでに価格転嫁の動きが起きている。米国は食料品や建材など多数の中国産品に依存しており、価格上昇圧力が増していることには変わらない。
・相互関税は決定したわけではく、むしろ不透明感が90日間増えたことになる。つまり、株式相場にとって重苦しい期間が続くことになる。トランプ氏の二転三転に右往左往され続けることを意味する。
・関税による物価高騰後に、景気後退し、企業業績が悪化し、株価に跳ね返ることに注意したい。
・アップルのiPhoneの大半が中国産である。つまり、アップルのスマートフォンは関税を織り込むと2倍以上値上げしないと、企業業績は大幅悪化する。関税コスト上昇相当は価格転嫁され、インフレにつながる。
・テスラは米国で組み立てられているが、部品の多くが輸入品である。米国工場で生産されているといっても、関税コスト分が原価上昇となる。
●3.米国政権による関税免除は当面なし、雇用の国内回帰は痛み伴う=USTR代表(ロイター)
●4.米国・中小企業の景況感は2022年6月以来の大幅低下=関税で懸念増大(ブルームバーグ)
●5.トランプ関税、予想よりはるかに大きくインフレ再燃リスク=シカゴ連銀総裁(ロイター)
1)関税措置によるコスト拡大の速さと、消費者にどの程度転嫁されるか不透明。
●6.米国景気後退確率20⇒35⇒45%に引上げ、過去1週間で2回目=ゴールドマン(ロイター)
1)JPモルガンは、米国および世界経済がリセッションに陥る確率を60%としている。
●7.クーグラーFRB理事、一部の価格上昇は関税の影響を先取りしたもの(ロイター)
●8.トランプ氏発言
1)日本製鉄のUSスチール買収について、CFIUSに再審査を指示(ブルームバーグ)
・バイデン前大統領が下した買収阻止の決定を修正する道が開かれた。
・CFIUS(対米外国投資委員会)は45日以内に報告書を提出しなければならない。
2)中国が対米国報復関税を撤回しなければ、50%の対中国追加関税も(ロイター)
3)日本は貿易交渉に「トップチーム」を派遣、トランプ氏はSNSに投稿(ロイター)
4)大統領顧問、関税90日間停止の報道を否定「フェイクニュース」(ロイター)
●9.ゴールドマン、米国景気後退確率を引上げ、今後の利下げ幅は「2%」も(Moneyworld)
●10.EU、米国への対抗関税第1弾を数日内に発表へ(ロイター)
1)トランプ氏は4/2、EU27ヵ国の同盟国から輸入する鉄鋼とアルミニウム、自動車に25%、他のほぼすべての物品に20%の「相互関税」を課すと発表した。これは昨年に5,320億ユーロ(5,850億ドル)に上ったEUの対米国輸出の約70%に相当する。銅や医薬品、半導体、木材への関税も今後課される公算が大きい。
●11.NYダウは、中国の報復関税による貿易摩擦激化を警戒(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)4/7、上海総合▲245安、3,096
2)4/8上海総合+48高、3,145
3)4/9、上海総合+41高、3,186
●2.中国、対米国関税を84%へ(テレビ朝日)
●3.米国による関税免除当面なし、中国は独自の道を選択のもよう=USTR代表(ロイター)
●4.米国ホワイトハウス報道官、「中国への関税率は、合わせて104%に引上げる」(NHK)
1)トランプ米国政権は、
(1)すでに20%の追加関税を発動
(2)4/9に相互関税として34%を上乗せ
(3)中国が相互関税への対抗措置を撤回しないとして、さらに50%の追加関税
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)4/7、日経平均▲2,644円安、31,136円
2)4/8、日経平均+1,876円高、33,012円
3)4/9、日経平均▲1,298円安、31,714円
●2.日本株:トランプ氏の見せかけの譲歩に乗ると危険
1)トランプ氏の相互関税90日間停止で、日本は24%⇒基本税率の10%適用に
・日経平均は、4/9の米国株の急反発を受けて、翌4/10は大幅上昇で急騰しているが、安心は禁物。
・日本に対する対米国関税が24%⇒10%に変更されただけである。しかも、90日間だけである。
・トランプ氏の気まぐれで二転三転する米国政権の政策であることを忘れないようにしたい。トランプ氏は「ディール(取引)」のなかで、米国が有利になる条件で折れ合うように交渉しているだけである。今回は中国の強硬な報復措置に呼応して、中国寄りする国を阻もうとした行動とみる。
・そして、関税問題を通じて、米国・トランプ氏に屈するように仕掛けたのが「90日間の停止」であろう。
2)日経平均は、4/3からの大幅下げから、頭を持ち上げようとしていた
・頭を持ち上げようとしていたと判断した状況
・「空売り比率」
・4/8 36.8、4/9 38.8と、売り圧力は後退し、買いに向かうことを
示唆していた。
・日経平均VIX指数(恐怖指数)
・4/7 58.39をピークに、4/8から下がり始めていた。
・日経平均チャート
・W底を4/7・4/9と付けて、上昇波動に乗ろうと示唆していた。
日経平均の推移 4/7 4/8 4/9
31,136円 33,012 31,714
3)ただ、油断は禁物
・トランプ氏は、ディールを優先させるため、その交渉術として発言を二転三転させてきた経緯がある。
・4/7、米国・国家経済会議(NEC)のハセット委員長が「90日間一時停止」を検討の考えを示した。
・即座に、ホワイトハウス報道官は「否定」した
・4/7午後、トランプ氏は「考えていない」と一蹴した。
・そして、4/9には「90日間一時停止」をトランプ氏自身のSNSで投稿した。つまり、トランプ氏の発言はすぐに訂正されるため、前のめりは危険である。前のめりになると、トランプ氏に絡めとられるだけである。
・トランプ氏の交渉術は、彼が経験してきた「不動産取引」で通じる手法に過ぎない。「90日間停止」は、あくまで「一時的」であり、しかも90日間も怪しい。トランプ政権からは「信義」を感じにくいのが特徴である。
●3.トランプ氏、石破首相との電話協議で「日本は自国を開放せよと伝えた」(毎日新聞)
1)「我々は日本でまったく車を売っていない」とトランプ大統領が石破首相に米国の自動車が日本でも売れるよう「市場の開放」を求める。(TBS)
●4.日本10年国債利回り、一時1.105%と1/6以来の3ヵ月ぶりの低い水準まで低下(NHK)
●5.第一生命、豪生保チャレンジャーに15%・800億円出資(共同通信)
1)少子高齢化により国内市場の縮小が見込まれるなか、海外事業の拡大で収益力向上を狙う。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1861 熊谷組 業績好調
・2685 アダストリア 業績好調
・8227 しまむら 増配期待